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1話「不思議なベルト」

ー東京ー

美月:もう私なんて…

山下美月


美月は学校の屋上から、1人下を見下ろしていた。同級生からの虐めを数え切れない程受け、両親からも見放されていた彼女の心の中は、絶望で埋め尽くされていた。


美月:もう無理だよ…私…

美月は空を眺めながら、唯一美月の味方だったが既に亡くなっていた姉の顔を思い浮かべていた…


美月:お姉ちゃんに会いたい…

頬に涙を垂らしながら、美月は目を閉じて、
そして…


ドサッ❗️







ー九州ー

遠藤さくら

彼女がヘルメットをつけて、人気の少ない道路でバイクを走らせていた。その後ろを、別のバイクに乗った男が追っかけていた。

さくらのバイクが目的地と思われる定食屋さんの前に止まり、店に入っていく。


さくら:おばさん、ひや汁定食のすりごまたっぷり胡瓜少なめでお願いします。

定食屋のおばさん:はいよ〜!

注文を頼み、荷物置き場にバックを置いて席についたさくらのもとに、先ほどまでさくらを追っかけていた男が店に入りやって来た。

男1:ねぇ、さっきはありがとう。

さくら:どういたしまして。


定食屋のおばさん:お兄ちゃん、注文は?

男1:あ、俺大丈夫っす!

さくら:注文しないんですか?

男1:ああ、君にお礼がしたくて来たからさ。さっき、バイク直してくれたお礼を。

さくら:お礼は、大丈夫です…

男1:遠慮しないでよ、見ず知らずの俺を助けてくれたんだからさ。

さくら:いや…本当に大丈夫です…

男1:そうだ、この後友だちと合流するからさ、皆んなで一緒に旅しようよ!

さくら:いや…遠慮します…

少ししつこさが目立つ男に、さくらは目を背けた。


その2人がいる定食屋さんに別の女性が入ってきて、さくらのバックの隣に同じデザインのバックを置き、さくらたちから少し離れた席についた。

齋藤飛鳥


彼女もさくらと同じ定食を頼んだ。


さくらのもとにひや汁定食が運ばれ、さくらは割り箸を取る。

さくら:いただきま〜す。

割り箸を割ると、さくらは予想以上の速さで
白米やひや汁、漬物を次々と平らげていく。

さくら:ご馳走様です!

さくらはお代をおばさんに渡すと、バックを取り
店を出た。

男1:あ、ち、ちょっと待ってー!





さくらたちが店からいなくなって少し経ち、飛鳥のもとにひや汁定食が運ばれた。

おばさん:はい、お待ち〜!

飛鳥:ありがとうございます。

ひや汁定食を食べようとした瞬間、飛鳥は荷物置き場の方に目をやり、異変に気がついた。

先ほどまで自分のバックが置かれていた場所が空白になっており、代わりに横に同じデザインのバックが置かれていた。

飛鳥:(ちょっ…あの子!!)

飛鳥は慌てて千円札を席に置くと、店を飛び出した。

おばさん:お、お客さん⁉️ちょっとー、食べないのかい⁉️





ー公園ー

バイクを止めて、少し離れたところにある高台から景色を眺めているさくらのもとに、男1が友人たちを連れてやって来た。

さくら:まだついて来るんですか?

男1:良いじゃん、皆んなでワイワイした方が楽しいし。

男2:俺、康平って言うんだ。宜しく!

男3:僕はひろし。

男1:んで、俺が大輔。

さくら:本当にしつこいです…警察呼びますよ?

大輔:ま、待ってって…💦そんな、変なことしないからさ❗️

ひろし:あ、そうだ。焼き鳥買ってくるよ、4人分!

さくら:(え、私のも…???勘弁してよ…)

大輔:あ、ちょっと俺トイレ行ってくる!

さくらは溜め息をつく中、大輔とひろしがその場からそれぞれ目的の場所に向かう。




ー道路ー

飛鳥:(もう、あの子どこなのよ!)

飛鳥はバイクを走らせ、バックを間違えて持って行ってしまったさくらを必死に探していた。






ひろし:お待たせー、あっつ熱だよ!

ひろしが焼き鳥を4本持って、さくらと康平のもとに戻って来た。

さくら:私、トイレ行ってきます。

康平:あ、おっけー。

さくら:ついて来ないでください❗️

さくらが振り返り怒鳴ったことで、康平とひろしは萎縮した。



康平とひろしから離れたさくらは、自分のバイクが置かれている場所に来て、バイクに乗り逃げ去ろうとした。

さくら:(よし、今のうちに…?)

近くの草むらから音が聞こえ、気になったさくらは恐る恐る草むらを覗く。

さくら:⁉️

草むらには、倒れて青ざめた表情の大輔が横たわっていた。


ー数分後ー



ひろし:大輔が、倒れてる⁉️

さくら:本当なんです、あそこで❗️

さくらはひろしと康平を連れて、先ほどの草むらに来た。

さくら:あれ…?

しかし、そこにさっきまで横たわっていた筈の大輔の姿は無かった。

康平:見間違いじゃないの?

さくら:本当にいたんです!ここで倒れていて…

大輔が倒れていた草むらを見つめながら、さくらは混乱していた。







暫く3人で大輔を探していたが、結局夜になっても見つからず仕舞いだった…

康平:あいつ、昔からトイレ長いんだよね…

ひろし:俺、もっかい探してくるよ。

ひろしが1人で、夜の森に入っていく。


ー数分後ー


さくら:大丈夫なんですか?ひろしさんを1人で行かせて…

康平:大丈夫だろ、あいつ一応1人で山登りに行ったりするから、迷子にはならないよ。

(バイクの音)

大輔らしき風貌の男がヘルメットを付けたまま、バイクから降りてさくらたちの居る場所に向かって来た。



さくら:もう、皆んなで探したんですよ?

大輔:…

さくら:?あの…だいじょ…

さくらが喋るのを遮って、無言のままの大輔がヘルメットを脱ぐと、

さくら:⁉️



大輔の目が灰色に光ったかと思いきや、大輔の顔が灰色に変色し砂の城が崩れ落ちるみたいに崩壊していく。

やがて、大輔は地面に膝を着きそのまま仰向けに倒れてしまい、大輔の衣服が萎んでいき衣服の穴からは灰がはみ出ていた。




さくら:そ、そんな…

康平:そう言えば…俺も…

さくら:え?

何かを言いかけた康平が手を伸ばした瞬間、
康平の顔も大輔と同じように灰色に変色し、やがて全身が崩れ去る。



さくら:な、何なの…これ…

大輔と康平の変わり果てた姿に恐怖していたさくらのもとに、一つの足音が近づいて来た。

飛鳥:はぁ〜、やっと見つけた…

先ほど定食屋さんにいた飛鳥が、さくらの目の前に現れた。

さくら:あ、あなたが2人を…

飛鳥:え、何?

さくら:嫌…来ないで❗️❗️

さくらは叫び、飛鳥から逃げるように走り出す。

飛鳥:あっ❗️ちょ、待ってよ⁉️


さくらはバックを抱えたまま走り続けたが、流石に重いバックを持ちながらでは体力が続かず、
途中で立ち止まる。

さくら:はぁ…はぁ…❗️

振り返ると、飛鳥がさくらに追いついて、息を切らしながら立っていた。

飛鳥:はぁ…もう、なんで逃げるのよ…

さくら:だって、あなたが…

飛鳥:私はね、あなたが間違えて持っていった私のバックを取り返しに来たの❗️

飛鳥は持っていたさくらのと同じデザインのバックをさくらに見せた。

さくら:え?

飛鳥:中見てみてよ?

さくらは言われた通りに、自分が持っていたバックのチャックを開けて中身を確認した。

さくら:これ、私のじゃないです…

飛鳥:でしょ?…❗️

飛鳥がさくらの背後を注視しているのに気がついたさくらが振り返ると、ひろしが立っていた。



さくら:ひろしさん、大変なんです!大輔さんと康平さんが…

ひろし:ああ、知っているよ。

さくら:え?

ひろし:君たちも、2人と同じようにしてあげるよ。

さくら:⁉️


さくらの目の前で、ひろしの顔から模様が浮かび上がり、全身が光出すとひろしの肉体は灰色の異形の怪物に変身した…

さくら:お、オルフェノク…

ひろし:さぁ、君が持っているのを渡してもらおうか?

さくらが口にしたオルフェノクという存在に変身したひろしは、手から青いエネルギー状の球をさくらに向かって飛ばす。


さくら:⁉️

飛鳥:危ない❗️

飛鳥がさくらを庇って転がみ込むと、飛鳥が持っていたさくらのバックから、アタッシュケースが出てきた。

飛鳥:それは?

アタッシュケースをさくらは開け、中からベルトとガラケーを取り出す。


そして、さくらはベルトを腰に巻いて装着し、
ガラケーを開き番号を入力した。

「5 5 5   Standing by」

さくら:変身❗️

携帯がベルトにセットされた瞬間、

「Error 」

ベルトから赤色の電気が発生し、さくらは吹き飛ばされた。

さくら:きゃッ⁉️


ひろし:どうやら君では、ベルトの力を引き出せないようだねー

オルフェノクの姿のひろしが笑いながら歩み寄ってくる。

さくらから離れたベルトとガラケーは、飛鳥のもとに落ちて来た。



飛鳥:これ…

さくら:そのベルトを付けてください!

飛鳥:な、なんで私が??

さくら:良いから付けて、その携帯に番号を入力してください!


飛鳥は嫌々ながらも、ベルトを装着し先ほどのさくらと同じように番号をガラケーに入力した。

「5 5 5  Standing by」

ひろし:無駄だよ、あんたも…

飛鳥:変身!

「Complete」

ひろし:!?

飛鳥の体周りを赤い光線が覆い、飛鳥の姿が黄色く光るマスクの目と黒いスーツに赤いラインが特徴の姿に変わる。


飛鳥:な、何なのこれ…

さくら:これがベルトの力…


ー東京ー

自らの命を断とうと飛び降りたはずの美月が目を覚まし、美月の目が灰色に光る。

美月:…



2話に続く。





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