王子に戻らなかったガマガエル(6)
大好きだった蔓薔薇の花がいなくなっても、同じ茂みに蕾が絶え間なくついて、いくつもいくつも花が咲きました。そして、数日たつと、あの花がそうだったようにみんな散っていきました。
けれど、人間の言葉を話す花は二度と咲くことがありませんでした。
(あれは一度きりの魔法の時間だったのだな・・・・。)
ガマガエルは独りになっても、花や月や星を愛で、
自然の摂理の中でそれを楽しみながら生きました。
そして、ある時、ガマガエルもまた
蔓薔薇の茂みの中で動かなくなりました。
蔓薔薇はガマガエルの体を優しく受け止めて、自分の一部にしました。
ガマガエルのまま一生を終えた王子のお話はこれで
おしまい。