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[図工12] ここでバイトしたい

かわいいレタリングを施しながら、「ここでバイトしたいな、雇って!?」と、Aちゃんは言った。すまない、Aちゃん、うちはバイトどころか、私だってやってけないくらいのブラックアトリエなんだぞ、と言いかけたが、Aちゃんから材料費をもらっている身でありながら、情けないことは言えない気がして、私はちょっと黙ってしまった。
「お金ほしいなぁ、欲しい物が多すぎる、漫画とか、漫画とか?」。小学校高学年のAちゃんはうちに来ると、好きな漫画や推しの話を聞かせてくれる。そういうの聞くの私大好きだ。今やAちゃんと私は茶飲み友達みたいに過ごしている。Aちゃんはずっーと話をしながら、好きな絵を描いたり、ロゴを作ったり、小物を工作したり、毎回自分の目的を器用にこなして帰ってゆく。実に清々しい。私よりずっとしっかりしているAちゃんに、バイトしたいなんて言ってもらえて、なんだか誇らしい気持ちになった。

「じゃあ、うちに幼稚園の子が10人くらい一度にくるような事態が起きたら、お願いするね、」。あー、調子のいいこといってしまった。そんな日は、来るのかな??そんなに成長することはできるかわからないけど、Aちゃんが大人になって、まだやってたの?と思ってもらえるくらいにはなんとな〜く続けたいなと思った。

その日Aちゃんは、クラスのグループのロゴマークを優しい色合いで仕上げて、颯爽と帰って行った。

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