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海はいつから星はどこまで❺

そして久しぶりに夜が始まるといつのまにか雨が止んでいた。木っ端を焚いた火もだんだんと大きくなり、宮本のジャンバーの端を少し焦がすまでの大きさになった。さあさあ夜が始まる。火を囲んでなんの話をしようか。

中国に長期出張に行っている佐藤さんが久しぶりに日本に帰ってくるのでみんなで集まったのがこの会だ。佐藤さんが持ってきてくれた中国タバコをみんなで吸う。火をつけてジョン、煙を吐いてファー。

イオンで買ってきたラムチョップがおいしそうに焼けている。こんな時じゃないとこんな骨つきの肉は買わないし、イオンでラムチョップが売ってるなんてことも知らなかった。1人ひとかたまりずつもらって齧る。

大きいスピーカーを持ってきたので音楽をかける。来るときにレンタカーで聞いた「ザ・トーキョー」の曲とかをかける。島根に住んでる友だちからもらったアップルワインを出してきて飲む。小林さんや宮本や佐藤さんが何をしていたのかは今はもう覚えていないが、なんか食べ物はおいしくて火が暖かいので酒が進み、面白い夜だったと思う。

宮本に彼氏ができたことや小林さんの劇団のことや佐藤さんの中国事情のことなどを聞いたんだと思う。僕は面白いなあと思いながら酒を飲みすぎてテントに這入った。外から聞こえる声がだんだん小さくなっていって、薪のパチパチいう音だけになり、しばらくするとそれも聞こえなくなった。テントの薄い屋根を一枚隔てたら宇宙なのかと思ったけどそれはべつにいつもそうだし、今日の良さはみんなが久しぶりに集まったことなのに、僕だけ先に眠くなってきた。

どこに朝があったのかわからないが目が覚めたらほとんど昼だった。のこった食べ物を野生動物に荒らされないように小林さんと宮本がよけておいてくれたので、朝ごはんも豪華だ。マゴチのあらのお味噌汁がおいしくて嬉しかった。

これからまた日が昇りすぎないうちに堤防へいく。次の釣りは有名な釣り場からやる。釣れても釣れなくてもいい。みんなで魚の話をしながらドキドキしたいなと思う。

海はいつから始まって星はどこまであるのか。それを見に僕らは荷物を積んでクルマを走らせる。

(終)

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