優しくて大好きだったあの人と再会して、恩返しで結ばれました。
〜12年前〜
〇〇:まいねえ、トランプしてあそぼ。
麻衣:うん良いよ、何にする?
〇〇:しんけいすいじゃく!
麻衣:ふふ、良いよ。
まだ幼かった〇〇は両親が仕事で2人とも家にいないとき、よく隣に住む深川家で預ってもらい、5歳年上の麻衣に面倒を見てもらっていた。
〇〇:う〜ん、おなじのどれだったけ…
と、〇〇が神経衰弱でハートの9のカードを表にしたあと、どこにスペードかダイヤかクラブの9があったか思い出せず悩んでいると、
麻衣:ん〜、さっきここら辺で見たなー
と麻衣がヒントを出してくれた。
〇〇:あ、わかった!
選んだ裏返しのカードを表にすると、クラブの9だった。
麻衣:すご〜い!揃ったね。
〇〇:やったあ!
勝負の結果は、〇〇の方が獲れたカードの枚数が4枚多くて勝った。
麻衣:やったね、〇〇くんの勝ちだよ。
〇〇:わーい!でも、まいねえがおしえてくれたから、まいねえのおかげだよ。
麻衣:じゃあ、次はヒントなしでやっちゃおうかな?
〇〇:うん!
再び始めた神経衰弱は、結果麻衣の勝ちになった。
〇〇:う〜ん、やっぱりまけちゃうか。
麻衣:ごめんね、ちょっと本気出し過ぎちゃった。
〇〇:ううん、まいねえとならたのしいから、へいきだよ。
麻衣:そっか、お姉ちゃんも楽しかったよ。
そう言って麻衣は、〇〇の頭を優しく撫でて微笑んだ。
〇〇の両親が仕事が終わって〇〇を迎えに来ると、〇〇が玄関に立つ両親に抱きついた。
〇〇:おかえりー!
〇父:はは、ここ〇〇の家じゃないけどな笑
〇母:いつも〇〇のこと面倒見てくださって、ありがとうございます。
深母:いえいえ、気にしないでください。ウチの麻衣も〇〇くんと遊べるのをいつも楽しみにしてますから。
麻衣:うん、お母さん。
〇母:そうですが。麻衣ちゃん、いつも〇〇と遊んでくれてありがとうね。
麻衣:はい。
〇父:ほら、〇〇なんて言うんだい?
〇〇:まいねえ、遊んでくれてありがとう!
麻衣:どういたしまして。また遊びに来てね。
〇〇:うん!
〇父:じゃあ、すいません。〇〇のこと面倒見てくださってありがとうございました。
〇母:また〇〇のことをお願いするかもしれませんが…
深母:いえ良いんですよ、いつでもうちは〇〇くん大歓迎ですから笑
〇〇:ばいばーい、まいねえ!
麻衣:ばいばーい、〇〇くん!
元気いっぱいに2人は手を振って別れた。
そんな感じに、〇〇の家と麻衣の家の人たちは交流が深くて、時々お互いの両親が休みの日にはバーベキューをしたり、どこか遊びに出掛けていくこともあった。
しかし〇〇が小学生になる直前、麻衣の父が転勤することになり深川家は引っ越すことになってしまった。
引っ越し当日、〇〇はしょんぼりした顔で麻衣にお別れを言いに両親と来た。
〇〇:まいねえ、いっちゃうの?
麻衣:うん、ごめんね。お父さんのお仕事する場所が変わっちゃうから、行かないとなの。
〇〇:もう、会えない?
泣きそうになっていた〇〇を見て、麻衣は励まそうとした。
麻衣:そんなことないよ!ちょっと待ってて!
麻衣が家に戻って少しすると、麻衣がノートの切れ端を持って〇〇に渡した。
麻衣:はい、これ。
〇〇:なに、これ?
麻衣:私の電話番号だよ。これで、いつでも話せるでしょ?
〇〇:じゃあ、またあえる?
麻衣:うん、また会えるよ。
〇〇:わかった。
泣くのを堪えた〇〇を、麻衣が優しくハグした。
麻衣:またね、〇〇くん。
〇〇:うん、またね。げんきでいてね、まいねえ。
麻衣:うん、ありがとう。
〇〇にとって、人生で初めての辛い別れだった。
〜現在〜
〇〇は高校を卒業して直ぐ、就職した。
〇〇の両親は、〇〇に大学に行っても良いと言ったが、〇〇はここまで育ててくれた大好きな両親に恩返しを早くしたくて仕事に就くことを選んだ。
それに、就職先は〇〇が第一希望の会社で仕事は面白そうだったから、〇〇に不満なんてものは無い…筈だった。
〜〇〇の勤める会社〜
上司:だから、何回言えば分かるんだよ‼️
〇〇:すいません…ですが…
上司:いいから口動かす前に、手を動かせ。
明日までに資料作っておけよ?
〇〇:か、かしこまりました…
ほぼ毎日のように、上司からの怒号が〇〇に飛んでいた。
がそれは〇〇に限ったことでなく〇〇の同僚も同じで、皆んな揃って担当の上司がいる日は怖くて仕方なかった。
〇〇:はぁ…
同僚:〇〇、少し休んだら?
〇〇:うん、でも早く終わらせないと。
同僚:いやでも、〇〇にあの人仕事押し付け過ぎだと思うな。無理すんなよ?
〇〇:ありがとう…
同僚は〇〇のデスクに缶コーヒーを置いて、休憩を取りに行った。
〜24:00〜
〇〇:うわ、もうこんな時間⁉️
ようやく仕事が片付き会社を出ようとして時計を見ると、終電ギリギリの時間だった。
〇〇:急がなきゃ。
ダッシュして〇〇は駅に向かい、終電になんとか間に合った。
息づかいが荒いまま、〇〇は自宅のアパートに着き部屋に入った。
〇〇:はぁ…
今の会社に入社してそろそろ1年が経とうとしていた。
〇〇:きついな…
時々1人暮らしの〇〇を心配して両親が電話してくることがあったが、〇〇は両親に心配かけまいと上司のことは隠して平静を装っていた。
〇〇:(きっと時間が経てば、平気になる)
そう思って会社になんとか通っていたが、そろそろ〇〇にも限界が来ていた。
〇〇:う、うぇ…
トイレで吐いてしまい、目に涙が浮かんでいた。
〇〇:(な、何やっているんだろう…俺)
トイレから出て、廊下の壁に寄りかかりそのまま床に崩れ落ちた。
何度か会社を辞めようと思って〇〇は転職を試みたが、ハローワークに行っても今の会社を辞めるのは勿体無いなどと言われたり、実際に他の会社の説明会に行ってもイマイチだったりで、上手くいかなかった。
〇〇:どうすりゃ良いんだ…俺は。
蹲っていたその時、ベッドに置いていた〇〇スマホが鳴り響くのが聞こえた。
〇〇:はぁ…誰?
少しイラつきながら寝室に向かい、スマホを拾い上げた〇〇は身体が固まった。
〇〇:え…??
「まいねえ」
スマホの画面に、電話をかけてきた相手の名前がそう表示されていた。
〇〇:麻衣、姉…
物凄く久しぶりに口にした名前で、〇〇の頭に小さかった頃の麻衣の顔が思い浮かぶ。
〇〇:もしもし…
電話に出ると、
?:〇〇くん?
声が変わっていた為最初は戸惑った〇〇だが、
すぐ聞き返した。
〇〇:ま、麻衣姉…なの?
麻衣:良かったあ、覚えててくれて!久しぶり、〇〇くん!
それから、麻衣の口から名字が深川なことと、小さい時に住んでいた場所の住所が告げられ、ようやく〇〇は電話の相手を麻衣だと認識出来た。
〇〇:ごめん、麻衣姉。声が変わってて分からなくて…
麻衣:あはは、そうだよね。私が〇〇の家の隣から引っ越して、もう12年経ったし。
〇〇:12年、か…
12年前の、別れ際のことを思い出して〇〇は言った。
〇〇:麻衣姉がくれたよね、電話番号が書いた紙をさ。
麻衣:そうそう!〇〇くんが寂しくないように、って思ってさ。
〇〇:ごめん、一回も電話して来なくて…
麻衣:ううん、全然!でも、〇〇くん声カッコ良くなったね。
〇〇:そ、そう?
麻衣:うん、暫く会わないうちにハンサムになったね。
〇〇:ハンサム、かな…
麻衣:うん。
〇〇:麻衣姉も、その…声綺麗になったね。
麻衣:え、本当?嬉しい、そう言ってくれて。
〇〇:え、ああ…
通話越しで、〇〇は顔が赤くなっていた。
麻衣:おませさんになったか、〇〇くんも笑
〇〇:お、おませさんって…笑
突然の麻衣からの電話で、久しぶりに麻衣と話せた〇〇は一気に元気を取り戻していた。
麻衣:ねぇ、明後日の土曜日にさ久しぶりに合わない?
〇〇:え、あ、会えるの?
麻衣:うん、予定空いてるんだ。どう?
〇〇:もちろん、会いたいよ。
麻衣:じゃあ、会おうか!
〇〇は麻衣と待ち合わせの駅を確認して、土曜日に会う約束をした。
麻衣:じゃあ、今度の土曜日ね。
〇〇:うん、土曜ね。
その時、通話越しに麻衣が鼻を啜る音が聞こえた。
〇〇:あれ、風邪?
麻衣:え、あぁ…軽い鼻水だよ。
〇〇:じゃあ、早く寝ないとだね。
麻衣:そうだね、こんな夜更かししてちゃ怒られるね。
〇〇:まぁ、もう2人とも大人だけど…
麻衣:ふふ。じゃ、またね。
〇〇:うん、またね。
麻衣との通話を終えた〇〇は、久しぶりに人生で幸せを感じた気がした。
〇〇:麻衣姉に、会える。
そう思うと、遠足前みたいに眠れなくなりそうだった。
〜土曜日 10:00〜
約束した待ち合わせの駅に降りた〇〇が改札口を通ると、スマホに通知が来た。
「左の柱に立っているよ〜」
メッセージを読んだ〇〇が左の柱を見ると、
手を振っている女性がいた。
〇〇:ま、麻衣姉…だよね?
近づくと麻衣が頷いた。
麻衣:そうだよ、久しぶり〇〇くん!
〇〇:うん、久しぶり。
大人になった麻衣を見て、〇〇は思った。
〇〇:(凄く綺麗になってる、麻衣姉が…)
麻衣:ふふ、お互い成長したね。
〇〇:そ、そうだね。
麻衣:あんな小さかったのに、こんな大きくなって。
と言って麻衣は、〇〇の頭に手を添えた。
〇〇:あ…
麻衣:ああ、ごめんね。久しぶりに会えてつい嬉しくてさ。
〇〇:う、ううん。全然。
あの頃と変わらず優しい麻衣だと思えて、〇〇は寧ろ安心していた。
麻衣:これからどうしようか?
〇〇:え、ああ…
待ち合わせをしたは良いものの、どこに行くとかを2人は何も決めていなかった。
〇〇:麻衣姉が行きたいとことか、ある?
麻衣:え、行きたいところか…
〇〇:うん、そこに行こうよ。
麻衣:えっと、じゃあ…
麻衣:水族館!
〇〇:す、水族館?
麻衣:ダメかな?
〇〇:ううん、良いよ!水族館、行こう。
麻衣:じゃあ、決まりだね。
水族館、なんて可愛いんだ…
と〇〇が1人で思っていると、麻衣が手を差し出してきた。
〇〇:へ?
麻衣:はぐれないように、手繋ご?
〇〇:あ、うん…
麻衣の手を繋いだ瞬間、〇〇は胸がドキっとした。
〇〇:(麻衣姉と、手繋いでる…??)
けれど一緒に歩き出して、麻衣と目が合う度に思わず〇〇と麻衣は微笑んでいて、そうしているうちに〇〇は段々とウキウキしてきた。
水族館に着いた〇〇と麻衣は、色んな海の生き物たちを観て周った。
麻衣:ねぇ、このクリオネ可愛いね。
〇〇:本当だね、小さくて可愛い。
と2人で指差してクリオネを見つめたり、
麻衣:うわ、この子綺麗な鱗してるー!
〇〇:ふふ、綺麗だね。
とはしゃぐ麻衣を見て〇〇が和んだり、
麻衣:待って、イルカさんこっちに来てない?
〇〇:え、あっ、本当だ!
イルカがこちらのガラス窓まで泳いできて、頭を擦り付けてきた。
麻衣:うわ、可愛い!
〇〇:なんか麻衣姉に懐いてるみたいだね。
麻衣:え、そうかな?そうだったら嬉しいな。
〇〇:きっとそうだよ、ほら。
イルカが一瞬笑ったように見えた。
麻衣:あ、笑った⁉️今、笑ったよね?
〇〇:ふふ、写真撮るね。
麻衣:うん。
〇〇が手を伸ばして、〇〇と麻衣、イルカをスマホで撮影した。
麻衣:ありがとう、〇〇くん!
〇〇:うん、あとで写真送るね。
それからも、〇〇と麻衣は水族館を周って楽しんでいた。
麻衣:はぁ〜、凄かったね。イルカさんとアシカさんのショー。
〇〇:ね、輪っかにジャンプしてくぐったり。
麻衣:うんうん。あと、アシカさんのボールを頭で何回もリフティングしてるのとかもさ。
楽しそうに喋る麻衣を見て、〇〇は嬉しくなっていた。
〇〇:ふふ。
麻衣:ん、どうしたの?
〇〇:いや、麻衣姉が楽しそうにしてるのみたら、なんか嬉しくてね。
麻衣:ふふ、なんか前とは逆だね。前は〇〇くんのこと面倒見てたの私だったのに、今日は〇〇くんがリードしてくれてたね。
〇〇:な、なんかそう言われると…
麻衣:ふふ、でも照れてる〇〇くんは昔みたいで可愛いね。
麻衣からそう言われて少し悔しいと思った〇〇だが、麻衣なりに自分のことを褒めてるんだと思うと〇〇はまた笑みが溢れた。
水族館を出てからは、レストランで美味しいものを食べたり、アパレルのお店に行って〇〇と麻衣でお互い服を試着したり、2人だけの時間を過ごしていた。
麻衣:あー、楽しかったな〜
〇〇:うん、俺も楽しかったよ。
と言っていたが、2人の横をカップルが通り過ぎた時に、麻衣が一瞬表情が曇るのが〇〇には見えた。
〇〇:麻衣姉?
麻衣:…
〇〇:だ、大丈夫?
麻衣:あ、うん…大丈夫だよ?
暗かった表情を無理やり変えて笑顔になった麻衣だが、どこか寂しげな感じがした。
〇〇:もしかして、風邪治ってない?
麻衣:あ、違うよ。風邪はもう治ったよ。
〇〇:そっか、なら安心したよ。
麻衣:うん、ありがとね。心配してくれて。
〇〇:うん。
明るい表情で喋っていた麻衣だが、また別のカップルが横を通った瞬間、麻衣の表情が暗くなっていた。
〇〇:(なんかあったんだ…きっと)
麻衣が隠し事をしてると思った瞬間、〇〇は麻衣のことを自分と重ね合わせていた。
そして、自然と口が開いた。
〇〇:あ、あのさ麻衣姉…
麻衣:うん、何?
〇〇:あ…やっぱり言うべきじゃ…
麻衣:なんかあったんだね?
〇〇:う、うん…
麻衣:大丈夫だよ、〇〇くんが悩みがあるなら何でも聞いてあげるよ。
その時の麻衣の顔を見た〇〇は、小さい時に自分が泣いていた時に慰めてくれた麻衣と同じに見えた。
その安心感からか、〇〇は直ぐ会社でのことを話した。
上司が無理難題な仕事を押し付けてくることや、そのせいで残業時間が毎日ほとんど3時間以上になっていたこと。
過労とストレスで、家で吐いていたこと。
麻衣:そんな、大変だったの…
〇〇:うん、でも父さんや母さんに心配かけたくなくて、2人には言ってなかった。
麻衣:でも、それ危ないよ!〇〇くん、このままその会社にいたら、本当に倒れちゃうよ⁉️
〇〇:そうだよね…やっぱり、2人に言った方が良いかな?
麻衣:うん、そうだね。私も〇〇くんについてって一緒に言うよ。
〇〇:え、良いよ。麻衣姉にそこまで迷惑かけられないよ…
麻衣:迷惑だなんて、思わないよ!だって…
麻衣の瞳が真っ直ぐ〇〇を見つめていた。
麻衣:もう私が、〇〇くんたちに迷惑かけているし…
〇〇:え?
意味が分からなくて一瞬戸惑った〇〇だが、直ぐにさっきの麻衣の表情が暗かった事が思い浮かんだ。
麻衣:この前さ、久しぶりに〇〇くんに電話したじゃん?
〇〇:う、うん。
麻衣:あのとき、風邪ひいたってのは嘘なの…そのちょっと前にね、彼氏にフラれたんだ…
麻衣に彼氏がいたことでさえ〇〇には驚きだったが、それ以上にショックなことを麻衣が経験していたことに〇〇は胸が痛くなった。
〇〇にそれを悟らせないように、麻衣は泣いていたのを鼻水と誤魔化したのかと思うと、余計に…
麻衣:彼、浮気してたの。なんでって聞いてもね、ちゃんと答えてくれなくて…そのまま荷物を持って出て行ったの。
〇〇:そんな、酷い…
麻衣:私は訳を聞いてやり直したかった。でも、彼にはそんな気はなかったみたい…
自分が被害者なのにそこまで思えるのかと、〇〇はやはり麻衣が優し過ぎる人だと思った。
麻衣:どうしたら良いか、分からなくなっちゃって…そしたらね、〇〇くんと撮った写真を飾っていたのが机から落ちて。拾ったら、私と〇〇くんがニコニコしているのが見えたの。
〇〇:(麻衣姉、俺との写真取っててくれてたんだ…)
麻衣:そしたらさ、〇〇くんと話したくなっちゃって。でも〇〇くんの電話番号分からなくて、それでね〇〇くんの家の電話番号にかけて
〇〇くんのお母さんに〇〇くんの番号教えてもらったの。
〇〇:そ、そうだったんだ…知らなかった。
麻衣:ごめんね、〇〇くんのお母さんにも黙っててってお願いしたんだ…
話しているうちに麻衣の目に涙が溜まっていた。
麻衣:〇〇くんに電話したら、〇〇くんが出てくれて私凄く嬉しかった。〇〇くんと話していたら昔を思い出してね、また会いたいって気持ちが強くなって、それで会おうって言い出したの。
〇〇:麻衣姉…
麻衣:今日の〇〇くん、凄くカッコ良かった。水族館にいた時も、レストランにいた時も、お店にいた時も、ずーっとずっとカッコ良くて優しくて、私〇〇くんといて幸せだったよ。
〇〇:そんな、俺はただ麻衣姉といて楽しんでただけだよ…
麻衣:そんなことなかったんだよ?さっきも言ったじゃん、今日は〇〇くんがリードしてるって。
〇〇:え、ああ…
麻衣:だからさ、こんなことまでお願いしたら欲張りだけど…
〇〇:ま、麻衣姉のお願いだったらなんでも聞くよ!
麻衣:え?
〇〇:だって麻衣姉はずっと、俺が家で1人になる時にいっつも遊んでくれてたじゃん!麻衣姉がずっと小さかった俺の面倒を見てくれて、
だから俺も母さんも父さんもすっごい感謝してるよ。だから、聞くよ!
麻衣への感謝と気持ちを真剣な表情で〇〇が伝えると、麻衣が我慢していた涙を垂らして〇〇に抱きついた。
麻衣:うぅ…、〇〇くん…
〇〇:麻衣姉。
麻衣:ありがとう!
〇〇:うん。
麻衣:じゃ、い、言うね?私のお願い。
〇〇:うん。
麻衣が話すのを、〇〇は静かに待っていた。
麻衣:一緒に暮らさない?
〇〇:え?
麻衣:私と、一緒に。
〇〇:俺が、麻衣姉…と?
麻衣:うん、私〇〇くんと暮らしたい。
麻衣の願いを聞いた〇〇はすぐに答えた。
〇〇:俺も、麻衣姉と暮らしたい。麻衣姉を支えたい!
麻衣:ふふ、私も〇〇くんを支えたい。
こうして、離れ離れになっていた2人は再び一緒になった。
その後〇〇は麻衣と一緒に実家に帰り、今の会社を辞めて麻衣の知り合いの勧めた会社に転職することと、麻衣と一緒に暮らすことを両親に伝えた。
〇父:そうか。〇〇、すまなかったな…そんなつらかったなんて父さんたち知らなくて。
〇〇:ううん、俺こそごめん。黙ってて。
〇母:でも良かったわ、〇〇が麻衣ちゃんと一緒に暮らすって聞けて。〇〇を宜しくお願いします。
麻衣:いえ、私から〇〇くんに頼んだことですから。
〇父:私からも、〇〇をお願いします。
〇〇:え、ああ…
〇〇も頭を下げようとすると、麻衣が止めた。
麻衣:良いの、しなくて。
〇〇:そう?
麻衣:うん!
それから〇〇と麻衣は麻衣の実家にも言って、一緒に暮らすことを報告してきた。
麻衣の両親も、〇〇が麻衣と一緒に住むことを快諾してくれた。
深父:いやー、やっとだね?母さん。
麻衣:え?
深母:そうねー、お父さん。いつになったら、麻衣が〇〇くんとくっつくのかと。
麻衣:本当にそう思ってた??
深父:いや、今思った。
麻衣:ズゴッ⁉️
〇〇:え…あはは…
まぁ…何はともあれ、2人は一緒に暮らし始めた。
〜数ヶ月後〜
〇〇:橋本課長、出来ました。
麻衣の紹介で新しく勤め始めた職場で、〇〇は上司の奈々未に書類を提出した。
奈々未:速ッ!もう出来たの⁉️
〇〇:ええ、ただ修正出来る箇所はあるかもしれませんが。
奈々未:良いよ良いよ、そのために私が確認するんだから。ありがとね。
〇〇:いえ…では。
奈々未:ふふ、自信持って良いのよ?この前だって、入ったばかりで早速営業してもらったのに、すぐ契約取ったんだから〇〇くんは。
〇〇:いえ、あれは橋本さんのお陰ですよ。
奈々未:ふふ謙虚だね、〇〇くんは。
新しく〇〇の上司となった奈々未は気さくで、面倒見が良く、時々ユーモアがある人で〇〇は直ぐ打ち解けた。
〇〇が会社から帰ってくると、麻衣が先に家に帰ってきていた。
麻衣:あ、おかえり〇〇くん。
〇〇:ただいま、麻衣姉。
麻衣:ふふ、どう今の会社は?
〇〇:うん、凄く楽しいよ。仕事は時々大変だけど面白いし、橋本さんも周りもみんな優しくて、入社させて貰えたのが本当に有り難く思うよ。
麻衣:良かった〜、まあ奈々未は面白い子だし良い会社だと思ったからね。
〇〇:ありがとう、麻衣姉。紹介してくれて。
麻衣:いえいえ。
〇〇:あ、ご飯作るよ。
麻衣:じゃあ、私も一緒に。
〇〇は麻衣と一緒に、夕食にハンバーグを作った。
麻衣:んふふ、美味しい!
〇〇:美味しいね。あ、麻衣姉ついてるよ。
麻衣の頬についたデミグラスソースを〇〇が取ってあげた。
麻衣:あ、ごめん…
〇〇:ふふ、良いよ。
麻衣:ねぇ、〇〇くん。これからお互い名前だけで呼ばない?
〇〇:え?名前だけで?
麻衣:そう。だから私は〇〇くんのことを〇〇、〇〇くんは私のことを麻衣って。
〇〇:い、良いけど…なんで?
麻衣:え、分からない?
〇〇:ご、ごめん…
麻衣:じゃあ、言うね。
〇〇くんと私、
これから恋人同士になるからだよ。
〇〇:麻衣姉…
麻衣:ふふ、もう麻衣姉は無しだよ。
〇〇:わ、わかった…麻衣。
麻衣:ふふ、〇〇。大好きだよ。
〇〇:俺も、麻衣が大好き。
恥ずかしくなって湯気が立つくらい顔が赤くなる〇〇を見て、麻衣が笑っていた。
fin.
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