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今話してみたい、あの人

仙道さん、お元気ですか

革パンに革ジャン。歩くと腰元の鍵束がジャラジャラと鳴る。焼けて浅黒い肌。指には当時流行していたクロムハーツが光る。カルバンクラインのCK ONEがクラクラするほど香る。

それが人生で初めての上司だった。
チャラい。
恐ろしいところに入社してしまった。

だがその第一印象は、すぐにひっくり返されることになる。


ここは求人広告会社の制作部

仙道さん(仮名)は、仕事量は人の倍、品質も高かった。しかも任されるのは会社の社運を賭けた大手企業ばかり。そのプレッシャーをもろともせず、次々に功績をあげて、あっという間に部門長になった。
忙しいのにも関わらず、周りを常に気遣い、『同僚・部下をどう教育すれば最短でエースになるか』を考え抜いていた。もちろん“人たらし”で、新卒で右も左も分かっていない私にもカジュアルに接してくれるほどだった。仙道さんの周りには必ず人がいた。 文章にすると大変噓っぽいが、本当に実在すると信じてほしい。
彼はずいぶん前に専務取締役になったと風の噂で聞いた。

仙道さんくらい仕事ができるように

あれから20年経った今でも、あなたほどの人に出会ったことがありませんよ、仙道さん。お元気でいらっしゃいますか。今でも仕事場へは革ジャン革パンで、休日には自宅の庭で日向ぼっこしてお肌を焼いているのでしょうね。私はあなたの足元にも及びませんが、なんとか自分の生きるべき方向を模索しています。近々コピーライターとして自立しようと思っています。あなたを真似て買ったクロムハーツの指輪を嵌めて。

サポート…?こんな世知辛い世に私をサポートする人なんていな…いた!ここにいた!あなたに幸あれ!!