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Anticonその2

昔はてなダイアリーを頻繁にやっていたある日、現在もオンラインショップとして継続しているが、当時は恵比寿に実店舗を構えていたWENODにWHY?のライブCD-R入荷の報が。恐らく極少数入荷だったと思うのだけど、予約して直接お店で購入したか通販購入だったかは完全に失念してるがともあれ無事ゲット〜歓喜〜それをはてなダイアリーに書く〜コメント欄でやんややんやみたいな流れだった様な記憶。そんな事を思い出しながら久しぶりに聴いてる。今はBandcampでも買えるしYouTubeにも上がってるしであの頃の自分に教えてあげたい。


2002年春に行なわれたMushのツアーDVDがYouTubeにフルで上がっているので、観た事ない人はcLOUDDEADとReaching Quiet、Boom Bip&Doseのパフォーマンスを是非観て頂きたい。久々に観たけど、やはり圧倒されるのはDoseのスキルフルなスタイル(あーこりゃほんとにかっこよい)。Reaching Quietでのヨニさんは時々指揮者になったりボクサーになったりとこりゃあ女子にも人気出るの無理もない。cLOUDDEADは冒頭で全員が仮面を被ったそうまるでアイズワイドシャットな不穏さ、時折覗くユーモラスさを行き来したりとなんとも異様な雰囲気。しかしキーボード前でDoseとWHY?が並んだ絵面はたまらないですね。2人がハモるのも大好きなんですよね。



FADERやremixなんかのインタビュー記事や国内盤ライナー(大半は原雅明さんが執筆)なんかを読み返していたんだけど、cLOUDDEADの「Ten」リリース前後のインタビューにて、Doseの「俺が人類史上最も素晴らしいと思う創造物のひとつにツインピークスがある」という発言を読んで、彼やヨニさんの描く世界観の根底にはユーモアともダークとも言える(or言えぬ)シュールなものも多く確認出来るけれど、そんな部分にツインピークスの影響をほんのり感じていたのかもしれない。で、インタビューでヨニさんは、「最終章を迎えたと思う。その結果には満足している」と言い、ドウズは「今後ももしかして」と含みを持たせ、Nosdamは「楽観的/二人がやるなら」みたいな発言で締めていた。「Ten」のクレジットに3人の短いコメントがあってそんな事が記されてはいたけれど。んー。


Dose&WHY?コンビと言えば、Dominoの看板Hoodの「Cold House」で客演をしているが(この作品で彼等の知名度がより上がるきっかけになったかと思う)、随所に飛び交う2人の言葉(声というか歌というかラップというか)の浮遊感たるや。2人のクレジットがon the micなのも異様にかっこよい。来日時の2人もそれはそれはかっこよかったんだ。


来日公演と言えば、代官山で行われた13&Godも観に行った。物販で買った13&God/SubtleのJordan Dalrymple(Antonionian名義でAnticonからソロもリリースしている)のCD-Rを売り子をしていたDoseから購入し、彼の作品じゃないのにサイン(まあサインというより奇妙なイラストだったが)をもらうわたくし。快くサインしてもらった盤は今もちゃんと手元にあります。Themselvesのファーストとセカンド、Subtleのファーストの3枚はまるっとクラシックな訳だけど、DoseとJelの黄金コンビが放つラップとビートの交差は格別だ。かつてMCバトルで「あの」エミネムとバトルしたDoseである。そこで培われたであろうスキルはちょっと並大抵ではない。高速に畳み掛けるライム速射砲を突然披露するスタイルにはいつも鳥肌させてもらってます。因みにDoseのオウンレーベル、A Purple 100の「Purple」はDoseの飼い猫の名前なのだそうな。猫好きDoseのラップの言い回しとかに猫的なものを感じたりもするんですよね。


JelのMush(国内盤はTri-eightより)からの「10 Seconds」は、インストヒップホップの作品の中でも特に好きな一枚として君臨している。DJ KRUSHがAnticonを招聘、共演する大きなきっかけが「10 Seconds」だったんじゃないかなと思っている(が、どちらも2002年リリースなので違うのかもしれない)。


Aliasが徐々にマイクを握るのを止めてプロデューサーに徹し始めた理由は、周りのMC達がリリシストとして優秀過ぎる、自分には書けない世界観を描けるから/自分はMCよりもプロデューサー的な立場の方が、みたいな事を発言していたけれど、ファーストアルバムでは全編自身のラップがフィーチャーされていたが(本当に大好きなラップアルバム)、その後はビートメーカーの道を辿る事に。しかしTarsierとのデュオ作での「Last Nail」中盤で突然Aliasの畳み掛けるラップを聴けるのだが、彼の今までのラップで最良の瞬間なんじゃなかろうか?って位めちゃめちゃかっこよい。ヒップホップというよりもエレクトロニックミュージックのプロデューサーとして沢山の作品を残してくれた。もう亡くなってから6年が経過するんですよね。


Pedestrianに対し、ヨニさんなんかが「いつも本を読んでるガリ勉」なんて揶揄(aka愛あるいじり)したりもしていたけれど、元々ジャーナリスト/音楽ライターが出自で(今はどうなんだろう?)徐々にステージに上がりラップをし始めたという経歴らしく。オフィシャルからのリリースは少ないなか、この人はSoleとのDa Babylonianz、ドウズ、ヨニさんらとのObject Beings、同じくドウズにヨニさん、そしてSoleらとのStuffed Animals等にもメンバーとして名を連ねている事からもお分かりかと思うのだけど、多面的な側面を幾つものユニットで自分のスタイルを披露出来るレンジの広さや造詣の深さなんかが伺える。彼のオフィシャルデビュー盤、「UnIndian Songs Volume I」がカセット+zineのセットでリイシューされるのだそうな。zineの中身めちゃめちゃ気になる…。


Restiform Bodiesも相当ぶっ飛んでいたが、ソロ作でもその流れを十二分に汲んだPassageはインタビューでAntipop Consortiumを堂々とディスってみたりと、ヒップホップ(シーン)への懐疑的ともとれる姿勢が見え隠れしないでもないけれど、しかしオフィシャルソロデビュー盤ではヒップホップやラップする事を厭わない(?)奔放なスタイルでとにかく癖になる。これとは別に幾つかCD-Rの作品もリリースしているが、そちらの方が「らしさ」全開(全壊)だったりするんですよね。これとか。



友好的な形での決別だったようだが、現在は別の道を歩んでいるSoleは、当時レーベル/クルーの中心的存在であり、スポークスマンであった。そんな彼のデビューアルバム、Bottle of Humansの傑出した出来は、プレイボタンを押した瞬間から只者ではない雰囲気が漂う。EL-Pとのビーフで名を馳せた部分もありますが(?)、奇しくも彼の「Fantastic Damage」と並んでクラシックである。

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