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デレデレだったのが急に兄に口を聞かなくなったけど、やっぱり兄が大好きな妹

〇〇:ふあ〜

起きてベッドから出て、顔を洗いに行く。

〇〇:あっ。

蓮加:・・・

気まずそうに妹の蓮加と洗面所ですれ違った。

ここ最近ずっとこんな感じだ。

何故こうなってしまったのか俺には心当たりが全く無かった。


つい、この前まで金魚の糞のようにずっとくっついていたのに。


蓮加:ぎゅ〜〜〜

〇〇:おい、蓮加離せって。

蓮加:嫌だも〜ん、お兄ちゃんは誰にも渡さないから!

〇〇:はは、誰が俺を取るんだよ。

蓮加:分かんないけど、誰か!

〇〇:心配するなって、俺はずっと蓮加のお兄ちゃんだから。

蓮加:どっか行ったりしない?

〇〇:しない、しない!

蓮加:分かった。

すっ

蓮加:じゃあ、離してあげる♪

〇〇:ありがと。

蓮加:ふふ。

〇〇:アイス食べるか?

蓮加:え、奢ってくれるの?

〇〇:ああ、母さんたちには内緒だぞ?

蓮加:うん、ありがとう!



こんな感じで、俺のことが大好きだった。

一体何があったのだろうか…




ー乃木町高校ー


美月:お〜い、れんた〜ん!

蓮加:・・・・

蓮加の親友、美月が話しかけるも蓮加は無言で机に伏せていた。

美月:もしもし、生きてますか〜?

蓮加:あ、おはよ…

ようやく起き上がった蓮加の目は死んだ魚のようになっていた。

美月:まだお兄さんのこと分からないの?

蓮加:うん、聞けてない。

美月:早く聞いた方が良いよ?いつまでもモヤモヤしてるの嫌でしょ?

蓮加:そんな簡単なことじゃないの!だってお兄ちゃんが好きになっている人が…

美月:でもれんたんが見たのは、お兄さんとその結衣って人が一緒にいたところでしょ?それだけじゃ、好きかどうかは…

蓮加:でも、嬉しそうに喋っていた…絶対そうだよ。

美月:んまぁ〜、それはお互いに好意があるかもね…でも、れんたんもいつまでもブラコンじゃダメだよ?お兄さん困っちゃうから。

蓮加:それは、分かっているけど…


分かっているけど、出来ないの。

お兄ちゃんがあまりにもカッコ良いし、優しいから…

ずるいよ…そんな完璧なお兄ちゃん以上な人になんて出会えないよ。




ー雛山大学 食堂ー

結衣:どうしたの、〇〇くん?

〇〇:え、いや〜どうもないけど?

結衣:凄く考えことしてる顔だったよ?

〇〇:そうか、いやちょっとね家のことで。

結衣:私で良ければ相談に乗るよ?

〇〇:ありがとう。


結衣:そっか…妹ちゃんと最近口聞かないんだ…

〇〇:俺なんで蓮加があんな風になったのか分からないんだ。

結衣:もしかしたら、好きな人出来たとか?

〇〇:蓮加に?

結衣:そうそう。でも、ずっと〇〇くんのことが好きでそれで複雑なんじゃないかな?

〇〇:そう、なのか…

結衣:まぁ、あくまで私の憶測だけどね。

〇〇:なら、こんな心配してちゃダメだよな。

結衣:優しく接してあげてみて。

〇〇:うん、ありがとうな相談に乗ってくれて。

結衣:良いって良いって。じゃあ、またね。

〇〇:ああ、またな。

〇〇は女友だちの結衣と別れた。

いつも優しくて、おおらかな雰囲気の彼女に〇〇は次第に心が惹かれていた。

〇〇:(いつも悪いな、結衣には)

と〇〇は思いながら席を立った。


そこから少し離れたところで、結衣が舌打ちしているのにも気付かずに…




蓮加:あ…

下校中の道で、少し離れたところに〇〇が男友だちと一緒に喋りながら歩いているのが見えた。

蓮加:(お兄ちゃん…)

少し前まで、兄にくっつきまくっていたのを思い返す。

(回想)

蓮加:み〜っけ!お兄ちゃん!

〇〇:蓮加。もう学校終わったの?

蓮加:そ〜だよ。(上目遣い)

〇〇:何今度はおねだりする気かな?笑

蓮加:へへ〜さぁ〜なんでしょうか笑笑

〇〇:あ、ゲーセン行くか。

蓮加:お、さっすがお兄ちゃん!

〇〇:いや、当たったんかい!笑

蓮加:そ〜だよ笑

(ここまで回想)


蓮加:(お兄ちゃん、ごめん。あんなに沢山優しくしてくれたのに…蓮加が…)

蓮加:!?

気配を察知して振り返ると、見知らぬ男が3人蓮加の前に立っていた。

?:ちょっと顔貸してくんねーかな、嬢ちゃん。

蓮加:な、何ですか…

距離を取ろうとした蓮加の腕を茶髪の男が掴む。

?:おい、逃げようとするなよ?

蓮加:いや!!離して!!!

?:騒ぐんじゃねー!!!

茶髪の男は乱暴に蓮加を引っ張り地面に叩きつけた。

蓮加:きゃっ!?

?:おらああ。

横に立っていた赤髪の男が蓮加の背中に蹴りを入れる。

蓮加:うぐっ!?

?:さて、どうしてやろうかな??

蓮加の口を手で塞ぎ、気味の悪い笑みを頰に傷をつけた男が浮かべていた。

?:へへへ…


シュンッ

風を切る音とともに、棒立ちしていた茶髪の男の首の脊髄部分に回し蹴りが入った。

ズシュッ

?:ぐがぁ!?

バタンッ

?:なっ!?

仲間の茶髪の男が倒され、立っていた赤髪の男が拳を構えた。

が、急接近した影から目にも止まらぬスピードで複数のジャブが赤髪の男に向かって飛んできた。

?:ごはぁああ!?

呆気なく赤髪の男もダウンした。


?:だ、誰だてめ…

頰に傷がついた男が言い切る前に、男の顔面に蹴りが飛んできた。

ズゴッ

?:んがぁ!?

顔面に蹴りを受けた男が地面に転がされ、呻く。

蓮加:!

男たちに襲い掛かった者の顔を見て蓮加が驚きの表情を見せた。



〇〇:俺の妹に何してんだ?お前ら…

?:ちっ、るせぇええ!!!

〇〇に蹴飛ばされた男が、右手に金属のものを光らせていた。

蓮加:(!ナイフ!?)

?:うおおおお!!!

蓮加:お兄ちゃん⁉️

バキーンッ

?:え…

男が持っていたはずのポケットナイフの刃が折れて飛ばされていた。

〇〇:!

鋭い眼光を見せながら、〇〇は渾身のアッパーを男の顎に浴びせ、浮かんだ体の腹部にキックを食らわす。



3人が気絶したのを確認し、〇〇は警察に通報した。

〇〇:はぁ〜、はぁ〜

蓮加:お兄…ちゃん…

〇〇は蓮加のもとに駆け寄ると抱きしめた。

〇〇:ごめんな、蓮加…こんな怖い思いさせて…

蓮加:うう…お兄ちゃああん!!

恐怖から解放された安心感からか、蓮加は〇〇の胸元で号泣した。

〇〇:もう大丈夫だからな…

蓮加:うん…


少ししてパトカーが到着した。

それから事情聴取を〇〇と蓮加が受けた。

男たちから襲ってきたことが証明され、〇〇は正当防衛で罪には問われなかった。

それと同時に、男たちの自白で男たちに蓮加を襲わせた人間が判明した。

それは…


ー結衣の家ー

結衣:け、警察?

警官:署まで同行してもらいます。


署で結衣が話したところによると、〇〇と蓮加が仲睦まじくいる様子を何度も見てそれが許せなくて、昔の不良仲間の男たちに蓮加を襲わせたということだった。




〇〇と蓮加を迎えにきた両親が、二人に抱きついた。

母:ひどい怪我ね、怖かったでしょ?

蓮加:うん、でもお兄ちゃんが助けてくれたの。

父:そうか、さすが元日本一だな。

実は〇〇は中学生の時に空手の全国大会で優勝したことがあった。

父:腕は鈍ってないな笑

〇〇:まぁ〜ね。

母:ちょっとお父さん、笑っている場合じゃないのよ?

父:ああ、ごめんな蓮加。

蓮加:ふふ、良いよお父さん。ね?お兄ちゃん?

〇〇:え?あ、うん。


家に帰ると、蓮加が〇〇と二人きりで話したいと言ってきた。


蓮加:ごめんね、お兄ちゃん。私のせいで…

〇〇:大丈夫だって、蓮加。気にすることなんか何もないよ。

蓮加:でも、私がお兄ちゃんのことが好き過ぎて、結衣さんはあんなことを…私がこんなんじゃなかったら、結衣さんはあんなことしないで済んだんじゃ…

〇〇:蓮加、そんなこと俺は間違っていると思う。

蓮加:え…

〇〇:俺は、蓮加が俺と結衣を思って言ってくれてるのはわかっているし、それは嬉しいよ?

蓮加:だったら…

〇〇:でもね、それだからって結衣が俺の大切なのを傷つけていい理由にはならないよ。

蓮加:お兄ちゃん…

〇〇:俺にとって、蓮加は大事な妹だよ。大好きな、大好きな蓮加なんだよ。

蓮加の目を見つめながら、〇〇は蓮加の頭をそっと撫でた。

その瞬間、蓮加の頰が赤くなった。そして、蓮加は久しぶりに兄に笑顔を見せた。

蓮加:お兄ちゃん。

〇〇:ん?

蓮加:蓮加も、お兄ちゃんが大、大大好き!!

〇〇:うん。




それから数日後


蓮加と〇〇の間に笑いが戻ってきた。

家にいる時、親の前で兄の〇〇に遠慮なく蓮加はくっついてきた。

その様子を見て、二人の両親はホッとしていた。


〇〇が大学から帰るとき、美月と一緒にいた蓮加が〇〇を見つけると、
兄の名を叫んだ。

蓮加:ヤッホ〜、お兄ちゃん!!

〇〇:おお、蓮加。美月ちゃんもこんにちは。

美月:こんにちは。

蓮加:あ、お兄ちゃん。あそこのカフェ行こうよ〜

〇〇:良いよ〜

美月:あ、じゃあ私はこのへんで〜

蓮加:ちょっと、なんでみづがいなくなるのよ〜?

美月:だって、これから二人でラブラブな時間を邪魔しちゃいけないでしょ?笑

蓮加:おい、からかうなこの雌ギツネ!!

美月:あはは、図星かって笑

〇〇:ははは、美月ちゃんも一緒に行こうよ。

美月:え、良いんですかお兄様?ありがとうございま〜す!

蓮加:やっぱ、みづ置いてくわ。

美月:え、なんで〜ひど〜い!!

と3人で戯れ合う様子も戻ってきた。


しばらくして、〇〇に新しい彼女ができた。

名前は、秋元真夏。

とても面倒見が良い真夏は〇〇の妹の蓮加のことも可愛がってくれたので、蓮加はすぐ真夏に懐いた。

〇〇に内緒で、二人で出かけたりするとこもあったので〇〇は内心ちょっと嫉妬したりもした。

けど、真夏に対して〇〇は感謝の気持ちの方がずっと強かった。


〇〇:ありがとな、真夏。この前、蓮加を遊びに連れてってくれて。蓮加が凄い楽しかったって言ってたよ。

真夏:そっか、良かった〜

〇〇:うん。

真夏:私もね、蓮加ちゃんと一緒に居て楽しかったよ。

〇〇:そっか、なら良かったよ。

真夏:あ、でも〇〇くんと一緒にいるのが一番楽しいからね。

〇〇:ふふ、分かってるよ。

〇〇と真夏で手を繋ぎながら、並木通りを歩いていた。


そして夜になり、〇〇と蓮加の両親が泊まりに出掛けていることもあり、真夏が〇〇の家に泊まりに行きたいと言ってきた。

家に帰ると、玄関に蓮加が迎えに来た。

蓮加:おかえり、お兄ちゃ…

〇〇:ただいま〜

〇〇の横に真夏がいるのを見て、蓮加は目を輝かせていた。


蓮加:真夏さんだああ!!わーい!

真夏:ふふ、こんばんは。

〇〇:今日泊まってくれるって、真夏が。

蓮加:え、やった〜!!

真夏:お邪魔させてもらうね。


それから、3人で家で焼肉パーティーをしていた。

〇〇と真夏の間に入ってくる蓮加を、二人は可愛がった。

その様子は、兄、姉、妹の3人で和気あいあいとしてる感じがした。



fin.










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