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男勝りな幼馴染は、ずっと俺を想ってくれていた。だから、答えるんだ。

1人、公園のベンチに座って蹲っていた。

〇〇:はぁ…

前から好きだった人に今日告白して、

見事にフラれた。

さっきまであった緊張感と期待感は消えて、
身体から力が全部抜けたような気分だった。

何もする気が起きない…


ポンッ



蓮加:よっ!

肩を叩かれて見上げると、幼馴染の蓮加が立っていた。

〇〇:うぉ⁉️蓮加❗️

蓮加:声でかッ❗️

〇〇:あぁ…悪い悪い。

高校を卒業して以来、俺と蓮加は別々の進路になって離れていた。だから今こうして突然目の前に蓮加が現れたので、俺は驚いた。

蓮加:何死んだ魚みたいな目してんのよ?

〇〇:え?そんなに俺の顔暗かった?

蓮加:うん。死ぬのを悟ったみたいに。

〇〇:そこまで??

平静を装っていたつもりが、顔に気持ちがダダ漏れしていたらしい。



〇〇:てか、会うの久しぶりだな。

蓮加:そうだね。〇〇は大学に、私は専門学校に進んだからね。

〇〇:専門学校の方、どうよ?


蓮加:え、順調かな?今のところは。

〇〇:そっか、良かったよ。

蓮加:うん。〇〇の方は?さっきの様子だと何かあった感じだけど?

〇〇:え、ああ…

蓮加:まさか、単位落とし過ぎて留年?笑

〇〇:違うわ、ちゃんと単位は取れてますわ。

蓮加:なーんだ。

〇〇:なーんだって、お前な笑

蓮加:ごめんごめん、留年してないなら良かった。でも、何かあったんでしょ?

〇〇:いや、でも…

自分の中で話すべきじゃないなと思って黙ってしまった。


蓮加:も〜、何よ水臭いな。

蓮加:幼馴染なんだから、遠慮なく話してよ。

久しぶりに会っても、こういうところが変わっていなくて、それが蓮加の良さなんだと思った。

〇〇:分かった、じゃあ…正直に言うよ。

蓮加:うん。

俺は蓮加に、失恋したことを報告した。




蓮加:そ、そっか…

〇〇:うん、向こうはもう彼氏さんがいたみたいなんだ。

蓮加:よし、こういう時は気分転換!

ガシッ

〇〇:うぉぉ…っと⁉️どこ連れてく気⁉️

蓮加:良いから行くよ!

上着の肩部分を蓮加に引っ張られながら、俺は連れて行かれた。



〜ゲーセン〜


蓮加:ふあ〜、ここ久しぶりに来たね!

〇〇:ああ、そうだな。

高校時代、よく蓮加と放課後にここのゲーセンに来て遊んでいた。


蓮加:ね、何からやる?

〇〇:ん、そうだな〜…

辺りを見回して、UFOキャッチャーの方に目をやる。

〇〇:じゃあ、いつものUFOキャッチャーから。

蓮加:へへ、そうだと思った。

ポンとまた背中を叩かれ、蓮加が先にUFOキャッチャーのコーナーに行く。



蓮加:よーし、久々にガチでやるからね。

〇〇:おー、良い意気込み。

蓮加:でも久々だから鈍っているかもな〜

〇〇:じゃあ、俺先にやる!

蓮加:お、UFOキャッチャー先生、先発宜しくお願いしま〜す。

〇〇:任せろって。


高校時代、UFOキャッチャーにハマっていた俺と蓮加は動画なんか見たりして、コツとかをしっかり調べたりしていた。

よく、1000円以内にUFOキャッチャーで取れるかチャレンジなんてのもしてて、どっちかが成功すると、まるでスポーツの試合で得点が入った時みたいに、ハイタッチして喜びを分かち合った。


〇〇:ん〜、どれ取ろうかな…

最初に選んだUFOキャッチャーの台は、フィギュアが入った箱が金属の棒に吊るされているタイプのだ。

蓮加:え、蓮加これ欲しい!

〇〇:オッケー、じゃそれを…って難そうなの選ぶな…蓮加。

蓮加:いや〜、大丈夫っしょ。〇〇なら笑

〇〇:おいおい、アレですか?先にやらせて様子見する気かな?

蓮加:YES。

〇〇:何がYESだよ。

蓮加:ていうか、〇〇がさっき俺に任せろって言ったんじゃん。

〇〇:うぐ…

つい良いところを先に見せたくて言ってしまったのを後悔した。


〇〇:いや、絶対1000円以内には獲ってやるからな。

蓮加:お〜、頑張れ〜

小銭を入れ、UFOキャッチャーを動かすボタンが点灯した。

〇〇:っし〜、落ち着け〜

先ずはキャッチャーの横方向の位置調整、そして奥行きの位置調整だ。

〇〇:うし、これで良いだろ。

蓮加:さぁ〜、どうなる〇〇選手。

キャッチャーが下にゆっくりと伸びていき、アームが開く。開いたアームが閉じていき、箱の上についたプラスチックの取っ手部分を押していく。

フィギュアの入った箱は金属の棒の先端に順調に近づいた。

蓮加:おお、良い出だし!

〇〇:よしよし!この調子で!


そして、500円まで使ったところでフィギュアの箱があと少しで落下しそうになっていた。

蓮加:おぉ、これあるよ!

〇〇:よしよし、次で落とす!


しかし、フィギュアの箱のプラスチック部分が中々金属の棒からずれずに留まり、箱だけがユラユラ揺れていた。

〇〇:え、今ので落ちないの⁉️

蓮加:おっと〜、〇〇選手ここに来て苦しんでます!

〇〇:うぅ、次でラストか…


ここで成功しないと、1000円チャレンジ失敗。


深呼吸して、慎重にボタン操作をした。

〇〇:お願い、しまーす‼️

ポチッ


キャッチャーのアームがフィギュアの箱に付いたプラスチック部分を押した。が、さっきより箱の揺れが増しただけだった。


シーン…


〇〇:え〜、ダメか…

蓮加:ん?


スッ  シュンッ  ボトッ


〇〇・蓮加:おおーッ‼️


時間差で箱が落下して、無事1000円以内にUFOキャッチャーの景品を獲得した。


蓮加:いやもしやとは思ったけど、やったね。持っている男だったね。

〇〇:いやほんと、持ってたわー

蓮加:じゃ〜、次は蓮加がやる!

〇〇:お、頑張ってくださいな。

蓮加:ふふ〜ん、〇〇よりは余裕残して獲るからね。

〇〇:おっ、良いんですか?自らハードル上げて?

蓮加:良いんです!


そして、蓮加がUFOキャッチャーを始めた。


ボトッ


〇〇・蓮加:おおー‼️

なんと、200円残して蓮加は1000円チャレンジを成功させた。

蓮加:いぇ〜い、獲れたー‼️

〇〇:めちゃくちゃ順調だったじゃん。

蓮加:蓮加凄いでしょ?

〇〇:うん、マジで凄い。

蓮加:は〜、久しぶりにガチったから疲れちゃったね笑

〇〇:どこかでお茶して休憩するか。

蓮加:うん、賛成〜。




〜カフェ〜

注文したカフェ・オ・レを飲みながら、2人でテーブル席でひと息ついていた。


蓮加:ふ〜、楽しかったね!

〇〇:そうだな、2人ともUFOキャッチャーで獲れたし。

蓮加:ま、私の方が200円残して景品獲れたけどね〜

〇〇:そうだった、く〜、悔しい!!で、でも
蓮加の方が取りやすいヤツだったからハンデだよ、ハンデ!

蓮加:あはは、負けず嫌いなのは相変わらずだね。

〇〇:それは蓮加もだろ?

蓮加:まぁ〜ね笑


やっぱり蓮加といると楽しかった。

久しぶりに会ったけど、昔と変わらずはしゃげる仲なのは良いなと思った。


〇〇:ありがとう、蓮加。

蓮加:どした、そんな畏まって笑。

〇〇:いや、さっきまで俺テンション低かったのが、蓮加のお陰で無くなったからさ。


蓮加:ふふ、良かった。折角久しぶりに会えたのにね、落ち込んでたらほっとけないよ。

〇〇:なんか情けないよな、俺。蓮加はちゃんと夢に向かって走っているのに、俺なんかウジウジしててさ。

蓮加:もうそういう所だよ、〇〇の唯一の欠点は。あまり考え過ぎないの。

確かに蓮加の言う通りだ。

俺はというと、いちいちなんか失敗するとかなり落ち込むタイプで、それを蓮加が励ますことが多かった。

蓮加はというと、割とサバサバしていて滅多に動じない。それでいて明るいし、一緒にいると楽しい。

それに自慢じゃないけど、


カッコ良い…


〇〇:そう、だよな。

蓮加:うん。あ、今日さ〇〇の家に泊まっても良い?

〇〇:え?ああ、勿論。なら、久しぶりにたこパでもする?

蓮加:うん、するする!

〇〇:だとすると、食材買わないとだな。 

蓮加:じゃ、これから一緒に買いに行こ?

〇〇:そうだな。


2人で店を出て、家の近くのスーパーを目指した。





蓮加:さっきのことなんだけどさ…

道を歩いていると、蓮加が突然話題を振ってきた。

〇〇:おおう…

蓮加:さっきさ、蓮加は夢に走ってて〇〇はそうじゃないみたいなこと言ってたじゃん?

〇〇:あ、うん…

蓮加:でもね、今の蓮加があるのは〇〇のお陰なんだ。

〇〇:え?

蓮加:小さい時、蓮加よく〇〇と似た格好しようとしてたの覚えてる?

〇〇:え、あぁ…

そんなことあったな…

なんでか知らなかったけど、蓮加は女の子らしい格好よりちょっと男の子じみた格好が好きで、よく俺とお揃いの服着てたな。

蓮加:あの時ね、〇〇はなんでも着こなせてカッコ良いなって思ってたの。

〇〇:そうなのか?

蓮加:そうだよ。だから〇〇にコーデとか教えてってお願いしたんだよ。

蓮加:蓮加、凄く嬉しかった。周りは私が男の子みたいな服着るの変だって言ってたけど、〇〇はそんなこと言わないで、蓮加の為に男の子のコーデを教えてくれた。

蓮加:そしたらね、将来デザイナーさんになって女の人でもカッコ良く着こなせる服とか作りたいなって思ったんだ。〇〇みたいにカッコ良い着こなしを出来る服をね。

〇〇:蓮加…

そこまで考えていたんだと、

やっぱり蓮加って凄いなって思った。


蓮加:だからね、専門学校通うって決めたの。
〇〇のお陰なんだ。

〇〇:そっか、蓮加はやっぱり偉いな。ちゃんと将来のこと考えていて。

蓮加:でも最近上手くいかなくて悩んでたの。
私、デザイナー向いてないんじゃないかって…

蓮加の表情が、さっきの俺みたいに暗くなっていた。


〇〇:そんなことないよ。

蓮加:え?

〇〇:だって今日の蓮加、凄くカッコ良いよ!

蓮加:そうかな…

〇〇:そうだよ、俺なんかより断然カッコ良いって!分かんないけど、ちゃんと専門学校で学んだことが生きてるんじゃないかな。

蓮加:〇〇。

〇〇:蓮加なら、きっとなれるよ!女の人がカッコ良く着こなせる服を作るデザイナーさんに。

蓮加:うぅ…〇〇。


ぎゅっ


泣きながら蓮加が抱きついてきた。


蓮加:ありがとう、嬉しい。

〇〇:うん。



蓮加:蓮加ね、あとずっと言えなかったことがあるんだ…

〇〇:うん、何?

蓮加:蓮加、その…


ゆっくり待ってあげた。


蓮加:〇〇が、その…



蓮加:好き。


〇〇:蓮加…

蓮加:ごめん、〇〇がこんな時に言うことじゃないのは分かっているけど…



違う。

違うよ、蓮加。

俺だって…


〇〇:俺も好き。

蓮加:え?

〇〇:蓮加のこと好きだ。でも言えなかった…

蓮加:〇〇…

〇〇:でも言えなかった。言ったら、蓮加が前に進もうってのを邪魔しちゃうと思ったから…

蓮加:馬鹿…

〇〇:ごめん…

蓮加:もっと早く教えてよ…


本当だよな…

俺、自分のことしか考えてなかったな…

蓮加の為だなんて言ってさ。


蓮加:でも…嬉しいよ。

蓮加:ありがとう!


いつの間にか、月が光っていた。



蓮加:早くしないと、スーパー閉まっちゃうね笑

〇〇:そうだな笑


2人で手を繋いで、急いでスーパーに向かった。

あの頃のように。


でも、前より2人とも前に進んで。


fin.

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