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【日記】高級ホテルとの相性

自分が高級ホテルに向いていないことが段々分かってきた。

高級と言ってもリッツカールトンのような一泊数十万もするような場所ではなく、最高でも8万程度の場所にしか泊まったことはないが、改めて思い返すとドーミーインやコンフォートホテルあたりの方が気楽で「また行きたいな」と思えるのだ。

高級ホテルに着くとまずは出迎えと共にチェックインが始まり「お荷物をお持ちします」と言われることが多いのだが、天邪鬼なので(いや大丈夫です、持てます)と断りそうになるところから宿泊がスタートする。冷静にこのサービスに対して自ら金を払っているのだから素直に荷物を渡せばいいのだが、そもそもこの必要のないサービスに金を払っている自分に対して疑念が湧いてしまう。これを受け入れなければ非日常にはならないではないかと自分を騙して楽しめれば良いが、自分を騙し続けて過ごす非日常が楽しいものかと言うと疑問が残る。

チェックインを終えて、上品な内装や風景を眺めたり、充実した設備を満喫したり、飲み放題のドリンクやお菓子を楽しんだりして自由に過ごせるようになるが、全てのサービスが自分の嗜好に合っており満足のいく品質とは限らない。全体的には高級感があり満足したような気分になるのだが、選択肢として採用されなかった数多のサービスにも必要最大限の金を払っていると思うともったいなさを感じてしまう。つまるところ金、またも金である。お前もう分かったから一生高級ホテル泊まるなという感じだが、この文章はまだ続く。

夕食になると、手間暇かけられた豪華な食事がこれでもかと出てくる。それはもう美味いし、来てよかったと思える瞬間であることは間違いないが、それにしても大抵の場合量が多い。料理が少ないと一部の人々から文句が出るのだろうから多くの人にとって十分な量が提供されるよう調整されているに違いないが、その影響かそれなりに量を食べられる自分でもつねづね完食を諦めかける。ここでホテルの思惑通りに残すという選択肢も存在するが、出されたものを残すという体験は可能な限りしたくない。無心でおひつに入った松茸の炊き込みご飯(高級!)を食べ切るなどして放心状態になっていると、食器を下げに来た人が空になったおひつに驚いたこともあった。普通はわざわざここまで食べないのは知っているし、高級ホテルだから食べ切らなくても誰にも何も言われないことも知っている。知っているが、自分が自分に対して食えるものは食えと言ってくるのだ。

その後、部屋に戻って布団に横たわっていると、血糖値スパイクとアルコールによる酩酊感によって頭がふんわりして何とも良い気分になってくる。一方で、この幸福感を演出するために大量の食事を出しているのではないか、それは何だか暴飲暴食の良さをホテルの良さと混同しているのではないか、高級ホテルは実質ドカ食い気絶部ではないかと余計なことを考え始め、段々と眠気によって全ての思考が忘却へと追いやられ、朝を迎えるのであった。

翌朝、朝食にしては多い量がまたも提供される。最終的な体験としては夕食と同じだ。それはもう上品な味で美味しく、普段食べられない繊細な味わいからは高級感を感じられるが、食事開始前から若干の満腹感が脳内で既に主張を始めている。そして夕食と同じように最後の方は美味しさと義務感が拮抗し始め、なんだかんだあって帰宅後に体重計に乗るとしっかり2キロ太っている。一体何をしているのか。高級ホテルに求めるものが非日常であるという共通認識に従うならそれでも良いが、日常を破壊する非日常的な行為を贅沢と呼ぶには自傷行為感が強すぎないかと思わなくもない。

もちろん全ての高級ホテルがこうだとは言わず、自分の感覚に合う良い体験が出来た場所もあるが、全体的な割合として見ればそれは少ない方である。

ということで、最近は旅行をする時はビジネスホテルに泊まることが多い。

当然チェックインは必要最小限のやり取りで済み、素泊まりにすると自分の食べたいものを周辺店舗で安価で食べられる。別に旅行先だからといって豪華な食事をする必要はなく、コンビニの弁当を食べてもいいし、近所でラーメンを食ってもいい。余計な施設のサービスもないので1泊5000〜7000円で済む。国内ツアーとして新幹線も一緒に予約すればもっと安くなる。この間は平日に1泊2日で東京から新潟に行き、交通費込みで1人14000円だった。この価格ならもはや非日常ではなく、日常の範疇だろう。

結局いまの収入ではどこまでいっても金が付きまとうので、身の丈に合ったホテルに泊まるのが自分の精神衛生上は良いのだと思う。高級ホテルの良さとして「物が必要以上にあり自由に選択できる」という豪華さを享受できるのもあると思うが、その状態がそもそも「金がもったいない」をベースとする自分に合っていないのである。

じゃあ何のためにわざわざ金を使って旅をするのかというと、自分は次のような感じになる。

  • 街中を歩いて現地の雰囲気を知る

  • 有名なラーメンを食べる

  • 偶然いい飲み屋を見つける

  • 野鳥が見られるスポットに行く

  • 電車からの風景を楽しむ

最終的に宿泊施設が一切関係なくなってしまい、お前もう分かったから一生高級ホテル泊まるなという感じである。自分には向いてないことが分かったので、金がある人はどんどん金を落としていってほしい。

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