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『罪の文化』と『恥の文化』

とやまるです。
僕は日本文学を中心に日本人のアイデンティティーについて考えていこうと思っています。

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菊と刀

ルーズベネディクトの『菊と刀』です。
なんとなく聞いたことある人いるんじゃないでしょうか?

発音したくなりますよね。ルーズベネディクト。

この本は、第二次世界大戦のときにアメリカ軍が日本への上陸作戦を決行するにあたり、敵国(日本)の動きを予測するために研究されたものをまとめたものです。

交戦中のため現場調査ができなかったベネディクトおばさんは、捕虜となった日本兵や夏目漱石『坊ちゃん』などの英訳された小説から、なんとか日本人について理解しようと試みました。

ベネディクトおばさんは日本人に関する文献を読みあさってるときに、非常に奇怪な特徴に気が付いたと言います。

それは日本人の国民性の矛盾です。

日本人は不遜であると同時に礼儀正しく、頑固であると同時にどんなことにも順応する力を持っている。
菊作りに秘術をつくすほど美を愛する一方で、刀を崇拝し武士を讃美する攻撃的な民族である。と。

実際、ベネディクトおばさんは「日本人についての文献に『○○にも関わらず』ってありすぎなんだけど!?」
と驚いて(キレて)いらっしゃいます。

しかし、よく調べていくと実は矛盾なんかしていなくて一つの行動原理たるものが見えてきました。


「分」の思想

日本には昔から『分(ぶん)』の思想と言われるものがあります。

これは何かと言いますと、身の丈にあったことをしなさい。という教えです。

今でもこの『分』は"取り分"とか"分際"という言葉に残っています。

「○○の分際で」という言葉があるように、日本人は、この"分"からはみ出ることを嫌ったわけです。

日本では昔から忍耐が美徳とされ、どんな理不尽にもこらえることが求められました。

身分をわきまえないことは恥とされました。

今度1万円札になる渋沢栄一も『論語と算盤』という本の中で、"蟹穴主義"(かにあなしゅぎ)という言葉を使って分の思想を説いています。

カニ🦀は自分の甲羅の大きさしか穴を掘らない。自分の大きさにあった穴の中で暮らしていくのだ。と。

なんだか夢のない話のように聞こえますが、そうではありません。

要は、集団の中で自分のできる枠の中で集団に貢献する。できないことするな。ってことです。

これによって日本人は周りを意識して生活して、スムーズに集団行動ができるようになるわけです。

たしかに、外国と比べると日本は『革命』といわれるものは起きていないですよね。

これは自分の分で我慢しなさいという教えが根底にあるからだといわれています。


階級意識が強いとも言い換えられますね。

日本は国際社会に対しても階級制というのは意識していました。
真珠湾攻撃の当日、日本がアメリカへ送った文書には次のような文言があります。

各其ノ所ヲ得シメシ

これは各人がそれぞれにふさわしい位置を占めるという意味です。

まさに日本人のもつ「分の思想(階層意識)」だったわけです。
そして我々はその仕組みを受け入れてきたわけです。


罪の文化と恥の文化

ベネディクトは欧米と日本の文化をそれぞれ、
罪の文化と恥の文化と称しています。

罪の文化というのは神の教えという絶対的基準によって自分の行動を決めます。
「神様が見ている。神様の教えに反するからこれをしない。」
という考えです。

これが欧米の罪の文化だとベネディクトは言います。

一方、日本の恥の文化は、周りの人の目線によって自分の行動を決めます。
端的に言えば「あいつが観てるからこれをやる。あの人に見られてるからこれをやらない。」といったことです。

山登りで人がいたら絶対にゴミを捨てないけど、そこに人がいなかったら(誰も見ていなかったら)平気でゴミを捨てるのが日本人。というのは有名な話です。

西欧文化一罪の文化(罪悪感)一内面的一自己(良心・自己像)一絶対的基準一神
日本文化一恥の文化(恥辱感)一外面的一他人(嘲笑・拒否)一他人の判断一世評

意識が外に向いてる(恥の文化)のか、内に向いている(罪の文化)の違いですね。

この「周りにどう思われているか」という恥の文化こそが日本人の根底にある行動原理なわけです。


そして、恥の文化では「人前で恥をかきたくない!」という想いから名誉を重んじ、ときには命を投げ打ってまで自分の名誉を守ろうとする(恥をかかないようにする)。

だから、これまでの日本人ってあんなに切腹してるんですね。
相手に首を取られるくらいなら、自分で死んでやる!ってやつ。

武士は食わねど高楊枝。とはよくいったもので、日本人の精神性を端的に表した言葉だと思います。

サムライは恥をさらすくらいならいさぎよく死を選びました。
戦争中も敗戦すると分かっててもなかなか降伏しませんでした。

現代でも周りの評価を重視して、、自尊心が傷つかないようにする。

ある意味この「恥をかくくらいなら死ぬ」プライドの高さこそが日本人の国民性の本質なのではないでしょうか?




来週はまた『菊と刀』から恩とは何か義理とは何か

というテーマで話そうと思ってます。"恩"も"義理"も欧米にはない概念です。
obligationと訳されたりしますが、これでは恩と義理の概念を説明できていません。

あなたは説明できますか?
ではまた来週!!

冨山陽平のTwitter


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