絶対浮気しない男 第4話 新学期の出会い

#創作大賞2024 #恋愛小説部門

高校一年の二学期。

「お、あれが噂の転校生?」
「かわいい子だな」
教室に響くざわめきに、あきらも視線を向ける。

教壇に立つのは、色白の肌に凛とした瞳の少女。 クラス全員を見渡すように硬い表情を浮かべている。

「今日から皆さんと一緒に学校生活を送ることになった、吉崎沙織です」
真新しい制服姿で深々と頭を下げる沙織。
その仕草に、あきらは妙な胸のときめきを覚えた。

「隣の席が空いているな。吉崎さん、そこに座ってください」
担任の言葉に沙織がこくりとうなずき、あきらの隣へと歩み寄ってくる。

ざわつく教室を横目に、あきらは視線を逸らすことができない。 降り注ぐ陽光を浴びてキラキラと輝く黒髪、スラリと伸びた手足。 その美しさに、思わず息を呑んでしまう。

「よろしくね」
隣に座った沙織が微笑みかけてくる。
その笑顔に、あきらの鼓動が早鐘を打った。

(可愛い...って、俺には葵がいるんだった!)

一瞬心を奪われかけたことに気づき、あきらは慌てて視線を外す。 こんな些細なときめきで動揺してどうする。 今は葵への想いを貫かなければ。

そう自分に言い聞かせつつ、あきらは講義に集中しようと机に向かった。 けれど、視界の片隅で感じる沙織の存在感が、どうにも気になってしまう。

「で、その転校生ってのはどんな感じなんだ?」
放課後、いおりがニヤニヤしながら尋ねてくる。

「別に普通だよ。ちょっと可愛いだけで」
「お前の目にかなうような美人なんだろ?」
「...わりと、かもな」

渋々認めるあきらに、いおりが肩をすくめた。

「だったらお前、葵と付き合う資格ないんじゃね?」
「は?なんでだよ」
「だって他の女に心惹かれてんじゃん。もう純愛とはほど遠いぜ」

あきらは思わず口ごもる。 確かに、沙織に心を奪われそうになったのは事実だ。 それでも、葵との恋愛に臨む決意は揺るがない。

「俺は葵一筋なんだよ。沙織なんかに負けるか」
「そうかい。ま、頑張りな」
投げやりに言って、いおりは部室へ向かって歩き出す。

あきらもその後を追いかけながら、胸中で葛藤していた。 自分は本当に、葵一途の恋を貫き通せるのだろうか。

そもそも、昨日の告白だって、あまり真剣に考えていなかったのかもしれない。 ただかわいい子に言い寄られて有頂天になっていただけで。

本気の恋とは、そんな生易しいものではないはずだ。 もしかしたら、今の自分には荷が重すぎるのかもしれない。

(いや、待てよ...俺は絶対に葵を裏切ったりしない!)

弱気な思考を振り払うように、あきらは拳を握りしめる。 たとえ沙織に心惹かれたとしても、それは一時の迷いに過ぎない。

葵を想う気持ちさえ忘れなければ、きっと真っ直ぐ愛し続けられるはずだ。 恋愛経験の浅い自分だからこそ、純粋な想いを貫ける。

そう自分に言い聞かせ、あきらは再び前を向いて歩き始めた。葵の彼氏として、誠実に振る舞っていこうと決意する。

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