【B評価】令和2年 予備試験 再現答案 行政法

第1 設問1
1 本件条項は、Bに対して、開発事業の許可に際して、一切の例外を認めないというものであり、その法的性質は、公共団体たるA市と私人のBが対等な立場で、結んだ行政契約であると解する。
 そして、行政契約は、対等な立場で契約を締結している以上、原則として法的拘束力が認められると解する。もっとも、①行政契約の内容と関連する法律の趣旨・目的に反するか、または②公序良俗(民法90条)に反する契約内容である場合には、法的拘束力がないと解する。
2 本件で、行政契約たる、本件条項の内容は、Bが行う廃棄物処理事業に係る開発事業について、第2処分場の許可に係る開発区域の土地・規模に限定し、例外を認めないというものである。したがって、事業許可に関する法律の趣旨・目的について検討する。
(1)まず、都市計画法(以下、法)29条では、開発行為を行おうとする者は、知事の許可を要すると定めている。次に、条例2条1号で、開発事業が、法29条の許可を要する開発行為を指すとした上で、4条で、この開発事業をするにはあらかじめ計画について事前協議を要する旨定めている。そして、8条では、事業者が説明会等を開催するなどして、開発事業の周知について必要な措置を講じ、その結果を市長に報告することを義務付けている。また、4条に反し協議をせず、または虚偽の内容で協議をした場合、市長による行政指導ないし勧告を課すことことができ(条例10条第1号)、この勧告に従わない場合には、中止命令ないしは必要な措置を講ずるように命じることができる(11条)。そして、1条では、「開発許可の基準…を定めることにより、良好な都市環境の保全及び形成を図り」「秩序ある調和のとれたまちづくりに寄与することを目的」としている。
そうすると、上記の条文の趣旨・目的としては、事業者が開発行為をする際に、従わない場合に行政庁に命令等を付与した上で、市民への周知と市長との事前協議を行わせることにより、事業者と周辺住民・市長が相互理解を図り、調和的な都市を形成するための仕組みを設けることにあると解する。
(2)では、本件条項が右法律の趣旨・目的に反するか。本件で、本件条項が制定された経緯は、Bが平成25年頃より第2処分場の建設を計画していたところ、A市民がこの建設に反対していたがため、市長が4条に基づく事前協議を断り、また、A市民の指導に従い、Bが説明会の実施提案したものの、A市民がこれをボイコットし、同意しないという、A市民側の強力な反対があったことを考慮して、許可の適用範囲を限定したというものである。そして、Bは周辺住民との関係を改善するためこれを必要と解して、これに同意した。そうすると、本件条項は事業者たるBと、A市民との相互理解ないし調和を図るために設けられた条項であるから、法の趣旨目的に反せず、むしろ合致するといえる。
よって、①には当たらない。
3 では、公序良俗に反すると言えるか。
(1)本件条項は、許可を与えることを認めた上で、今後のBの廃棄物処理事業の範囲を今回限りに限定し、例外を認めないというものである。ここで、確かに、Bという私企業の廃棄物処理業の拡大を認めないことは、Bの営業の自由(憲法22条1項)をも制限しうるものである。もっとも、現在行われている事業については何らの制限を科すものではなく、また、B自身もこれに合意している。
(2)よって、②公序良俗に反するとは言えない。
4 よって、原則通り、本件条項に法的拘束力が認められる。
第2 設問2(以下行政事件訴訟法は略)
1 Bの立場から、本件通知は、「処分」(3条2項)に当たる旨主張する。
2 そもそも、「処分」とは、①公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為(公権力性)のうち、②その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められたもの(具体的法効果性)をいう。
(1)本件通知は、A市長という公共団体がその地位に基づき一方的にBに対して発するものであり、①公権力性が認められる。
(2)もっとも、A側としては、通知は、単なる事実を伝達する方式にすぎず、何らの法効果を伴わないから、具体的法効果性が認められないのではないかと反論することが考えられる。
 しかしながら、Bとしては具体的法効果性が認められると反論する。法29条に該当する開発事業の許可を受けるためには、まず、申請を要する(33条)。もっとも、申請以前の段階において、条例4条では事前に市長との事前協議を要し、また、8条では市民に対する説明会を要するとしている。そうすると、事前協議を行わない旨の本件通知は、4条に定める事前協議をすることができず、ひいては開発事業を行うことができないという法効果を生じさせると解する。
 よって、②具体的法効果性が認められる。
3 また、実行的権利救済の観点から、通知がなされた後の、具体的な不許可処分の取消訴訟を提起すれば、権利救済にもとることがないとA が反論することが考えられる。
 もっとも、上記のように、事前協議ができなければ、そもそも開発事業に対する申請をすることができず、不許可処分を受けることができない。そうすると、実行的権利救済の観点からも、事前協議をしないという内容の本件通知に処分性を認めるべきである。
4 よって、本件通知は「処分」にあたる。
以上

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