【E評価】令和2年 予備試験 再現答案 刑事訴訟法

第1 設問前段
1 まず、一事不再理効の及ぶ時間的な範囲が問題となる。
そもそも、憲法39条後段を受けて、337条1号が、一事不再理効の及ぶものにつき免訴とする趣旨は、一度公訴事実につき処罰の危険を受けた被告人を、二重処罰の危険から保護する点にある。
 そうすると、一事不再理効の及ぶ時間的な範囲は、二重危険の処罰の可能性があった範囲、具体的には判決言渡し時までの事実を指す。
 本件で、①の公訴事実につき、判決言渡しがなされたのは、令和元年8月1日である。一方で、②の事実は、令和元年5月15日の傷害を内容とするものだから、判決言い渡しまでの事実であるといえる。
 よって、一事不再理効の時間的範囲には含まれる。
2 つぎに、客観的な範囲が問題となる。
(1)ここで、上記一事不再理効の趣旨から、これが認められる客観的な範囲は、一度の公訴で処罰の危険性が生じた範囲、すなわち「公訴事実の同一性」(312条1項)が認められる範囲につき認められると解する。そして、公訴事実の同一性とは、基本的事実同一性を基準に、補充的に非両立性の基準を用いる。
(2)①では、令和元年6月1日、H県I市内の自宅において、交際相手の乙に対し、その顔面を平手数回殴るなどの暴行を加え、よって、同人に加療約5日間を要する顔面挫傷等の傷害を加えたという傷害罪の公訴事実について、審理判断されている。一方で、②では、令和元年5月15日、 J県L市の路上において、丙に対し、その顔面・頭部を挙骨で多数回殴るなどの暴行を加え、よって、同人に加療6ヶ月間を要する脳挫傷等の傷害を負わせた」ことを内容とする傷害罪を公訴事実としている。
そして、この両者の公訴事実は、合わせて常習傷害罪を構成する以上、「公訴事実の同一性」がある。
(3)よって、弁護人の申立てのように、免訴判決をするべきである。
第2 設問後段
1 まず、時間的な範囲について検討する。ここで、後段の場合も、判決は8月1日になされ、②は同人5月15日の傷害を内容とするから、時間的な範囲に含まれている。
2 つぎに、客観的な範囲について、上記と同様に検討する。
本件で、①では、常習として、令和元年6月1日、H県I市内の自宅において、交際相手の乙に対し、その顔面を平手数回殴るなどの暴行を加え、よって、同人に加療約5日間を要する顔面挫傷等の傷害を加えたという傷害罪の事実、②は上記と同様の事実である。
ここで、①の事実は、あくまでも乙に対する暴行についての傷害を内容とするものであり、検察官の訴追意思として、丙に対する暴行を含むものではない。
そうすると、「公訴事実の同一性」が認められない以上、免訴判決をするべきではない。
以上


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