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ビールは苦かったしキノコは苦手だし母さんの唐揚げはこれからもうまい

高校生の時、父さんに「味見してみる?」
と言われてビールを一口飲んでみた

............................................................あ、
この中にポリスいる?
いたら見なかったことにしてもらえるとありがたい

まあこういうことって割と多くの家庭である(?)
と思うんだけど
とにかく一口飲んでみた


苦い!!!!!!!!!まずい!!!!!!!!!


これをうまいと思って飲んでるの?意味わかんないよ。
父さんはケラケラ笑いながら
「そのうち分かるよ~」と言った。
いや、分かるときなんか来ないよ。
高校生の時の私はそう思った。

大学二年生のとき、居酒屋でバイトをしていた
ある金曜の夜、信じられないほど忙しかった
23時までの予定だったけど24時まで延長して働いた
もうクタクタだ、一刻も早く帰りたい
帰り道に裏のファミマに寄ったら、なぜか無性に
キンキンに冷えたビールが飲みたいと思った
不思議なことだが本当にそう思った
よくわからないので目についた
サッポロ黒ラベルを手に取り
それとファミチキを買って帰った

ファミチキを食べながらなぜか買ってきてしまった
ビールを開けて飲んでみる

!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?

うまい!!!!!!うますぎる!!!!!!!

労働後のビールってこんなにうまかったのか
沁みる。生き返る。
今ならサッポロのCMに出れそうだ。

それからビールが好きになった
居酒屋でもビール
焼肉屋でもビール
宅飲みでもビール
帰省したときはスーパーに売ってる
少し高いビールを1つずつ何種類も買って
父さんと飲み比べした
友達とクラフトビールのお店にも行くようになった


高校生の私へ
どうやら分かるときが来てしまったようです


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私は幼いころからキノコが苦手だった。
味も食感も匂いも苦手だ
唯一シイタケだけは味は好きだがやはり食感がダメだ

そんなこんなでキノコを避け続けて20年経とうかという
大学二年の終わりの春休み、試練がやってきた

地元の友人が一週間ほど私の家に泊まりに来ていた
私は当時部活のリーダーをやっていて
なかなか休めず、連休がなかった
それを伝えると
「一週間ほど泊まっていいなら、部活の日はいない間に代わりに家事をやっておくから帰ってきたら家でゆっくりして、休みの日に一緒に遊びに出掛けよう」
と言ってくれたので、
友人の優しさに甘えることにして
そういうことになった。

一日目の夜は私がナポリタンを作った
ナポリタン好きなんだ
なんだか懐かしい感じがする
でも小さい頃に食べたことはないんだよね
不思議だな
あ、おすすめのレシピは白ごはん.comのやつなんだ
一人暮らしの時は白ごはん.comと
山本ゆりさんのブログをよく参考にしていたな
簡単で美味しいからありがたかった
おっと、話が脱線してしまった
そうだ、
このとき実は初めて家族以外の人にご飯を作った
ちょっとドキドキしたけど
おいしいと言ってもらえて嬉しかったから
3月4日はナポリタン記念日になった

二日目は部活だった
午後帰宅するとお昼ごはんを作ってくれていて
洗濯も終わっていた
帰ったらご飯があるというのはこんなに嬉しいんだ
知らなかった
いつもの私なら帰宅して100%オレンジジュースを
1リットルがぶ飲みしてシャワーして寝て
バイトに備えているところだ
ありがたすぎる
さっさとシャワーをして、おかず何~?と聞くと
鶏と野菜を味噌マヨで炒めたやつ~と返ってきた
なにそれおいしそう
そう思って覗き込んだら
主役張りにがっつりアイツがいた


しめじ!!!!!!!!!!!私の強敵!!!!!!!

ひえ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!


そう、
友人にキノコが苦手であることを言っていなかった
でもせっかく作ってくれたのだ、残すわけにはいかない
とにかく苦手であることも伏せて食べることにした


..................................................................あれ?

ん??????????????????????

おいしいんだけど?しめじが?おいしいんだけど???

しめじがしめじしめじしてるのにおいしい.................?

なんてこった
しめじを美味しいと思う日が来るなんて。

夜ごはんの豚とトマトのコンソメ炒めにも当然のように
昼の余ったしめじが入っていたがやっぱりおいしかった

快挙だ
定時選手、苦手を一つ克服してしまったようだ


後日ルンルンで友人のレシピで作ってみた

............................................................................................................が、

なんてことだ
しめじがおいしくない
いったいどういうことなんだ

その後何度か挑戦してみたがおいしいとは思えなかった

おいしいと思えたのは
友人が作ってくれた日だけだった
すごく不思議だ
友人が作ってくれたというパワーはすごいらしい
その影響力はとても大きいのだと思った


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私がこの世で一番好きな食べ物は?と聞かれたら
間違いなく " 母さんの " 唐揚げと答える

母さんの唐揚げはいつも揚げすぎている
生のままだと怖いから、と
どうしても長く揚げてしまうらしい
カリッッッカリになってしまっている
もはや噛むとバリバリ音がなる
下手すれば口の中をケガする

でもそれがいいんだ
それが母さんの唐揚げなんだ

小学校の運動会の日のお弁当にも
中学校の部活の試合の日のお弁当にも
いつも入っていた
高校生のとき、夜ご飯が唐揚げだと
次の日のお弁当に入れてくれるから嬉しかった
センター試験の日、
せっかく作ってくれたのに緊張で一口も食べられず
帰ってきてからもっとできたはずだと
悔しくて泣きながら食べたお弁当の中にも
唐揚げは入っていた
大学生になり、
帰省した日の食卓に並ぶのも
部活を引退して燃え尽きた私に出してくれたのも
内定が決まった日に作ってくれたのも
唐揚げだった


唐揚げは母さんなりの私へのエールなのだ


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味覚って不思議だ

ビールをまずいと思っていた頃の私にはもう戻れない
苦手なはずのしめじをおいしいと思う日があった
いつしかカフェラテに砂糖を入れなくなった
お寿司にはわさびがないと物足りない

それは大人への階段を上がれたようで
うれしくもあるし
同時にどうしても大人になっていってしまう
自分を認めざるを得ないようで
少し寂しくもある


これからも味覚は変わっていってしまうのかな


でも私はこれからもずっと
どれだけ歳を重ねても
できることなら人生最後の日も
母さんの唐揚げを
あ~痛い。痛くてうまいよって言いながら
元気にバリバリ音たてて食べていたい

それでさ、
その不器用なエールを
これからも
受け止めていきたい

だから、

" 母さんの唐揚げはこれからもうまい "

これだけは変わらないって
そう思うんだ


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これ母さんには内緒にしといてくれる?

内緒にしといてくれるなら
今度ナポリタンを作りに行くよ

約束する

だから少し待ってて

じゃあ、またね

最後まで読んでくれたそこのあなた、ありがとうございます。うれし涙でプールを溜めれるほどに喜んでいます。ウソです。ちょっと盛りました。 いいねもうれしいです。コメントはもっともっとも〜〜〜〜〜〜っとうれしいです❗️