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君のことを考えている、路地で。朝。

細い道で寝てしまったせいで肋が痛い。クシャミでもしたらバラバラになりそうだ。落ちてるタバコを拾って大通りに出て公園へ歩く。一斗缶で燃やしてる火は温かいが、このチビたシケモクに着けるには大きすぎる。前髪を少し焦がしていると、

「お兄ちゃん、ライター10円で貸してやるぞ、どや?」

と言われて財布を探す。普段あんまり持っていない50円玉が一個しか小銭入れにないのでそれを預ける。無言で奪われるが、火を、つけてくれた。恐る恐る吸ってむせる。短いタバコを吸い終わったら俺はもうこんなところに用事はないのだ。

駅というものがあるらしいのでそこへヨタヨタと早足で歩く。這々の体というやつなのでスピードが出ない。野生のリクガメに追い越され立ち竦む。おれはもう、どこへも行けないのか、約束があるのに。約束があるのに。

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