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ザ・出来る系のはずのサークルの部長は、家では甘えん坊になってデレてくる


ー大学内 サークル活動部屋ー


会計係:先ほど、文化祭の委員に申請して通った補助の金額は2万でした。

副部長:マジか、思ったより少ないな…

書記係:これだと、〇〇くんの案をベースにしたお店はキツいね…

〇〇:代替案、考えないとですか…

〇〇:でも、もう今更全部変えるのも…


今度の文化祭で出店をやることになっていて、他のサークルの出し物と被らないように王道のチュロスやホットドッグといったものを避けて、もんじゃ焼きを出すことにしていた。

けどどうせ出すなら良い食材を使いたいと思い、色々調べてきて食材を予約購入する候補に確保した店が幾つかあったが、元々食材を購入するためにサークルで集めた金額と文化祭実行委員会からの補助2万円では足りなかったのだ。


副部長:でも2万の補助とサークルで集めた額じゃ、食材買えないだろ…

書記係:やっぱりもうちょっと安く済むのに…

史緒里:いや、いけるよこのままで。

文化祭の出し物を変更する話の流れになりそうだったのを断ち切ろうとしたのは、部長の史緒里さんだった。


会計係:でも部長どうするんです??食材の経費不足分をまたサークル全体で集めるんですか?

史緒里:いや、それはしないよ。

副部長:じゃあ、注文する食材減らすのか?

史緒里:それもしない。

史緒里:大丈夫、あとは私と〇〇くんに任せて。

一同:???

史緒里さんの一言で、視線が一気にこちらに集まった。


〇〇:へ?ぼ、僕です???

史緒里:よーし、今日はもう遅いから解散!!

部長の鶴の一声で、その日のサークルの幹部間での話し合いは解散になった。




解散した後、史緒里さんに誘われて飲み屋に連れて行かれた。


史緒里:とりあえず、お疲れ様!

〇〇:お疲れ様です。

頼んだビールを片手に、乾杯して飲んだ。

史緒里:ぷはぁー、やっぱ一仕事の後のビールは美味いね〜

〇〇:ぁあー、でも今日の話はまだ終わってないですよね?それに…

史緒里:さっきの終わり際に言ったことね?

〇〇:はい。

史緒里:〇〇くんと私で一緒にさ、今回仕入れる食材を売ってるお店に訪問して交渉しようよ。

〇〇:え?

突然、急に社会人みたいなことをしようと言われて戸惑った。


けど史緒里さんの話を聞いていくうちに、

〇〇:なるほど、お店のことを文化祭で宣伝する代わりに安くしてもらうと。

史緒里:そう!でも、敢えてそれは言わないの。

〇〇:え、じゃあ…実際には、ただ宣伝しますってだけ?

史緒里:うん。だから賭けなところもあるんだよね〜

〇〇:賭け、か…

史緒里:でも大丈夫だと思うんだ。〇〇くん、色々調べてきたじゃん。どんな風に宣伝するか
向こうも聞いてくれるはずだし、きっと説得出来るよ。

史緒里:ま、もちろん私も一緒にやるからさ。


不安より面白さが上回っていった。


こういうところが史緒里さんの良いところなんだろうと思った。

部長として全体を見られるのは勿論、ただ指示役になるんじゃなくて自らも率先して動いて周りを
動かせるところ。

ここまでの話なら、最高の憧れの人だった。

ところが…



史緒里:よし明日から頑張るぞー!

史緒里:すいませーん、レモンサワー追加で!

〇〇:ちょっ、史緒里さんまた飲み過ぎないでくださいって!!

史緒里:大丈夫、大丈夫!今日は控えるから〜

そう言って、結局ベロンベロンになるまで飲むんだから…



史緒里:いひひひぃ〜!

史緒里:〇〇く〜ん♪

脚がおぼつかなくなる史緒里さんに肩を貸して、結局タクシー呼んで史緒里さんの家に送ることになった。




意識なんてほぼ滅茶苦茶であろう史緒里さんから鍵を借りてアパートの史緒里さんの部屋を開けて、部屋の中の居間まで連れて行ってソファーに寝かせた。


史緒里:zzz

〇〇:寝ちゃった、やっぱり。

風邪を引かせないように、毛布をかけてあげて家に帰ろうとした。が…


〇〇:終電無いじゃん…


仕方ないので、史緒里さんの家に泊まることにした。

シャワーだけ借りて、史緒里さんが起きた時のためにお湯を沸かしておいた。


〇〇:ふー

史緒里:ごめ〜ん、今日もありがとう。

酔いが醒めて起きた史緒里さんが、眼を細く開けていた。

〇〇:もう、また飲み過ぎて…

史緒里:えへへ、でも〇〇くんいるから大丈夫だよね〜

〇〇:何が大丈夫だよね〜、ですか。

〇〇:お風呂沸かせておきましたから。

史緒里:さっすが〜、ありがと。


史緒里さんが居間からいなくなり、ソファーで横たわっていた。


〇〇:…

史緒里:〇〇くーん。

〇〇:ん?史緒里さん。

史緒里:一緒に寝ようよ〜

〇〇:いや、そういう訳には…

史緒里:えぇ、寂しいな〜

わざと頬を膨らませて拗ねた顔をしていた。


〇〇:じゃ、一緒に…

史緒里:やった〜

本当にこの人はあのサークルの部長なのかと疑うくらい、腕にコアラみたいに抱きつかれながらベッドの上で一緒に寝る羽目に…




次の日、史緒里さんの提案通りに文化祭の出し物に使う食材を販売している店に訪問して交渉してきた。


ほぼ台本もなく宣伝する内容を自分なりに説明した結果、無事に交渉が成功して文化祭で店の宣伝をすることを条件に安く食材を購入することが本当に出来たのだ。


無事文化祭に出す出し物を作る為の食材は用意出来て、当日も順調に売れて宣伝も上手くいき、その後食材を購入した店から連絡があり、売り上げが爆上がりしたという報せをもらったのだ。


やっぱり凄いな…史緒里さんは。


と思えればそれで良いのだが…


ポリッ ポリッ

史緒里:んー、うまっ!

〇〇:なんでポテチをベッドで食べてるんですか?

史緒里:良いじゃーん、楽だし。

史緒里:はー、天国〜

ベッドでゴロゴロし始めて、缶ビールを開けて飲み始めた。

家になった瞬間、この酷い体たらくになるのは
何故なのか…


〇〇:そんなんじゃ、彼氏さんが出来た時困りますよ?

史緒里:良いもん、別に。

〇〇:勿体無いですよ、折角こんな美人なのに。

史緒里:え?今なんて言った?

〇〇:は?

史緒里:もっかい、もっかい‼️

〇〇:どうしたんすか、急に食い気味になって⁉️

史緒里:え〜、だって好きな人にそう言われたら…

〇〇:え?



顔を赤くして、笑みを隠せないでいる史緒里さんを見て本気だと知った…


fin.

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