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Citrusを語る

トラットリアからSEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER、暴力温泉芸者(中原昌也)と一緒にシトラスがリリースしたep、「Boat, Drive In」はなによりも衝撃だった。チープな打ち込み(これがたまらなかった)とギターポップを掛け合わせたかの様な音。そこにきらっとしたメロディーと遠藤さんの歌が合わさると!という、ありそでなかった様な不思議な感覚。チープなコラージュ、歌モノなんかを並列した、イビツながらもポップど真ん中みたいなメロディーも確実にそこにはあったし、トラットリアからというのも手伝って(?)、中毒患者(わたし)が急増した様に思う。

なんて書いたけれど、その後アルバムを出す事もなく、好きな一枚ではあったけど他にも色々なのを聴きたいお年頃だったので、シトラスはなんとなく疎遠になっていった記憶があるのだけど、でもそんな時に付き合い始めた人がギターポップやネオアコ、アノラックなんかに傾倒していて。そのテのフリーペーパーを作ったり、他にも自身がDJとなって架空のラジオ番組で喋り(!)、合間に自分の好きな曲をかけるというのをカセットに録音していて(そのカセットは渋谷のZESTでかけてもらった事もあったらしい)、その時にシトラスの「Ripple In Still Water」がかかったんです。トラットリアからの一枚目しか聴いてなかった自分が「これシトラスなの!?」っと驚いて、でトラットリア以外から出ていた7インチやヴィニールジャパンからのとかも一気に聴かせてもらって(カセットに編集してもらった)、猛烈なスピードで好きになっていった。山塚アイや小山田圭吾、緒川たまきなんかも推してたみたいだけど、自分にとっては彼等からよりも当時の恋人に影響をモロに受けて、令和の今に至る。あと、周りの音楽に精通している友人達もこぞってシトラス好きだったのも大きかった。


元々彼等の出発点がギターポップやネオアコ辺りからなのかはわからないけれど、手探りでスタートしたらしい(機材もない楽器も弾けないという状態だったみたい…)最初期のヘロヘロ(褒めてます)の演奏や録音は好きにより拍車をかけたし、この頃は海外のローファイバンドにも夢中だったけど、シトラスが占める割合がどんどん自分の中で大きくなっていった。あと、江森さんのデザインやコラージュの存在も大きくて。シトラス解散後の様々な媒体のデザインもたまらないものが多いですし。


江森さん遠藤さんは沢山ジャケットを作りたいから、アルバムではなくシングルをばんばんリリースしたいといった旨の発言をしていた。7インチはどれもこれも思い入れが強いけれど、The Silly Pillows、Whitenyとの2枚のスプリット7インチはちょっとした特別感が。あと、解散後にリリースされたベスト盤(これがリリースされたのほんとに嬉しかったんだ)に、ベスト盤なのに他人の曲を入れるという暴挙(ご本人達が大いに影響を受けたり大好きなバンド)も微笑ましかったけど、そこに収録されたThe Cannanesの「Frightening Thing」、クレジットや曲名を見ないで取り敢えずCDかけたらこれ完全にシトラスの曲と思わされる程シトラスに寄り添っている感もすごい一曲。因みにそのThe CannanesはCitrusと一緒に何か(やっぱりスプリット7インチだったのかしら)をやる予定もあったそうな。


Whitneyの事もシトラスに負けず劣らずとんでもなく好きになってしまい、いまだになんかしらの編集盤でもなんでもよいからリリースされないかなと夢想するしてしまう程こよなく愛している。江森さんがジャケットを手掛けたコンピレーション、「Pop Japanese Style!」にはフォトジェニー(好き。さっき書いたフェイクラジオDJもしていた前の恋人は彼女にフリーペーパーでインタビューしていたのを思い出した)ワンスター(好き)コーニッシュカモミール(好き)なんかと共にWhitneyも参加していて、勿論これもフェイバリットソングなのだけど、Roverからのシトラスとのスプリット7インチでの同曲の日本語ヴァージョン、ちょっと聴いてみて下さいよ…(Pop Japanese Style!のもあったのでこちらも)。勿論シトラスもすっごいのでこれもどうぞ。


「メロディー重視」ということで作られたという「Sings In Melodydecorder」は、シトラスのディスコグラフィーの中で一枚選ぶとしたら、トラットリアからの4枚を差し置いてでもこれを挙げる。そのWhitneyはたのさんもヴォーカルで参加してるというのもあるけれど、シトラスというユニットが書くメロディーの良さは、この4曲に詰まっていると思うんです。がちゃがちゃした風なのや忙しない風なのとは対極な、こんな良いメロの曲も書けるのかというね。全4曲、たったの10分しか収録されていないけど(それはシトラスのディスコグラフィーほぼおんなじなのだけど)、そうまるで宝物の様なのだ。


そしてそして。さっきちらりと触れた、2009年にリリースされた「インコンプリート・ディスコグラフィー。ファースト×ラストはベストBANG!」ベストアルバムがリリースされるという奇跡。まず、単純に25曲収録トータル56分というだけでにやにやが止まらない。トラットリアからの楽曲を中心に、レアトラック、エクスクルーシブ、他人の曲(!)、ライブレコーディング、遠藤さん正田さんによるCraneの曲等盛り沢山(ほんとは70分以上収録して頂きたかったかな)で、これが聴けて良かったなーと心底思いました。数年前、残念ながら実現はしなかったけれど、遠藤さん主導のシトラスの音源リリースの予定もあったそうで、実現せずにほんと残念無念であった。

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