『哀れなるものたち』はエマ・ストーンによるエマ・ストーンのための映画
ヨルゴス・ランティモス監督を知ったのは、たぶん2012年のことだったと思う。
(いまもですが)働き盛りだった自分は、現在ほど熱心にオスカーウォッチングをしていたわけではなかったので、既にアカデミー賞外国語映画賞(当時)にノミネートされた彼の作品を知らなかった。
その彼がはじめてアカデミー賞候補となった『籠の中の乙女』は、初公開が2009年で日本公開が2012年となったことからわかるくらい、割と難解というか妙ちくりん(彼の作品はこう言い表すのが一番わかりやすい)な作品です。
それなのに映画館の予告編パートで結構な確率で流れていた。
いま考えれば通常のプロモーションでは興行的に振るわないことが明らかな作品だったので、映画館にきちんと足を運ぶような映画ファンにちゃんと伝えたかったのだと思う。
(しっかり妙ちくりんな作品でございました。)
この作品でしっかり世界に訴えかけることができた彼は、次々作で英語作品に挑戦し、カンヌ映画祭で審査員賞を受賞とまずますの結果を残します。
それが『ロブスター』です。
英語作品への挑戦
いま改めて観るとキャストがすっごい。
いかに俳優からの評価が高かったのがわかります。
太字のキャストはアカデミー賞候補者と受賞者(現時点)ですが、この映画の後、オリヴィア・コールマンはオスカー女優になり、コリン・ファレルは昨年念願の主演男優賞ノミネートを得ることになるのです。
それに加え女優としてパルム・ドールを受賞したのにボンド・ガールをしっかり努めたレア・セドゥとQちゃんことベン・ウィショーとな!
そしてニコール・キッドマンを主演に迎えた『聖なる鹿殺し』。
ニコール・キッドマンは作品選びが上手すぎる俳優として有名で、彼女が主演したというだけでもうヨルゴス・ランティモスは本物だ!と世界に知らしめたことでしょう。
そしてこの映画をきっかけに曲者街道まっしぐらのバリー・コーガン!
オリヴィア・コールマンをキャスティングしただけでも凄すぎるのにバリー・コーガンまで…。脱帽です。
また次の作品が『女王陛下のお気に入り』と来たからたまげた!
しかも主演がエマ・ストーンじゃなくてオリヴィア・コールマンってどういうこと〜!?つうかだれ〜?と公開前まで映画ファンは思っていたはず。
でも観て納得。アカデミー賞まで獲っちゃった。
いまや超売れっ子です。ヨルゴス・ランティモス、あんたが正しいよ。
ヨルゴス・ランティモス監督作品の中で、この作品が一番好きです。
エマとランティモスは、レオとスコセッシの再来となるか!?
ランティモス監督が再びエマ・ストーンと組むと聞いたとき、少し驚きました。
エマは素晴らしい俳優(自分のお気に入りは『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』)と思いますが、俳優を選び放題であろうランティモス監督が、連続で起用するほどの俳優なのか?と。
ですが、その『哀れなるものたち』を観た感想は…
連続で起用するほどの俳優です!(平謝り)
ウィレム・デフォー、マーク・ラファロと曲者俳優が周りを固める中、エマ・ストーンは圧倒的な輝きを放っていました。
もし『ラ・ラ・ランド』で主演女優賞を受賞していなかったら、容易くオスカーを手にしたでしょう。
『哀れなるものたち』で製作にも名を連ねているエマは、次作もランティモス監督作品に出演予定。
ランティモス監督は3作連続でエマを起用することとなります。
これを聞いて「レオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシかよ」って思ったのは自分だけじゃないはず。
そういえば昔は同じ俳優を起用するのってよくありましたけど、近年はレオ×スコセッシくらいしか聞きませんね。
『バービー』は『オッペンハイマー』と比較されがちですが、これはただ公開日が同じだっただけ。
ほんとうに対になるべきは『哀れなるものたち』だったはず。
『バービー』を観てその根幹にあるものに何かを感じた方は是非『哀れなるものたち』を観てください。でも子どもは大人になってからね。
本日の一曲
前哨戦でかすりもしなかったのにノミネートされたのがコチラ。
歌曲賞は前哨戦は無視して、ショートリストからバランスを見て予想すべしということを学びました。
ジャック・ブラックの「Peach」観たかったな…。
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