絶対浮気しない男 第7話 揺らぐ決意

#創作大賞2024 #恋愛小説部門

「付き合おう」

あの日、沙織にそう告白したあきら。 けれど、交際が始まってみると想像以上に困難があった。

「ねえ、デートの約束忘れてたの?」
「ご、ごめん...寝坊しちゃって...」
「もう!あきら君ったら本当にドジなんだから!」

約束をすっぽかし、ケンカばかりするようになるあきら。 葵を振ったことで周囲からの風当たりも強くなり、ストレスが溜まっていた。

「最近、私とデートするときもぼーっとしてるよね」
不安そうに見つめる沙織の瞳。 あきらは申し訳なさと、ふとした違和感を覚えずにはいられない。

(俺、本当に沙織のことが好きなのかな...?)

交際前は彼女に夢中だった。 けれど今は、恋人としてうまくやっていく自信がもてなくなっていた。

「俺、沙織との恋愛向いてないのかもしれない...」

そんな弱気な呟きを漏らすあきら。 いおりは呆れたように肩をすくめる。

「お前、『絶対浮気しない男』宣言したばっかだろ」
「それが...俺、自分の気持ちがよくわかんなくなってきたんだ」
「はぁ!?」

いおりの絶句する表情。 それもそのはず、あきらは昨日までの自分を全否定しているのだ。

「沙織のことは好きだけど、恋人としてやっていけるかどうか...」
本音を吐露するあきら。 いおりは唖然とした表情のまま、ゆっくりと口を開く。

「お前、葵を振ったこと後悔してんのか?」
「わ、わかんねえよ!葵とは上手くいかなかったし、沙織とも上手くいかない...俺には恋愛は無理なのかも...」

打ちひしがれるあきら。
いおりは心配そうに眉を寄せた。

「お前は単に、恋愛に向いてないんじゃなくて、自分の気持ちに正直になれてないだけだろ」
「えっ...」
「沙織のことも葵のことも本気で好きだった。でもそれは、一時の盲目的な恋に過ぎなかったんだよ」

ハッとするあきら。 いおりの言葉は、まさに自分の心の内を言い当てていた。

「俺、どうすればいいんだ...」
「真剣に自分と向き合えば、答えは出るはずだ。簡単な道じゃないが、お前ならできる」

力強い言葉を贈るいおり。 あきらは感謝の気持ちを込めて、友の肩を叩いた。

「ありがとな。俺、もう一度よく考えてみる」
「ああ、応援してるぜ」

友の後押しを胸に、あきらは沙織との関係を見つめ直すことを決意する。 甘い恋に浸るだけでは、本当の恋愛とは言えないのだ。

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