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別れ

悲しい別れが待ち受けていると分かっていても
日常を続けなければならない

なんでこんな日も
私は学校へ行かなくてはいけないのか

私は昔から鳥が好きだった。
憧れに近かったんだと思う。
空が飛べるなんて羨ましい。どんな気持ちなんだろう。
私が飛行機を好きなのも納得できる。

生まれて初めて手にした命はセキセイインコだった。
どうしても飼いたいと両親に頼み込んだ。
薄い紫色の子と綺麗な空色の子、二羽迎え入れた
それぞれ、葉(よう)と空(くう)と名付けた
葉は障害があるようだった。飛べなかった。
警戒心も強かった。
それでも私の手にだけは乗ってくれた。
部屋に飛べなくても楽しいように
おもちゃをたくさん用意して
毎日ケージから出して遊んでいた。
きっと飛べる子たちより長く生きられない
そう思ってたくさん思い出を作った

ある日学校から帰るとケージの下で静かに眠っていた
立ち会えなかった。見送れなくてごめん。
初めて見た時から小さな透明の箱の中で
一羽だけ端っこでうずくまってて、
おそらく健康体ではないのだろうとわかっていた。
私が迎え入れてあげなけばならない。そう思った。
私でよかっただろうか、わからない
初めて愛した命を失う辛さを知った

空は楽しそうに飛び、きれいな声で鳴いた
初めて飛んで、
部屋を一周して私の腕に戻ってきてくれた時に
こみ上げた感動と愛しさを私は絶対忘れない
部屋で飛ばしていると
肩や頭によく乗ってきて可愛かった

それでも別れはやってくる
衰弱は目に見え、小さなケージに移して暖かくしていた
ある日ピアノのレッスンから帰ってくると、
ケージの中でこちらに来ようとしていることが分かった
最期なんだと、悟った
ケージを開けると私の手に乗り、静かに息を引き取った
待っていてくれたんだ、と思った。
泣いた。とにかく泣いた。
授業中にも思い出して静かに泣いてしまう日が続いた。

見かねた母が新しい子を迎えようと提案してくれた
愛情を注いだ分だけ失うのはつらい。もう嫌だ。
代わりにするなんてそのインコにも失礼だ
そう思って迷ったが、もう一度迎え入れることにした

レモンイエローとエメラルドグリーン、それと水色の
マーブルのものすごく綺麗な子を一羽、迎え入れた
なんだかモワモワしてる感じがして、
霧(むう)と名付けた
霧も楽しそうに飛び、いい声で鳴き、
加えて一羽で飼っていたからよく喋った。
私が好きな音楽を流すと霧もいい声で鳴いた


一週間くらい前から容体が良くなかった
おそらくもう長くはないと覚悟した

昨日、帰宅すると目に見えて弱っていた
止まり木にはいられず、下で膨らんでじっとしていた
明日までもつかも分からないと悟った

それでも空腹も眠気もやってくる
朝起きたら、もうこの世にいないかもしれない
そう思いながら目を閉じた

朝、昨日よりもさらに弱っていたが、生きてくれていた
今にも止まってしまいそうに心臓が動いている

どうして家を出なければいけないのか
どうして置いていかなくてはいけないのか

電車の中でこらえきれず静かに泣き続けた
マスクがあってよかった
涙と鼻水でくちゃくちゃだったから
途中の駅で降りて顔を整えてもう一度乗った
遅刻した

もうすぐ卒業する先輩たちのアルバムをどうするか
プレゼントをどうするか、なんて話を
笑顔でできていたはずだ。大丈夫だ。泣くな。

昼、母から一通のメッセージが届いた
私が出て行って少ししてから、息を引き取った
とのことだった
見送れなかった。なんで今私は学校にいるんだ。
トイレで静かに泣いた

「仕事の関係で今日行かなければしばらく行けないから
今から火葬に行ってくる」ともあった
帰ったらもういない
二度と会えない
"いない"という現実を突きつけられる
帰れなくて友達の家に転がり込んだ

めちゃくちゃ泣いた。
大人になってから初めて、声をあげて泣いた。
泣き疲れた。泣きすぎて頭痛い。

つらい。辛くて辛くてしかたない。でも、

朝、一目生きている姿を見せてくれて
ありがとう
13歳から23歳の今まで、一緒に過ごせてよかった

私のもとで幸せだっただろうか
学部の間は一人暮らしをしていてほとんど世話を
家族に任せてしまっていた
私に泣く資格はあるだろうか
私は毎日100%の愛情を注げていたか
10年も生きてくれていたから、
いるのが余りに当たり前になっていなかったか

10年ぶりの愛しい命との別れ
どうしたって降りかかる後悔

きっと後悔のない別れなんてない

だから、
今当たり前にそばにいてくれてる人たちに
感謝しよう。
それは当たり前なんかじゃない
すごいことなんだ
美味しいよ、ありがとうって
言葉にして伝えよう。

少しでも後悔を減らせるように

10年もの歳月の間に私が忘れかけていた
" 当たり前 " のありがたさを
思い出させてくれたんだ、ありがとう

もう絶対忘れたくない
将来の私が忘れないように、
ここに書き留めておく



最後まで読んでくれたそこのあなた、ありがとうございます。うれし涙でプールを溜めれるほどに喜んでいます。ウソです。ちょっと盛りました。 いいねもうれしいです。コメントはもっともっとも〜〜〜〜〜〜っとうれしいです❗️