王子に戻らなかったガマガエル(3)
いつものように、蔓薔薇の茂みで眠ろうとすると、どこからか優しい声とかぐわしい香りがしました。
見上げると、薔薇の花がガマガエルを見下ろしていました。
「今晩は。ガマガエルさん。何日か前から蕾でいたのですけれど、やっと花開くことができました。お会い出来て光栄です。」
ガマガエルは、人間の言葉で会話するのは久しぶりでしたので、嬉しくてたまりません。
「こちらこそ、あなたのような美しい方とお会いでき、
とても嬉しく思います。」
「ところで、あなたは人間の言葉を話せるのですね。なぜですか?」
「実は数日前まで人間でした。私は重い病気にかかってしまい、人間としての一生を終えたのです。ところが、あまりに早く一生を終えた私のことを可哀そうに思った魔女が、私を花に生まれ変わらせてくれたのです。」
王子も自分の身の上を明かしました。
「あなたから見ると、私はずいぶん醜いでしょう?」
「いいえ、そんなことはありません。王子としての品格を持った立派なガマガエルでいらっしゃいます。」
それから二人は大の仲良しになりました。
(つづく)