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現ちゃんとLÄ-PPISCHと

レピッシュを深く聴き込んでいくと、故・上田現(以下、現ちゃん)の詞の世界にどんどん引き込まれていく事になる。現ちゃんが手掛ける歌詞のユーモアと紙一重なおっかなさみたいな部分。時に文学的に綴られる歌詞をもっともっと読みたいとなり、アルバムを買っては彼の詩の世界に没入してしまう様になる。「Love Song」「爆裂レインコート(胎児の夢)」「胡蝶の夢」「パーティ」「28才」「歌姫」「-6m」「ハーメルン」「水溶性」「ドライブ」(これは注釈で、「作家の創作の世界での発想であり、犯罪行為を美化・助長するものではありません」とある)などなどなど。レピッシュ後期のアルバムやソロ「夕焼けロック」(ミニアルバムだけどこれものすごいのです)なんかはSpotifyにはないけれど、取り敢えず上田現(の作詞)フェイバリットなプレイリストを作成してみたのでお時間ありましたら↓

1991年にリリースされたソロデビューアルバム、「コリアンドル」は、いざとなればインディーリリースも辞さなかったという問答無用のクラシック作。このリリース前後にROCKIN'ON JAPAN(表紙はヘッド博士リリース時のフリッパーズ・ギターで、2人へのロングインタビュー号。フリッパーズがこの頃アルバムを出していなければ現ちゃんが表紙だったんじゃないのと今でも本気で思っている)に20000字インタビューが掲載されているのだけど、ここではアルバム全曲について事細かく発言してくれていて、「コリアンドル」を聴く時はこれを引っ張り出して聴きながら読むというのを定期的にしている。熱狂的な阪神タイガースファンでもあった彼の描く野球にまつわる風景。例えば「野球少年」というインストは、そのタイトルが物語る郷愁を誘う様な懐かしい原風景が描かれていてとても大好きな一曲だし、「ファウル」で歌われてるのは、「その」野球少年の事なのかな?なんて妄想してみたり。彼の歌詞は、例えば佐藤伸治なんかにも言えるけれど、用いる言葉や単語は極々シンプルなものが多い。御伽話の様な、ファンタジーの様な世界感とそこに現実世界が合わさったりもする詩の世界。野球やお祭り、かくれんぼなんかをモチーフとして描かれる楽曲群はまさに自分の好きな世界観だったので、よりアルバムの魅力は増してくる。アルバム全体に通底するノスタルジー的なものは誰もが感じ取れる筈。それからそれから、キーボーディストの彼の偉業はこちら


レピッシュに話しを戻すと、歌詞にばかり言及してしまってますが、レピッシュに対しミクスチャーの先駆的バンド、スカバンドなんて表現をよく目にする。今でもYouTubeで幾つか観る事が出来るテレビ出演時でのフロント3人によるめちゃくちゃなパフォーマンス(それとは対極に淡々と演奏するTATSUと雪好2人もものすごいのだが)と言動(MAGUMIは特にひどい笑。最高)に目と耳が行きがちだけど、改めて言うまでもないけど5人の演奏力はとてもレベルの高いものなんですよね。例えば「爆裂レインコート」は歌詞が強烈でそちらに目と耳が行きがちだけど、ここでのレゲエのフレイヴァーもたまらない。そう、レピッシュは爆裂以外にも曲によってはレゲエが時々聴こえてくるんだけど、彼等の演奏するレゲエ風味も素晴らしいんですよね。セカンドソロ、「森の掟」に入ってるペットという曲ではこだまさんが参加していたり、「Babylon」のシングルではDubmaster Xがリミックスを手掛けたりと、レゲエやダブは彼等にとって身近なものだったみたい。ベースのTATSUは後年miimoに参加するが、ここで聴かれるダブサウンドの心地良さを聴くと、この頃のレゲエ風味はTATSU主導だったりしたのかな?なんて思ったり。


櫻井あっちゃんの時もそうだったけれど(そうだ、BUCK-TICKが現ちゃんトリビュートでカヴァーしたハーメルンも圧倒的なんだ)、現ちゃんが亡くなったのを知った時の茫然自失っぷりを思い出した。知り合いじゃないのにこんな気持ちにさせられた事。亡くなって暫くしてからだったか。ニュースで現ちゃんの特集が組まれた番組を観た時、涙が止まらなくなったのは自分でもとても驚いた。レピッシュ脱退後、「ワダツミの木」のプロデューサーとして紹介される事も多いけれど、彼の原点のレピッシュ時代と、満を持して放たれた傑作ファーストソロ、「コリアンドル」にも是非耳を傾けて頂きたいです。

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