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世界の超過死亡率と新型コロナワクチンの累積接種回数の因果関係について

はじめに

 こんばんは,zukeiと申します.前回の記事に引き続き,新型コロナ禍での世界の超過死亡率とコロナワクチンの累積接種回数との因果関係を,オープンデータとLiNGAMを使って明らかにしていきたいと思います.

データ

 ワクチン接種者数などのデータは,前回同様に Our World in Data のデータセットを使用しています.このデータには超過死亡もついているのですが,網羅性に欠けるので,元データのほうを参照しました(期間:2020年1月5日~2022年10月23日).このデータにあるp_scores_all_agesという百分率値が Our World in Dataで現在使われている超過死亡のデータなので,それを使いました.超過死亡の報告は先進国では一週間単位のところが多いですが,途上国などでは一か月単位になっています.一か月に期間を合わせるために,週単位のデータを報告月で集約しています.ただし,もとのp_scores_all_ages は超過死亡が無い場合を0%としており,負の値も取りうるので,元の値に100を足してベースラインを100%にスライドさせて非負値にしたうえで,月ごとの幾何平均値として集約しました.月単位の超過死亡のほうは,元の値に100を足す処理だけを行いました.本稿ではこの値を超過死亡率とします.
 図1は使用した超過死亡データの国数の主要地域別の積み上げです.データの期間は,超過死亡データがある程度集まった2020年3月~2022年8月までとしましたが,直近の2か月はまだ集計途中のような感じです.年度によって異なり減少傾向にありますが,おおむね一月あたり80-110カ国ぐらいの件数となっています.地域はヨーロッパが多く,次いで2022年度だとアジア,アメリカ大陸の順番になっています.

図1 超過死亡データの国数の地域別の積み上げ

 図2は各月の超過死亡率の世界平均と日本のそれを比較したものです.期間内の超過死亡率にピークは2021年9月でした.ここまでコロナ禍による影響が強かったと思われます.それ以降は下がってきていますが,2022年5月から再び反転しています.日本は2022年1月までは比較的世界の動向と連動していましたが,全体的に超過死亡がかなり低く抑えられていました.ところが,2022年2月に急激な超過死亡の増加があり,その後は世界平均より高い状況が続いています.分析時の日本のデータは2022年7月まででしたが,翌8月に再び高くなるのは,すでに周知の事実です.

図2 日本の超過死亡率と世界平均(含95%信頼区間)

 最後に,超過死亡以外のデータは前回の記事の内容を踏襲しますが,新たに新規接種者数(new_vaccinations)のデータを加えました.ただし前回は観測期間を120日にしていましたが,今回は超過死亡の集計期間に合わせて一か月間とし,その期間内の人口あたりの平均値を用いています.なお前回同様,超過死亡率やその他のデータは,各期間内でそれぞれ標準化してから分析を行っています.

因果探索

 ここからLiNGAMによる因果探索の結果を説明します.まず,わかりやすい例として,全世界の当該月の超過死亡率(edeath)とコロナによる当該月の死亡者数(death)の2変数間の因果係数の推計結果を図3に示します.オレンジは「コロナによる死亡者数の変化→超過死亡率の変化」の因果関係,青は「超過死亡率の変化→コロナによる死亡者数の変化」の因果関係がその月に認められたことを,棒の高さは各因果関係の強さを因果係数として示しています.
 ほとんどの期間がオレンジ色であり,総じて「新型コロナによる死亡者数が増えると超過死亡率が上昇する」といった非常にわかりやすい因果関係が継続的に抽出されているのがわかります.ただし,2022年になるとその因果関係は弱くなっているように見えます.

図3 超過死亡率とコロナによる死亡者数の因果係数(全世界)

超過死亡率とワクチンの累積接種回数の因果関係

 ここからが本題で,超過死亡率とワクチンの累積接種回数の因果関係について説明します.図4は,データ全体(全世界)での超過死亡率と累積接種回数の間の因果関係です.オレンジは「累積接種回数の変化→超過死亡率の変化」,青は「超過死亡の変化→累積接種回数の変化」という因果関係を示します.
 2020年12月からワクチン接種が始まったのですが,翌月にはオレンジの因果関係が発生しています.これについては後で解説します.
 2021年6月から2022年の2月までは負の因果係数として因果関係が表れています.これは負の因果関係を示しています.例えば青であれば「超過死亡率が高い国はワクチンの累積接種回数が低い」といった因果関係になります.この時期について全世界的にみれば,コロナワクチンの接種がコロナ死の抑制を通じて超過死亡率を下げたことが示唆される結果と考えらえます. 
 しかし,2022年の4月になると「累積接種回数が増えると超過死亡率が上昇する」といった因果関係に反転しています.さらにこの期間の因果係数は,2021年の時よりも高く,より因果関係が強くなっているように見えます.以上の結果は前回の記事の結果に通じるものがあります.

図4 超過死亡率と累積接種回数の因果係数(全世界)

 次に地域別にみていきます.図5~7はそれぞれアメリカ大陸,アジア,ヨーロッパのデータに分けて因果探索を行った結果です.まず,他の地域と比較してアメリカ大陸は,大陸が北半球と南半球にわたるせいか,節目で若干観察される以外は,ほとんど超過死亡率と累積接種回数の間に因果関係は見られませんでした.

図5 超過死亡率と累積接種回数の因果係数(アメリカ大陸)

 次にアジアの場合は,全世界の結果と傾向がやや似ていますが,2021年よりも2022年のほうが因果関係が強い感じです.

図6 超過死亡率と累積接種回数の因果係数(アジア)

 ヨーロッパの場合は,数が多いこともあって全体の傾向をなぞっていますが,よりはっきりとした傾向が出てきます.特に2021年における「累積接種回数が多いと超過死亡率が低くなる」といった因果関係が,アジアと比較してより強く長くなる傾向があります.

図7 超過死亡率と累積接種回数の因果係数(ヨーロッパ)

 なお,2021年1月の「累積接種回数の変化→超過死亡率の変化」の因果関係ですが,ジブラルタルでワクチン接種が始まり,累積接種回数が急増したのと同時期に死者も急増したことがデータとして記録されており,それが大きく影響しているようです.この件については,実際こんな記事を見つけました.

2021年10月と2022年5月の因果関係の比較

 2021年と2022年で因果係数の絶対値が大きい月としてそれぞれ10月と5月をピックアップし,全世界のデータで他の変数も使ってLiNGAMで因果探索を行い,抽出されたパス図を比較してみます.変数の説明は以下の通りです.

  • case:当該月のコロナ陽性者数の平均/人口

  • vax:当該月のワクチン接種者数の平均/人口

  • c_vax:当該月のワクチンの累積接種回数の平均

  • death:当該月のコロナ死亡者数の平均/人口

  • e_death:当該月の超過死亡率

 図8は2021年10月のパス図です.「コロナ死が多いと超過死亡やコロナ陽性者数も増えるが,累積接種回数は少なくなる.超過死亡が多いと累積接種回数は少ない.」といったパス図になっています.なお,当該月のワクチン接種者数は他の変数と因果関係を持ちませんでした.

図8 パス図(全世界,2021年10月)

 図9は2022年5月のパス図です.「・・・累積接種回数が多いと,コロナ陽性者数が増え,超過死亡率も高くなる.・・・」といった因果関係になります.ワクチンの累積接種回数と超過死亡率に(弱くない)因果関係が示唆される結果が得られました.

図9 パス図(全世界,2022年5月)

 最後に確認として,両時期の累積接種回数と超過死亡率の散布図をそれぞれ図10,11に示します.アジアの国のみISO codeを入れています.
 2021年10月の時点ではワクチンが超過死亡率を下げる効果があることを示しているかもしれませんが,他のサイトでしばし目にするような高い決定係数の値は示しませんでした.ヨーロッパだけだと結構高い決定係数になるのですが,地域を分けずに散布図をつくると,こんな程度の結果です.

図10 累積接種回数と超過死亡率(全世界,2021年10月,N=100)

 一方,2022年5月になるとワクチンの累積接種回数が超過死亡率に対して悪影響を与える方向に変化しており,決定係数も前者に比べてより高くなっています.ただし,超過死亡率の値は前年よりは低くなっています.アジアの国で比較すると,タイ(THA),シンガポール(SGP),韓国(KOR),台湾(TWN),マレーシア(MYS)は,超過死亡率が日本(JPN)よりも高くなっています.

図11 累積接種回数と超過死亡率(全世界,2022年5月, N=78)

まとめ

 本記事では前回に引き続き,全世界のオープンデータを使って,超過死亡率とワクチンの累積接種回数との因果関係を因果探索の手法で分析しました.2022年はコロナの被害は落ち着いてきましたが,「ワクチンの累積接種回数が多いと,超過死亡も多くなる」ことが因果関係として示されました.日本はずっと低い超過死亡率で推移してきましたが,今や世界平均を超えてしまいました.東アジアの他の国でも似たような傾向があるようです.過剰なワクチンへの誘導はもはや逆効果にしかならないことが,因果関係としても示されたと考えます.

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