Busoni

Ferruccio Busoni 、ブゾーニはイタリア生まれの近代の作曲家で、ピアニストとしても演奏旅行を行うなど活躍しました。
近代に活躍し、ドイツで学び、モスクワやアメリカで教職もしている国際的な音楽家。ロマン派の後の新古典主義の代表だが、電子音楽など実験的な試みも行っている。
ピアノ関連では、「2大手の大きなピアニスト/作曲家」として知られている。ちないにもう1人はラフマニノフ。ということで、ピアノ曲はとても幅の広い和音が頻繁に出てくるので、手の小さい人はとても苦労する。
本人のオリジナル曲よりも、アレンジやトランスクリプションの方が極めて有名。

そんなブゾーニの曲で私が好きなものをあげていきます。

・Toccata und Fuge d-moll BWV 565
バッハ=ブゾーニの「トッカータとフーガ」と言えば、この曲を指す。原曲は誰もが聞いたことのあるバッハの「トッカータとフーガ ニ短調」で、それをブゾーニがピアノ用にアレンジしたもの。ブゾーニはバッハが大好きだったようで、何曲もアレンジを出している。
原曲はバッハ作曲とされているが、実は他の作曲家が作ったものを当時人気のあったバッハの名前で出したんじゃないか、など疑惑がある。他のバッハのトッカータやフーガよりも、演奏上も内容も平易で、作曲上の特徴がバッハと違うと言われている。その分、大衆に理解されやすくポピュラーになったのかもしれない。現在でも効果音的に使われたり、テレビなどでも聞くことがある。
原曲はオルガンのため、ブゾーニは単純にピアノに音を移すのではなく、同じ「音の効果」をピアノで出すためにはどうしたらよいかと苦心した。
オルガンの重厚な永遠に音が響き続ける機構と、ピアノのすぐ減衰してしまう打楽器的な響きのギャップを埋めるためのアレンジャーとしての腕が光る。
特にフーガのアレンジがオルガンのストップの変化を意識していて面白い。純粋なフーガの形式を楽しむというよりも、ピアノの演奏効果の可能性を感じる一曲。

・Chaconne d-moll BWV 1004
ピアノで「シャコンヌ」と言えばこの曲。バッハ=ブゾーニのシャコンヌと呼ばれる。なぜかコンクールやピアノの試験などのアカデミックな場所ではアレンジものは毛嫌いされる傾向があるので避けた方よいが、演奏効果が高く技巧的でコンサートでもよく演奏される曲。
原曲は、バッハがヴァイオリンのために作曲した「パルティータ」という組曲の最後の曲「シャコンヌ」。シャコンヌは同じ進行の通奏低音(ベース)上で主題が変奏されながら繰り返される形式、らしい。イメージしやすいのはパッヘルベルの「カノン」の形式。
3部形式になっており、短調、長調、短調と進行する。戻ってくる短調の部分が素晴らしく泣かせてくれる。
このヴァイオリンの傑作をブゾーニはピアノの特性を最大限に活かしたアレンジにしている。出だしはヴァイオリン一本かのような力強い和音進行から始まるが、すぐに様々な変奏を経て、どう聞いてもピアノ曲にしか聞こえなくなる。これはもうアレンジというより作曲。
クライマックス直前は2バージョンを作曲しており、演奏者が好きな方を演奏できる。ちなみに私はミケランジェリの録音が大好きで、連打音が嘆きの涙のように感じて聞き入ってしまう。

バッハだって他の作曲家だって、色んなアレンジをしていたが、クラシックは原曲至上主義にいつの間にかなって、「作曲家の意図を汲む」ことが「聞いていて楽しい」よりも優先されてしまった。
現代のポップスでは、カバーしたり、素人が真似したり、音楽の幅が自由に広がっているが、それを予感させるようなブゾーニの曲たちは、やはり素晴らしい。


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