朝からアホみたいにテンションが高い姉は、弟を振り向かせたい。
バンッ
勢いよく部屋のドアが開かれ、〇〇が寝てるベッドに影が突進してきた。
?:おりゃアアア❗️
〇〇:ぶほっ⁉️
姉の美月に腹をどつかれ、夢から覚めた〇〇は目が見開いた。
〇〇:イタタタッ…
美月:よっ!起きたね〇〇。
〇〇:何が、よっ!だよ…
〇〇:朝から戦車みたいに人の寝てるところに突っ込んできて…
美月:いつも同じパターンじゃ飽きたから。
〇〇:何が飽きただよ…腹が貫通したかと思ったわ。
美月:あ、でも〜スヤスヤ寝てる〇〇をもうちょっと拝めば良かったな〜
〇〇:姉ちゃん。
美月:何?
〇〇:それ弟に直接言って恥ずかしくないの?
美月:ぜ〜んぜん!
美月:だって好きなんだもん❤️
〇〇:ダメダコリャ…
こうして〇〇の朝は姉に叩き起こされて始まるのだ…
ー通学路ー
美月:ねぇ〜ねぇ〜
〇〇:何?
美月:バックハグして。
両手を広げた美月が、〇〇に向かって言う。
〇〇:はぁああ⁉️
〇〇:何言いだすの、いきなり⁉️
美月:いや今日のゼミでさ発表があって、緊張し過ぎて失敗しそうなの。
美月:だから〜、〇〇から元気分けてもらおうと思って〜
〇〇:いや無理。
美月:なんで〜!?お願い!姉ちゃんの頼みだよ?
〇〇:無理だって、こんな外でそんな恋人みたいなこと見せびらかすのは。
美月:ぷ〜、〇〇のケチーッ。
弟にハグを断られて、不貞腐れる美月だった。
〇〇:まぁ、今日のゼミ頑張って。
美月:あ、だったら…
〇〇:何?
美月:ふふ。
美月は〇〇の後ろに回り込むと、
ギュッ
〇〇:へ⁉️
〇〇をバックハグした。
美月:あ〜、可愛い〇〇!
〇〇:ちょっ、離してって姉ちゃん!?
美月:やだも〜ん。
美月:この幸せは、止められないぜ〜
〇〇:意味分かんない!
ボコッ
2人で騒がしくしていると、美月の頭を叩く音がした。
蓮加:何朝からやっているのよ、美月。
美月:あ、れんたん!
蓮加:そのままだと、ゼミの発表手伝わないよ?
蓮加が呆れた顔をして、美月に言った。
美月:え、そ、それは勘弁してくだされー!
蓮加:じゃ、早く〇〇くん離してあげな。
美月:へ、へい…
〇〇:(いやー、蓮加さんナイス!)
蓮加に諭され、漸く美月は〇〇を解放した。
蓮加:朝から大変だね、〇〇くん。
〇〇:いやはや、助かりました蓮加さん。
蓮加:どういたしまして。
美月:あ、なんでれんたんには笑ってくれるのに、私にはそうじゃないのー?〇〇ー。
蓮加:ま、この馬鹿の面倒はちゃんと見るから。
美月:おい、人のこと馬鹿って!
蓮加:はいはい、行くよ〜
美月:あ、ちょっ、離せこら〜
美月の肩を引っ張りながら、蓮加は〇〇に手を振って別れた。
〇〇:(いや〜しかし凄いな、蓮加さんは。)
ー大学 敷地内ー
美月:ね〜、れんたん?
蓮加:何?
美月:どうしたら、〇〇振り向いてくれるかな〜?
蓮加:まだ、それ考えてんの?
美月:だって、前は「お姉ちゃん」「お姉ちゃん」って可愛らしく来てくれたんだよ、〇〇は。
美月:けど、今じゃそんなことしてくれなくなって…
蓮加:あのね…思春期ってそんなものでしょ?
蓮加:いつまでも、〇〇くんもお姉さんに甘えたがるわけじゃないの。
美月:え〜、そうだけど。
蓮加:はいはい、どうせ気持ち抑えられないとかでしょ?
美月:Yes.
蓮加:何がイエスよ。
蓮加:でも、このままだと本当に〇〇くんに嫌われるよ?
美月:それは、嫌だ。
蓮加:だったら、今日は大人しくすること。
美月:ふぇ〜い…
蓮加:ほら、ジュース奢るから元気だせい。
美月:おっ、嬉しい!
蓮加:(なんて単純なんだ…)
ー高校 教室ー
〇〇:はぁ〜
溜め息をつきながら、〇〇は自分の席についた。
?:〇〇くん、おはよう!
声をかけられ横を向くと、〇〇の隣の席であるさくらがニコニコしながら挨拶してきた。
〇〇:ん?おお!さくちゃん。
さくら:どうしたの、なんか疲れた顔してるよ?
〇〇:え、いや…いつものことだよ。
さくら:あ、もしかしてお姉さん?
〇〇:あ、うん…正解。
〇〇から話を聞いていて、〇〇の姉が〇〇にスキンシップなどが激しい事をさくらは知っていた。
さくら:ふふ、良いじゃない。
さくら:お姉さん、〇〇くんのこと大好きなんだよ。
〇〇:いや、それは分かるけど…
〇〇:でも勘弁してほしいよ。
さくら:まぁ、〇〇くんの気持ちも分かるよ。
さくら:あ、そうだ。
〇〇:何?
さくら:一回さ、お姉さんに物凄く優しくしてあげてみたら?
さくら:そしたら、〇〇くんに対するスキンシップも少しは落ち着くかも。
〇〇:本当に?
さくら:うん。私もね、前は凄く弟の幸太が可愛いく見えて仕方ない時があったの。
〇〇:そうなの?(てか、弟くん羨ましい…)
さくら:でもね、いつも可愛がるのを嫌がっていた幸太がね、急に凄く優しくしてくれてね。
さくら:なんかそれからかな、幸太に変にしつこくなったりしなくなったかな〜。
〇〇:へ〜、どうして?
さくら:なんか安心出来たんだよね、幸太がちゃんと私のこと大切に思ってくれてるって分かったからかな。
〇〇:そっか…
〇〇:やってみるよ。
さくら:うん、そうしてみて。
〇〇:ありがとう、さくちゃん。
さくら:いえいえ。
話し終えたさくらの横顔に、〇〇は見惚れていた。
〇〇:(本当、さくちゃん良い子だよな)
〇〇:(俺のくだらない悩みに真剣に相談に乗ってくれて)
〇〇:(それに可愛いし、愛嬌もあって。)
〇〇:(そんなさくちゃんに、いつか…)
と、〇〇は頭の中で1人淡いことを考えていた。
〇〇:(あ、だから俺…姉ちゃんに…)
ー〇〇と美月の家ー
〇〇:ただいまーッ
〇母:おかえりー。
母と会ってから、〇〇は2階の自室に向かった。
その30分後、
美月:ただいま…
〇母:おかえり、あらどうしたの?
美月:別に…
と、美月が帰ってきて母と話す声が〇〇には聞こえた。
〇〇:姉ちゃん…
流石に心配になったのと、さくらとの約束もあって〇〇は美月の部屋に向かった。
コンコンッ
ドアをノックするも、反応は無かった。
〇〇:(大丈夫かな…)
〇〇:姉ちゃん?
声をかけても、返事がない。
〇〇:入って良い?
美月:…うん。
漸く美月の声が聞こえたが、朝の時とは真反対に小さかった。
〇〇が美月の部屋に入ると、ベッドに座りながら肩を落として窓を眺める美月がいた。
〇〇:大丈夫?
美月:なんで?
〇〇:なんか凄く元気ないから。
美月:そう…?
〇〇:うん、もしかして…ゼミの発表?
美月:ううん、それは上手くいった。
〇〇:そっか、良かった。
美月:うん。
まだ美月の声は小さかった。
美月:〇〇?
〇〇:何?
美月:姉ちゃんのこと、嫌い?
〇〇:え?
美月:正直に言って良いよ…
〇〇:いや、その…
思っていたのと違う感じになり、〇〇は何を言えば良いか一瞬迷った。
〇〇:…
そのまま、〇〇は黙って美月の後ろに回り込むと、
美月:え?
そっと、姉の美月をバックハグした。
〇〇:嫌いなんかじゃないよ。
〇〇:ごめんね、最近冷たくて。
美月:〇〇…
美月:ううん、姉ちゃんこそごめんね!
美月:いつまでも、ブラコンじゃダメだよね…
〇〇:姉ちゃん。
美月:何?
〇〇:俺、ずっと言ってなかったことがあるんだ…
美月:何?
〇〇:好きな人が出来た。
美月:そうなの?
〇〇:うん、でもさ…
〇〇:ちょっと前まで、俺姉ちゃん大好き弟だったじゃん?
美月:うん。
〇〇:けど、そのままじゃダメだと思ってさ。
〇〇:そしたら、いつの間にか姉ちゃんを避けていた。
美月:〇〇…
〇〇:身勝手だよね、散々甘えてた癖に…
美月:そんなこと、ないよ。
〇〇:え?
美月:私は凄く嬉しいよ。
美月:〇〇に好きな人が出来て。
〇〇:姉ちゃん…
美月:だから、私のことなんか気にしないでね。
美月:ま、ちょっと寂しいけど…
〇〇:あ、ありがとう…
それから、〇〇はさくらのことを美月に話した。
美月:そのさくらちゃんが〇〇に、私に優しくしてみてって?
〇〇:うん。
美月:そっか、優しい子だね。
〇〇:そうなんだよ、さくちゃんは。
美月:なら、尚更だね。
〇〇:え?
美月:絶対、さくらちゃんと付き合いなよ?
〇〇:姉ちゃん…
美月:〇〇が好きな人なんだし。
美月:それから、会って私もさくらちゃんにお礼言いたいし。
〇〇:うん!
美月:ふふ、じゃー指切りげんまんしよっか。
〇〇:え?指切りげんまん?笑
美月:うん。
〇〇:分かった。
美月と指切りげんまんをした〇〇。
美月:あ、あと…
〇〇:ん?
ギュッ
美月:今だけ、こうしていたいな…
〇〇:良いよ。
バックハグしてきた美月に、〇〇は微笑みかけて言った。
美月:ふふ、ありがと。
〇〇:今だけじゃなくても…
美月:え?
〇〇:たまにくらいなら、何度でも…
美月:良いの?
〇〇:う、うん…
美月:くー、なんて良い弟だー❗️
〇〇:あ、ちょっ、姉ちゃんキツい❗️
美月:あ、ごめん。嬉しくてつい…笑
〇〇:良いけど…笑
漸く朝みたいな元気な姉を見れて、〇〇は安心した。
想いを伝えるのに、余計なことはいらないのかもしれない…
fin.
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