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2話「旅のはじまり」


ー九州ー

さくら:これが…ベルトの力…

さくらの目の前でベルトを装着した飛鳥が赤い光に包まれ、黄色く光るマスクと黒いボディスーツに赤く光るラインが引かれた謎の姿に変身した。



飛鳥:な、何なのこれ…

自身の姿が急に変わり驚く飛鳥に構わず、オルフェノクの姿となったひろしが、右手に三又の槍を召喚して飛鳥に襲い掛かる。



ひろし:ふぉおおお!

飛鳥:うわぁ!?

胴体を槍で突かれた飛鳥は地面に勢いよく転がされる。


ひろし:はっ!

地面に膝をついた飛鳥に追撃を食らわそうと、ひろしが飛び掛かるが、ギリギリで飛鳥は反応して横に転がりながら、飛びかかってきたひろしの背後を右脚で蹴飛ばす。

飛鳥:はぁ!

ひろし:!?


飛鳥からカウンターをもらったひろしは地面に転がされた後、体勢を立て直して再び槍で飛鳥に攻撃を仕掛けに行く。

ひろし:ベルトを渡せ!

飛鳥:!

が、今度は飛鳥の反応が早く、飛鳥はひろしの攻撃を避けると逆に槍を奪い取り、槍でひろしの腹部を突く。

ひろし:何!?

飛鳥:はぁーッ!



予想外の反撃をもらったひろしは狼狽えていた。その隙に、飛鳥は槍を投げ捨て連続でパンチをひろしに繰り出す。

飛鳥:は、は、はぁ❗️

ひろし:(は、速い…)

パンチを全てくらったひろしに、飛鳥は右脚で薙ぎ払うようにキックをおみまいした。

飛鳥:てぁああ❗️

渾身の一撃を飛鳥からもらったひろしは立ち尽くしていた。…


ひろし:き、きさま…

飛鳥からの猛攻を受け続けたオルフェノクの姿のひろしの身体から青い炎があがり、やがて全身が灰と化して崩れ落ちていった。



変身を解除した飛鳥は状況が飲み込めず、瞬きを数回して呆気にとられていた。

さくら:あ、あの…

飛鳥:なんなの、あの怪物は!?それに、このベルトも!?

さくらに声をかけられ、スイッチが入ったかのように飛鳥はさくらの方を向き声を荒げた。その勢いで、さくらは少し怯んだがすぐに飛鳥の質問に答える。

さくら:あれは、オルフェノクです。一度死んで蘇った存在で、人知れず人間を襲っているんです。

飛鳥:一度、死んで蘇った…

さくら:そして、このベルトはそのオルフェノクに対抗できる唯一のものです。でも分からないことが…

飛鳥:?

さくら:私には使えなくて、でもあなたには使えた…



ー東京ー

美月:どうして…

夜の校舎の屋上から飛び降りたはずの美月は、近くの橋の上で1人佇んでいた。

美月:もう生きていたくない…お姉ちゃんに会いたい…なのに、どうして…

自分には○ぬことすら許されないのかと、また絶望していた。


?:それは、あなたが選ばれた存在だからです。

突然声が聞こえ、驚いた美月は振り返る。

美月:誰!?

橋の向こうから、ミニスカを履いた水色が強調されている服を着た女性が現れた。

?:あなたをこれからサポートさせてもらう者です。

美月:私の、サポート…?



ー九州ー

さくらが持っていた寝袋で夜を過ごしたさくらと飛鳥は寝袋を畳み、さくらがコーヒーを2人分用意した。

さくら:どうぞ。

飛鳥:あ、うん…

素っ気ない態度を取るも、さくらからのコーヒーを飛鳥は受け取った。


さくら:?

さくらが横を向くと、隣で飛鳥がずっとコーヒーに息を吹きかけていた。

さくら:もしかして…猫舌ですか?

さくらがそう言うと、飛鳥がさくらの方を向き眉間にシワを寄せる。

飛鳥:…悪い?

さくら:い、いえ…あ、私がふぅ〜ふぅ〜しますよ?

飛鳥:しなくて良いから!

飛鳥は外方を向く。



さくら:あ、あの…

飛鳥:今度は何?

イラつきが見える飛鳥が若干怖く感じたさくらだが、なんとか聞きたいことを声に出す。

さくら:名前、聞いても良いですか?私は、遠藤さくらって言います。

少し黙っていた飛鳥を見て、聞いてはいけないことを聞いた気がしたさくらだったが、飛鳥が口を動かす。

飛鳥:齋藤飛鳥。

さくら:齋藤さんは、1人で旅を?

飛鳥:まぁね…それより…

さくら:?

飛鳥:あのベルト持っていたら危険じゃないの?あの、なんだっけ…

さくら:オルフェノク。

飛鳥:そう、そのオルフェノクとかが狙ってくるんでしょ?いっそどこかに捨てた…

さくら:ダメです!

急にさくらに大声を出された飛鳥は驚く。



飛鳥:ダメって…あなた昨日襲われたばっかでしょ??

さくら:でもだめなんです。あのベルト、東京にいる父さんが私に託してくれたもので、向こうで何かあったんです。

さくらの表情がさっきより真剣になる。

さくら:きっと助けを求めている。だから私が行かないと…でも、私にはベルトは使えない…!

さくらは何かを思いついたかのような顔をし、少し黙りそして再び口を動かす。

さくら:そうだ、飛鳥さん。一緒に東京まで…

飛鳥:嫌です!

さくら:そこをなんとか…

飛鳥:無理です!

さくら:でも、あのベルトを使えるのは今のところ齋藤さんだけだし…

飛鳥:ああ、もう…!!


飛鳥はバックを持ち上げ、バイクに載せるとエンジンをかける。

さくら:ちょっ、どこ行くんですか!?

飛鳥:1人旅の続き!悪いけど、もうあんな怪物に遭うのはご免よ。

さくら:それじゃ、私はどうしたら…

飛鳥:他にあたって!それか、捨てて!

飛鳥がバイクを走らせ、姿が遠くに小さくなっていく。




ー警視庁ー

白石麻衣

刑事歴3年。その鋭い洞察力から、組織の中でも一目置かれている彼女は今、とある事件の資料を読んでいた。

ー連続怪死事件ー

被害者たちの年代、性別はともにバラバラで、被害者たち同士の接点は今のところ見つかっていない。ただ共通するのは、全員身につけていた衣服を残して、彼らの肉体が灰化していたこと。如何なる殺害方法が使われたのかが不明である。

麻衣:(殺害方法は不明だけど、被害者の遺体が全て同じように灰化してる…同一犯の可能性は高い…)

?:白石、またそれ読んでいるのか?

麻衣:変だと思いませんか?

?:変って、まぁ…被害者全員の身体が砂みたいに変質してるのは確かに異常だよな…

麻衣:それもそうですけど、こんな大胆な事件がいまだに世間に報道されてないんですよ?絶対、何か裏がある筈…

?:気持ちは分かるけど、今はこっちの強盗事件が優先だ。

不満げな表情をしながら、麻衣は資料を閉じ部屋をあとにする。



ー都内ー

?:はい、今日からここがあなたの新しいお家です。

スマート・レディと名乗る女性に案内されたのは、高層マンションの15皆の一部屋だった。

部屋の中は既に家具などが用意され、キッチンや
リビング、トイレ、バスルームもちゃんと完備されており、セレブが住んでいるような雰囲気だった。

美月:ここが…一体どうして私の為にここまで…

スマ:新たにオルフェノクになった迷える子たちの生活をサポートするのも、私たちスマートブレインの役目なんです。

美月:オルフェノク?なんですか、それ?

スマ:貴女は一度屋上から飛び降りて○んだ…
そして蘇った。もう人間じゃないってことです。

人間じゃない…

そう告げられた瞬間、死んで向こうにいる姉に会うことすら許されず、代わりにオルフェノクという存在にされてしまったのかと、美月は神を呪った。



美月:嫌…お姉ちゃんに会わせて…

スマ:はい?

美月:お姉ちゃんに会わせてください!私は生きていたって…

取り乱していた美月が部屋を出ようとすると、

スマ:自分では○ねませんよ?

美月:え?

スマ:言ったじゃありませんか、貴女は一度○んで蘇った。飛び降りても、何も起きないですよ。

ドアノブに手をかけていた美月の左手に、スマート・レディが手を添えた。


スマ:とりあえず、今は落ち着いてください。

美月:…

スマ:何かあったんですね?貴女が亡くなる前に。

スマート・レディに引き留められ、美月は玄関のドアを閉めて部屋に戻った。



ー九州ー

さくら:もう…何もあんな風に怒んなくたって…

飛鳥と別れた場所に、さくらは1人留まりながら
不満を漏らす。

さくら:けど、仕方ないか…

バイクにのせてあるバックを見つめながら、さくらは父のことを思い浮かべていた。

さくら:(どうして、あのベルトを私に…父さん。私には使えないよ…)

(バイクのブレーキ音)

音を聞いた瞬間、さくらは少し期待して振り向いた。


さくら:齋藤さん!って…?

そこにいたのは飛鳥ではなく、ゴーグルをかけた見知らぬ男だった。

男:そのバック、ちょ〜だい。

男は不気味な笑みを浮かべると、顔に模様が浮かび次の瞬間、人の姿から頭が象の顔をした灰色の怪物に変化した。


さくら:!?オルフェノク…

男:ベルトをくれないなら、君の命もちょ〜だい。






さくらと別れた飛鳥は、バイクを止めて休憩していた。飛鳥はバックに入れた水筒を取り出そうと、バイクに載せたバックの口を開けた。

飛鳥:!?

中には、昨日飛鳥を謎の姿に変身させたベルトが入っているアタッシュケースが入っていた。

飛鳥:これ、あの子の…

飛鳥はすぐバイクのエンジンをかけ、さくらを探しに出発した。





さくら:はぁ〜、はぁ〜…

バックを抱えてオルフェノクから逃げていたさくら。

さくら:そうだ、齋藤さんに…

さくらはスマホを取り出し飛鳥に連絡しようとしたが、連絡先を聞いていなかったのをすぐ思い出した。

さくら:うわぁ…なんで齋藤さんの連絡先聞いとかなかったの、私…


オ:逃げないでよ〜

少し油断していた隙に、オルフェノクに距離を縮まれたさくらは急いで走り出す。


さくら:はぁ〜、はぁ〜…

体力が尽きてきたさくらは、足をつまずき土手を転がっていく。

さくら:痛っ…

バックの口が開かれており、さくらが中身を見ると見覚えのない衣服が入っており、肝心のベルトが入ったアタッシュケースが無いことに気がついた。

さくら:うわぁ、齋藤さん間違えて…❗️


当然だが、さくらのすぐ近くまでオルフェノクが迫っていた。

オ:バック、ちょ〜だい。

オルフェノクが耳部分を変形させて紐のように伸ばして、バックを奪い取る。

さくら:あ、それ…

オ:❗️無い…ベルトが無い⁉️

オルフェノクがバックを投げ捨てるとさくらの方を向き、怒りを剥き出しにする。

オ:ふざけやがって❗️○んでもらう❗️

オルフェノクが再度耳部分を紐状に変形させて、さくらに向かって飛ばそうとした。

追い込まれたさくらは、目を閉じて○を悟る。


(バイクのエンジン音)

さくら:⁉️

さくらが目を開けると、見覚えのあるバイクがオルフェノクの背後から追突し、オルフェノクは大きく吹き飛ばされ、地面に大の字に倒された。

飛鳥:ごめ〜ん、これ返しに来たぁ〜!

ヘルメットが取られると、飛鳥の顔が現れた。

さくら:齋藤さん!

飛鳥:その前に、アイツやっつければ良い?

飛鳥の質問に、さくらが微笑を浮かべて首を縦に振る。


オ:くそ…⁉️

飛鳥がベルトを装着するのを見たオルフェノクは、驚きのあまり声が出なかった。

「5 5 5  Standing by」

飛鳥:変身❗️


飛鳥の姿が、昨日と同じくボディに赤いラインが引かれているのが特徴的な、謎の姿に変身した。

オ:ふ、ファイズ…

飛鳥:(ファイズ?この姿の名前が、ファイズ…)



オ:ふぉおおお!

先にオルフェノクから突進してき、飛鳥の顔面にパンチを食らわそうとするも、飛鳥はパンチを避け代わりにオルフェノクの右脇腹に右フックを食らわせた。

飛鳥からのフックを受けたオルフェノクが狼狽えている隙に、飛鳥は連続でパンチを与え、最後にアッパーをオルフェノクの顎に決めた。

飛鳥:はぁああ❗️

オ:ぬぐ…。ふぅおおおおおおお❗️


オルフェノクが唸り声をあげると、身体を巨大化させ、足を地面に勢いよく着地させ、その衝撃で飛鳥を吹き飛ばす。

飛鳥:な、でか過ぎでしょ…

さくら:齋藤さん、これを!

さくらがアタッシュケースからポインターのような機器を取り出し、飛鳥に投げ渡す。

飛鳥:ん?これを?

さくら:それを右脚に付けてください。


飛鳥は言われた通りにポインターを右脚に装着し、ベルトに装填した携帯状のアイテムからメモリを外し、ポインターに付ける。

オ:うぉおおお!

オルフェノクが地面を踏み鳴らし、衝撃波を飛鳥に浴びせようとした瞬間、飛鳥はジャンプした。


「Exceed Charge」

ポインターから、赤いエネルギー状のマーカーが
出現し、オルフェノクを拘束した。

オ:ぬぅお⁉️

飛鳥:はぁああああああ❗️

飛鳥のキックがオルフェノクにヒットした直後、飛鳥の姿が残像を残して消え、次の瞬間、オルフェノクの背後に飛鳥の姿が現れた。

(爆発音)

オ:うわぁあああああ⁉️

オルフェノクの巨大な身体は青い炎をあげて爆発し、そして全身が砂のように崩れ去っていく。



ファイズの変身を解除した飛鳥が、さくらのもとに寄り手を差し出す。

さくら:ありがとうございます。

飛鳥:いや、まぁ…バック間違えたの私だし。

さくら:でも齋藤さんが来てくれて助かりました。

飛鳥:あのさ…その呼び方やめてくれる?

さくら:ご、ごめんなさい。でも…

飛鳥:飛鳥で良いから。それに、色々考えたけど…

さくら:?

飛鳥:東京まで、一緒に行くよ。

さくら:!あ、ありがとうございます!飛鳥さん。

さくらは飛鳥に向かって頭を下げた。



飛鳥:か、勘違いしないでよ?別に貴女が心配でとか…

さくら:え、今なんて?

飛鳥:だから、別に…もう!

さくら:まぁ、とりあえず今からラーメンでも食べませんか?

飛鳥:?ラーメン?

さくら:あ、そっか…猫舌だから…笑

飛鳥:やっぱ一緒に行くのやめる…

怒った表情でバイクに乗ろうとする飛鳥を呼び止めるさくら。

さくら:あ、ごめんなさ〜い!今のは冗談ですよ〜!


ー東京ー

スマ:大変な想いをされたんですね…でも、これからは、美月さんには大事な役目があります。

美月:役目?

スマ:はい。それは、オルフェノクの仲間を増やすことです。

美月:仲間を増やす…?


2話 完

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