横溝正史『犬神家の一族』――エロ小説書き、本を読む#12

 ひょんなことから、ガチガチのR18小説を書き始めてしまったアマチュア小説書き。でもだからこそ、本を読まなくちゃ!
 というわけで、中断していた読書感想記事を再開することにしました。相変わらず無節操な行き当たりばったり読書、よろしければどうかお付き合いのほどを。
 過去の読書感想 →https://zsphere.hatenablog.com/


 有名なシーンなのは分かるけど、この表紙もうちょっとどうにかならなかったの?w

 それはともかく、読み進めている横溝正史金田一耕助シリーズです。
 このシリーズはやっぱりどうしても映画・映像での事前イメージが強いですね。実際読んでみると「うお、こういう話だったのか」ってなることがけっこう多い。
 とりあえず今回はネタバレ全開感想ですので、未読の方はブラウザバックよろしくです。










 個人的にここまで数作、金田一耕助シリーズを読んでてすごいと思ってるのは、やっぱり始まりが不気味でおどろおどろしくて暗い雰囲気なのに、話が終わる頃には理路の通ったすっきりした結末がついて、まったく後味よく本を閉じられるようになっている、その落差というか話のコントロールなんですよね。味付けは濃厚なのに後味さっぱりだから、ついついパクパクと食べ続けてしまうやみつきお菓子みたいな感じで続けて読めています。
 本作も、冒頭で開示される遺言状のあまりの異常さと執拗さ、何か事件が起これと言わんばかりの内容に戦慄するわけですけど、珠世の出自その他の故人の内実と人間関係が明かされるに及んで、本を閉じるころには「なるほどそういう意図ならああいう遺言状になるのは分からなくもない」くらいまで着地していて、なんというか、よくまぁこんなのを考え付くなぁ、と感嘆するばかり。

 さすがに佐清の中身が入れ替わってるな、というのは途中で気づきました。手形の拒否→承認からの同一人物確認という成り行きの不自然さから類推すれば、まぁそうだろうなとは読めたし、そこが二人一役ならアリバイなんかも崩れるんで。佐清と静馬が戦地で知り合いになってたんだろうなというのも予測出来てた。
 けど事件の全体像はさっぱり分かってませんでした。やはり私は探偵は向いてないなw でも、逆に推理が苦手だからこそ、解決編を読んで驚くという一番楽しい読み方が出来ているわけなので、私は自分の推理力の低さをわりと喜んでいたりします。解決編で「そんなまさか!?」って驚きながら読める方が、推理小説の読書体験としてはリッチだよね。

 あと、ここ数年、翻訳ものを多く読んでいたんですけども、それが去年今年になって日本作家の作品に戻って来てみたら、なんだ自分の日本語語彙力が全然だな、っていうのを改めて実感させられたというところもありました。
 先日読んだ『八つ墓村』でも、博労というのを知らなくてググって(スマホの登場で最も大きい恩恵がこの、読書してて分からん単語が出てきた時にすぐに検索できるところですね)、ああ、馬喰! 馬喰横山ってそういうことか! みたいな発見を脇でしながら読み進めたり。
 今回の読書でも、そもそも「斧」を「よき」とも読めるというのをそもそも知らなくて。なんか当て字っぽいのかなとか思ってたけど検索してみたら別にそういうわけでもなかった。「斧琴菊」で「良き事聞く」の語呂合わせの縁起担ぎにするのも江戸時代に既にあったし、そういう柄の着物なんかもあったらしいと出てきて、なんだ俺、相変わらず全然ものを知らないな、と呆れるなどしました。
 R18とはいえ一応文章を書いてる身ですし、語彙が増える機会になるのは嬉しいですね。これからも小まめに辞書を引きながら横溝作品を読み続けていこうかと思います。

 とりあえずそんなところで。


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