変わるもの、変わらないもの

ある農村の話をしてみたい。そこでは、みんなが田畑を持ち、毎年、田畑を耕し、種をまき、草刈りをし、収穫をする、そんな毎年変わらぬ生活をしていた。もちろん、自然が相手なので毎日いろいろなことが起こる。虫がつくこともあれば、台風が来ることもある。雨が降らないこともある。そういったことに日々対応しているので、必ずしも「毎年同じことをしている」わけではない。むしろ現場では「毎日なにか違うことに対応している」ように感じるだろう。ただ、毎年の巡りは基本同じだ。種をまき、収穫し、出荷する。この巡りを繰り返す。外部の人間からすれば「毎年同じ、ルーティンの繰り返し」に見えるだろう。農村のそれぞれは農作業にプライドを持っており、誇りをもって良い作物を毎年育てている。

そんな村に、東京で、様々な企業やレストランとの関係を築き、ITのスキルも身につけた男が住み着いた。彼は農業は好きだったが、かといって農作業のプロではない。ただ、自分は農業が大好きで、農村の人たちが持っていないネットワークやスキルがあるのでこれを活かしたいと思っていた。そこで、農作物に付加価値をつけたいといって、JAではなく東京の高級レストランに農作物を直販するルートをつくったり、加工食品を作って安定的な現金収入をもたらす仕組みを作ったりした(農作物のみの収入だと、収穫期しか現金収入が入らないのに対し、加工品なら年間通して収入が入るので生活が安定するのだ)。また、農作業にITを導入し、ノウハウをデータ化することなどを通じて、農作業の省力化も進めようとした。

村の人は彼のことをどう思うだろうか。傍から見れば(東京に住む人から見れば)、良いことじゃないか、と思うだろう。それこそ農業の進むべき方向だという人もいるかもしれない。一方、村の人から見れば村の慣習にたてつくめんどくさい人に見えるのではないだろうか。高級レストランに直販とか、チャラチャラやりやがって、とか。農協の仕組みを壊すな、とか。さらには、農作業を必死でやるのでなく、ITで簡略化するなどとは一体なにごとだ、と。農作業の大変さを分かっていない、という人もいるかもしれない。まずは農作業を一通りできるようになってから色々言えよ、という人も相当数いるだろう。

さて、学校現場でもこういうことって往々にして起こると思う。あなたが村の農民なら、あるいは上記の「彼」なら、どうしますか?

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