絶対浮気しない男 第13話 秘密のバレ日

#創作大賞2024 #恋愛小説部門

翌日、登校中にみさきが話しかけてきた。 「おーい!あきらくーん!昨日聖子とヤったんだってね?」

その一言で聖子との秘密を看破され、あきらは狼狽する。
「...!」

「でもなんでまどかに告白されたのに1週間待ってって言ったわけ?もしかして聖子とヤるためだけに待ったとか?」

みさきは容赦なく詰め寄る。 昨日の今日で、噂は学校中に広まっているのだろう。

「違う!俺は絶対浮気しない男なんだよ!」 取り繕うように言い訳をするあきら。

しかしみさきは鼻で笑う。 「はいはい。でもさ、本当にまどかのこと好きならすぐOKするはずでしょ?私だったらそうするもん」

「それは...」
反論の言葉が見つからない。 確かにみさきの言う通りだ。 本気で好きなら、告白を保留にする理由なんてない。

「結局聖子ともヤっちゃったわけでしょ?それって浮気じゃないの?」
みさきの追及は冷酷だ。 あきらは俯いてしまい、なにも言い返せない。

「自分は正義だと思ってるみたいだけど、結局女を弄んでるだけじゃん。最低だよ」

みさきの毒舌はあきらの急所を容赦なく突く。 図星だからこそ、痛恨の一撃だった。

思わず涙が出そうになるが、あきらは必死にこらえた。 泣いたところで、自分の罪が消えるわけじゃない。 今さら同情を乞うのは、卑怯というものだ。

みさきはあきらを軽蔑の眼差しで見下ろし、透けるように冷めた声で言い放った。
「まどかは私の親友だからね。これ以上彼女を傷つけたら承知しないよ」

そう捨て台詞を吐くと、みさきはさっさと行ってしまった。 残されたあきらは、味気ない教室の片隅で途方に暮れる。

(どうすりゃいいんだ...)
八方塞がりだ。 真剣に付き合うつもりのない女に手を出したあきらが悪いのは明白だ。 かといって、まどかを振るのも忍びない。

窮地に立たされて、あきらは自業自得だと思い知った。 恋愛ごっこのつもりが、泥沼にはまってしまったのだ。

放課後、まどかを呼び出したあきら。 伝えるべきことは明確だったが、どう切り出していいのかわからない。

「俺、お前のことはかわいいと思う。でも、つきあうのは難しいかな」

「どうして!?私、あきら君のことが大好きなのに!」

「ごめん。でも俺にはお前と付き合う資格がないんだ。 実は、3日前、聖子と...」

あきらの告白にまどかは絶句した。 信じられないという表情で、あきらを見つめる。

「私じゃダメだったの...?」 まどかの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。

「本当にすまない。でも、男に二言はない。 俺は絶対浮気しないから、もうお前とは付き合えない」

棒読みのようにあきらは言葉を紡ぐ。 でも、それが精一杯の誠意だった。 これ以上、まどかを欺くわけにはいかない。

「あきら君、私...あなたを信じてたのに...!」

まどかは泣きじゃくりながら、あきらを振り払って走り去った。 あきらはそれを止めることもできず、ただ茫然と立ち尽くす。

(まどか...ごめん...) 心の中で謝罪を繰り返すが、もはや意味はない。 土下座したところで、過ちは帳消しにならない。

それから、聖子からも詰め寄られる。 「まどかのこと振ったんでしょ?なら私と付き合って!」

「無理だ。俺は絶対浮気しない男だ。たとえ付き合ってない時でも」

「私の初めてだったのに...ひどい...」 聖子の目から、悔し涙が滲む。

「悪いけどそれは自己責任だ。俺は最初から、軽い女とは今日だけの関係だって言っただろ」

突き放すようにあきらは言い放つ。 でも心の内では、言い訳がましいことを言っていると自覚していた。

本当は自分が一番軽薄なのだ。 まどかの想いも、聖子の想いも、どちらも踏みにじった。

結局あきらは二人の想いを踏みにじり、孤独を選んだのだった。

喪失感と虚脱感に襲われながら、あきらは夕暮れの校舎をさまよった。 春の日差しは やわらかいのに、心に沁みるのは冷たい後悔だけだ。

(俺は、なにをしでかしたんだ...)
自問する。 でも答えは最初からわかっていた。

「絶対浮気しない男」という看板に隠れ、いい加減な恋愛ごっこを繰り返してきただけなのだ。 誠実さのかけらもない。

今さらだが、自分の未熟さを思い知らされる。 18年生きてきて、恋愛の何たるかを何ひとつ理解していなかった。

春の風に吹かれて、あきらの頬を冷たい涙が伝った。 誰もいない校舎の中、感情を隠す必要もない。

ひとりきりで涙を流しながら、あきらは失った恋を悼んだ。 儚い初恋は、こんな形で終わってしまうのか。

本気の恋なら、もっと真っ直ぐに相手に向き合えたのかもしれない。 でも、今さら後悔しても仕方がない。

自業自得の顛末を、これからどう償っていけばいいのか。 春の陽射しに照らされながら、あきらはぼんやりと考えるのだった。

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