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初夢で見たものが正夢になり、新年から幸せでした。

1月3日

〇〇:よし、今日もやるぞ〜!

人が少ないオフィス内で、1人で勝手に意気込んでいた。


他の部署は仕事が忙しくないらしく、有給を使って1週間以上休みがある人もいる。

けど、僕の部署は今日から仕事をしないといけない。

普通なら気分が落ち込みそうになるのだが、僕は今は何故かテンションが高い。

〇〇:♪〜

史緒里:どしたの?〇〇くん。

〇〇:へ?

史緒里:なんか新年からテンション高いな〜って。

〇〇:え、いやぁ…ほら、新年だからこそ気分上げて仕事をやらないとと思って。

史緒里:ふふ、そっか。偉いね。


本当は違う理由だけど…

〇〇:史緒里さんのそのポーズは?

史緒里:え?〇〇くんを見習って気分を上げる為だよ笑

なんか申し訳なくなった。


史緒里:そうだ、このあとランチでさ一緒に行きたいところがあるんだ。

〇〇:え⁉️行きます、行きます!

史緒里:決まりだね。じゃっ、仕事頑張ろ!

〇〇:はい!

ただでさえ高かったテンションが更に上がりそうになった。


史緒里さんは僕の3つ年上で、仕事も出来て皆んなに優しいし、おまけに美人さんだ。

僕がこの部署に配属された時に史緒里さんはまだいなかったが、半年程経って史緒里さんが急遽他の部署からこの部署に移動になったのだ。

その前の部長ときたら所謂パワハラ気質な人で、僕は最悪な1年目を迎えたと思った。


ところが半年経って部長は転勤し、その後を史緒里さんが引き継いだのだ。

それからというもの、史緒里さんの丁寧な指導と温厚な性格のおかげで、仕事が捗るようになったし、毎日が楽しくなった。

最初の半年を耐えて良かったなと、今でも思う。




そしてランチの時間になった。


史緒里:着いた。

史緒里さんについて辿り着いた店は、和風の雰囲気が漂い綺麗な所だった。  

史緒里:どう?ここ中々良いところでしょ?

〇〇:知らなかったです、会社の近くにこんなお店があるなんて。

史緒里:私もね、この前取引先のお客さんに紹介してもらったばかりなの。だから、食べに来るのは初めてかな。

〇〇:そうだったんですか。

史緒里:折角なら〇〇くんを連れていきたいなって…

〇〇:僕を、ですか?

史緒里:あぁ…ほら、同じ部署仲間だし仕事も一緒にがんばっているから…ね。

ちょっと動揺している感じだったのが何故かは分からなかったが、史緒里さんが僕を連れてきたかったというのが素直に嬉しかった。



席に着いて注文をし、暫くすると料理が運ばれてきた。

どれも見た目が綺麗で、食欲がそそられた。


〇〇:凄く美味しいです!

史緒里:でしょ?ここの魚、今日港で獲れたばかりのを使っているんだって。鮮度が落ちないように。

〇〇:へ〜、凄いこだわっているんですね。

史緒里:ね、凄いよね。

そう言いながら史緒里さんがフグの刺身を食べた。

史緒里:ん〜、美味しい!

美味しそうに食べる史緒里さんを見ていたら、つい口角が上がってしまった。


〇〇:いや〜史緒里さん、本当にありがとうございます。こんな素敵なお店に連れてきてくださって。

史緒里:良かった、喜んで貰えて!

それから、史緒里さんと雑談しながら料理の美味に浸っていた。

史緒里さんと2人きりのランチで、僕は今年初めて見た夢のことを思い出した。



夢の中では、僕と史緒里さんで昼にランチをしていた。夢では今みたいに和風の店ではなくフレンチの店で、2人で食べていたけど…

でも、夢の中でも史緒里さんとお喋りしながら、凄く楽しそうにしてた。


それでその後、史緒里さんに僕が告白していた。


一瞬の沈黙の後、史緒里さんが僕の手を握って頷いてくれていた。


新年の初夢が、もし現実になったらどうなってしまうのか…



史緒里:ねぇ、〇〇くん?

〇〇:…あ、はい!

史緒里:何今考えていたの?

〇〇:へ、ぼ、僕がですか?

史緒里:うん、なんか凄く楽しそうな顔していたからね、気になっちゃった。


ヤバい、迂闊だった。

あまり初夢のことで調子に乗ってはいけないと思い、考えるのを止めた。


〇〇:いや、史緒里さんのおかげで今日も残り頑張れるな〜って笑笑

史緒里:そっか、ふふふ。

とりあえず誤魔化せたかな?

史緒里:〇〇くんって、可愛いよね。

〇〇:え?

史緒里:思ったこと、素直に言えてさ。私、そういう〇〇くん好きだな〜


いや違うんです。本当は嘘ついてます…

でも言えなかった。言えるわけがない。


史緒里:そういえば、〇〇くんって彼女さんとかいるの?

〇〇:へ⁉️

びっくりして、変な声が出た。

まさか、僕の心が読まれているのではと思って…

〇〇:あぁ…いや、その…いないですね笑

史緒里:そうなんだ…あっ、そろそろ戻らなきゃだね。

腕時計を見ながら、史緒里さんが会計をしに行こうとしていた。

〇〇:じゃあ、僕の分を…

財布から代金を出そうとすると、

史緒里:良いよ良いよ、私が全部払うから。ここは先輩らしく振る舞わせてよ笑

〇〇:あ、ありがとう…ございます。




ランチから会社に戻って、仕事を再開した。


そして、退勤時間になった。

〇〇:(ふ〜、なんかあっという間に終わったな)

きっと史緒里さんパワーのおかげだろうと思った。

それに新年早々、尊敬する先輩に美味しいものをご馳走してもらえたし。

それに、初夢も…



史緒里:お疲れ様、〇〇くん。

〇〇:お疲れ様です、史緒里さん。

仕事終わりに毎回見せてくれるこの笑顔で、次の日仕事があっても頑張れていたんだなと去年のことを思い出した。

〇〇:さて、タイムカードも通したし…

忘れ物が無いか確認しながら、またふと思った。


今ここで、史緒里さんに告白しちゃおうかな…

そしたら、夢の通りに…


〇〇:(あぁ、どうしよう!)

史緒里:〇〇くん?

〇〇:⁉️

ガンッ

今度はあまりにびっくりして声が出ず、膝をデスクにぶつけた。

〇〇:痛たたッ💦

史緒里:だ、大丈夫⁉️

〇〇:あ、はい…大したことないですよ笑

きっとバチが当たったに違いないと思いながら、平静を装った。



史緒里:あのね、大事な話があるの…

史緒里さんの目がいつもより真剣だった。

史緒里:私ね、この部署に配属されてから〇〇くんと過ごせて凄く楽しかった。

その瞬間、ちょっと嫌な予感がしていた。

史緒里:〇〇くんはいつも挨拶してくれるし、〇〇くんは教えた仕事をちゃんとこなしてくれるどころか、私のも手伝ってくれるし。それがね、凄く嬉しかった。

〇〇:いえ、そんな…史緒里さんが凄いからですよ。

史緒里:それに、〇〇くんと一緒にいるとどんな仕事でも乗り越えられるなって思えたの。でも…


ああ、やっぱりな…


多分…このパターンは…


〇〇:転勤しちゃうんですね…

きっとそうだと思った。最近、部署内で誰かが異動するって噂が立っていたからだ。

でも仕方ない。史緒里さん、仕事めちゃめちゃ出来るんだもの。そりゃ、会社から頼りにされて、どこか力不足な場所に異動もあるだろう。




史緒里:あ、いや…違うの。

〇〇:え?

史緒里:転勤はしないから安心して。

笑ってくれて安心したのと同時に、話の腰を折ってしまったかと申し訳なく思った。

史緒里:転勤なんてお願いされても、今は断るよ。

〇〇:ど、どうしてですか?

史緒里:だって…





大好きな〇〇くんと離れ離れになっちゃうから…




その瞬間、時が止まったように感じた。

夢かと思った。

でも、頬を少しつねったら痛かった…



史緒里:私、〇〇くんのこと…好きなの。

〇〇:史緒里さん…

史緒里:好き過ぎて昨日の夜、〇〇くんに今日行ったお店に連れてってその後告白する夢まで見ちゃった。

下に顔を向けながら恥ずかしそうに言う史緒里さんは、微笑を浮かべていた。

〇〇:ぼ、僕もです。史緒里さん。

史緒里:え?

〇〇:今年初めての夢で…僕が、史緒里さんに告白してました。

史緒里:〇〇くん…

〇〇:僕も史緒里さんが好きです。

〇〇:いつも史緒里さんは優しくて一緒にいるとずっと楽しくて、史緒里さんとならどんな仕事でも平気な気がします。

〇〇:そんな史緒里さんが好…

その瞬間、僕を史緒里さんが抱き締めてきた。


史緒里:嬉しい、〇〇くんと同じで!

史緒里さんの喜びから出た涙が、僕の肩に垂れた。

〇〇:僕も、嬉しいです。

史緒里:うん!


夢とはちょっと違ったけど、僕と史緒里さんは新年早々めでたいことになった。



史緒里:これからも宜しくね、〇〇くん。

〇〇:もちろんです、史緒里さん。宜しくお願いしま…⁉️


一瞬だったけど、唇同士が重なった。


その時に見せた史緒里さんの表情が、今まで見た中で1番可愛かった。



fin.

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