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ヒトコブラクダの“ヒトミ”が岡崎市東公園動物園にお引越ししました!

大きな体と長いまつげ、温和な表情と可愛らしい愛称で皆さんに親しまれてきたヒトコブラクダの“ヒトミ”が令和3年7月18日に岡崎市東公園動物園へお引越ししました。
“ヒトミ”は慎重派なので、輸送箱の中で長い時間過ごしてもらうためのトレーニングに時間がかかり、当初予定していた6月6日から2度の延期を経て、7月18日にお引越しをしました。7月18日は気温34度という猛暑のなか18時頃盛岡を出発し、長旅の末に明朝7時頃岡崎市東公園動物園に無事到着しました。
愛媛から岩手盛岡へ来て14年、“ヒトミ”にとっては2度目のお引越しとなりました。今回のお引越し当日までのウラ話を詳しくお話したいと思います。
当園では平成元年(1989年)の開園以来ヒトコブラクダの飼育展示をしてきました。初代のラクダはオス“ラッキー”とメス“ララ”というペアから始まり、月日が流れ当園6番目のヒトコブラクダとして、2007年3月に“ヒトミ”が仲間入りしました。これまで大きなケガや病気もなく約14年間健康に育ってくれました。
令和5年春のリニューアル開園を目指した盛岡市動物公園ZOOMOのリニューアル計画基本方針に基づき、乗馬を通じて家畜動物への理解を深め、来園者の情操教育に寄与するという目的のためにポニーの飼育展示施設を充実させることになり、それに伴いラクダの飼育展示を中止することになりました。
“ヒトミ”のお引越し先が決まり、2月中旬からお引越しに備えて普段歩くことのない通路を歩いてもらうトレーニングを始めました…が、なかなか歩いてくれず苦労しました。4月中旬に輸送箱が到着しましたが、警戒心の強い“ヒトミ”の性格もあってトレーニングはなかなか良い方向には進まず、手を変え品を変え工夫しながら一進一退の毎日でした。

ヒトミ1

※輸送箱搬入作業

ヒトミ2

※頑張って通路を歩く“ヒトミ”


警戒心が強いながらも“ヒトミ”は1度できるとしっかりと学習し次からは、すんなりできることが多く感心しました。4月下旬には通路をスムースに歩くようになり、輸送箱に入るまであと少し!!と思ったのですが、輸送箱の手前にごはんをあげるためのカゴを付けたり、“ヒトミ”が気にしている輸送箱内の光漏れを塞いだり、音にとても敏感な“ヒトミ”のために馬栓棒をスムースに通すことができるようにガイドを付けたりと、トレーニングをしていくうちに手直しが必要な場所が出てきて、その工事をする度に“ヒトミ”は警戒し、輸送箱に入って長い時間過ごしてもらうまでの工程が後退してしまいました。
輸送箱に入ってもらうためのトレーニングを行う時に使うおやつをサツマイモ、ニンジン、リンゴ、バナナと色々試したのですが、リンゴの食いつきが1番良く、ご褒美としてリンゴを使っていました。他には、箱に入ってもらうまでの誘導方法を工夫し、たくさん試しました。最初は輸送箱の中にリンゴを転々と置き、入ってもらうよう誘導しましたが1歩入って1つ食べるとすぐに後ずさり。それが続き、1歩しか初めは入ってくれませんでした。これではだめだと思い、モミジの葉っぱが付いた長い枝を“ヒトミ”に差し出すと1歩しか入ってくれていなかった“ヒトミ”が2歩、3歩と前進してくれました。その調子!!と思いましたが、その葉っぱを食べると輸送箱にはとどまってくれず後ずさり。何とかとどまってもらうために、1人では手が足りず2人でモミジを持ったりササを持ったりと試行錯誤の日々でした。

ヒトミ3

ヒトミ4

ヒトミ5

※リンゴを棒にさして呼ぶ様子(この作戦は失敗でした)
 青草で呼ぶのは成功でしたが、日によって好まない日も…
 3枚目はリンゴ・ニンジン・サツマイモを使って輸送箱に入ってもらっている様子


また、“ヒトミ”はスタッフのことを確実に見分けていたため、警戒心を解くためにトレーニングに参加するスタッフは固定していました。

ヒトミ6

ヒトミ7

※やっと輸送箱に入りコンテナから食べてくれました


お引越し当日は、何が起こるか分からないためスタッフ皆ドキドキでした。が、その心配をよそに、“ヒトミ”はいつも通りすんなりと輸送箱に入り、順調に後ろの扉も閉めることができました。

ヒトミ8

※“ヒトミ”が輸送箱に入って扉を閉めたりの作業中


少し“ヒトミ”が興奮する場面もありましたが、怒りながらも乾草やリンゴを食べ、おりこうさんにしてくれていました。
が、ハプニングが…
“ヒトミ”の入った輸送箱がトラックよりも重たくてタイヤが1箇所浮きそうになってしまったのです。そこで、飼育職員だけではなく食堂や売店、券売や総務管理…その日出勤していた職員全員に集まってもらい、みんなで荷台に乗って重しになることでどうにか無事に積み込むことができました。このような事態は滅多にないことなのですが、今回の積み込みはリニューアル工事の関係もあって狭いスペースで行ったため輸送業者さんには何かと苦労をかけてしまいました…が、さすがプロ!というお仕事に私たちも興味深々、勉強になりました。滅多にないハプニングがあったからこそ、“ヒトミ”の存在の重みを荷台で直に感じながら職員総出で積み込みを手伝い、そしてお見送りできたことは“ヒトミ”にとっても職員にとっても大切な思い出となりました。

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※みんなで荷台に乗っている様子


無事、トラックに乗せることができてやっと一安心です。1度だけ、吊る際にバランスをとるのが難しかったのか“ヒトミ”が座り込んでしまった時は「あれ?腰を抜かした?!大丈夫かな」と心配しましたが、トラックに乗ると立ち上がり反芻を始めたのでこれもまた一安心しました。

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※トラックに乗り座っている“ヒトミ”


2月から始まりずっと“ヒトミ”に関わってきてうまくいかないトレーニング、たまに出る“ヒトミ”の不安げな顔、ストレスになっているのではないかと心配に思う時もありましたが、毎日頑張ってこっちに来ようとしている姿を見ていると私も毎日のトレーニングを頑張ろう、どうにか“ヒトミ”が喜ぶおやつを用意しよう、どうしたら“ヒトミ”が前進してくれるのかたくさん考え、毎日頑張る“ヒトミ”と一緒に成長することができました。“ひーさん”本当にありがとう!
 早速、岡崎市東公園動物園では、たくさん可愛がってもらっているようでうれしいです。
徐々に“ヒトミ”らしさも出てきているようで、楽しそうな動画を目にすると嬉しくなります。もっともっとたくさんの人たちに愛されますように。

ヒトミ11

こうして開園以来32年間続いてきた当園のヒトコブラクダ飼育展示は終了となりました。“ヒトミ”をはじめ、歴代のラクダ達を可愛がって下さり本当にありがとうございました。
岡崎市東公園動物園で新しい生活を始めた“ヒトミ”と、リニューアルへ向かう盛岡市動物公園ZOOMOの応援を引き続きお願いします。

ヒトコブラクダのお引越しプロジェクト“ヒトミ”のトレーニング担当 唐芳