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[図工11] われないようにして!

青い風船と風船を膨らませる道具を持って来てAくんは言った。「ふくらませて、とめて!」

子供たちは何をやっていてもすぐに飽きるので、箸休め的存在として、アトリエには常に風船を用意している。風船が嫌いな子はいない。箸休めのつもりが、1袋全部(16個)の風船を膨らませて、紐でつなげて、空でも飛ぶつもりなのか?という姿で自転車で帰った子もかつていた。膨らませすぎて酸欠になりかけたので(私が)、最近空気入れを買った。

「はやくして!」Aくんがおこり始めたので、わたしは真面目に膨らませ、口を結んだ。なぜ?わたしが?やる?とか?疑問に思わない。優秀な助手を務めてみせる。風船に何か絵を書くつもりらしく、Aくんはずっと緑色の油性ペンを握りしめている。蓋が開いているので、ペン先がソファやテーブルにつかないか本当は気が気ではないが、何も言わない、私は優秀な助手だから。さあ、膨らんだので、絵を描いてください大先生!と、風船を差し出す。

A大先生は気合が入りすぎなので、筆圧が必要以上に強いことを助手の私は知っている。紙にめいいっぱい鉛筆で何かを描くと、下に敷いてある新聞紙も貫通し、結果、テーブルに絵を描くことになったりもする。だからきっと、今日もめいいっぱいやるんだろうなあと助手は思った。なぜならこの日はA大先生のお気に入りのかわいいBちゃんが来ていた。もちろんBちゃんにいいところをみせたいに決まっている。気合十分だ。

意外と鋭い油性ペンのペン先を、A大先生は風船に押し付けた、んぎゅ〜って。もちろん風船は割れる。当然割れる。割るためにやってんのか?ってくらいの気合だから割れる。A大先生は大激怒だ。

「んも〜〜〜〜〜やだ〜〜ぼく〜描きたいのに〜ちゃんとしてよ〜、ちゃんとわれないようにしてよ〜〜〜!!」

いくら優秀な助手でも風船を「われないように」なんてできない。

助手「風船はわれないようにはできません。」大先生「なんで?ぼくちゃんとやりたいのに。われないようにふくらませてよ、じょしゅ!」助手「いいえ、ふうせんはわれるようにできているんです。だから、われないようにかくのです。」大先生「???(困り顔)」

「はやくつぎをふくらませて!」と、A大先生が急かすので、助手は真面目に赤い風船を膨らます。膨らんだ赤い風船に絵を描こうとするも、A大先生の手はもう、怖くて動かない。仕方がないので助手が描く。

助手「何を描きましょうか?」大先生「火だよ」

この日、Aくんは赤い風船を炎に見立てて、Bちゃんと仲良く素敵なキャンプファイヤーを作って帰った。

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