グレビーシマウマの“キララ” ~盛岡での暮らしと闘病~
グレビーシマウマのメスの“キララ”が8月25日に亡くなりました。担当者としてこれまで“キララ”を応援していただいた皆様に感謝をお伝えするとともに、“キララ”を偲び盛岡での暮らしを振り返りたいと思います。
“キララ”は2014年10月に4歳で京都市動物園より来園しました。グレビーシマウマは、細かく美しい縞模様があります。近年開発による生息地の破壊や、乱獲等で個体数が減少し、シマウマの中でも絶滅の危機に瀕しています。国内では8園で20頭を飼育していますが、盛岡でも繁殖を推進するため、2012年より飼育しているオスの“ラガー”のパートナーとして選ばれました。
来園した日を思い返すと、京都~盛岡間の長旅にもかかわらず、とても落ち着いており、室内に収容した後すぐに採餌があり安心したのを覚えています。あまり物怖じしない穏やか性格だったため、新しい環境にもすぐに慣れ、運動場ではダチョウやシタツンガとも仲良く過ごすことができました。
※搬入時の様子
※収容直後の様子
しかしオスの“ラガー”との同居の際には細心の注意を払いました。そもそもオスはなわばり意識が強く、“ラガー”は“キララ”とは打って変わってやんちゃな性格だったからです。万が一にも“ラガー”が”キララ”に対し攻撃したり、追い回されたりして、“キララ”がパニックになりケガをしないかなど様々な状況を想定し緊張感を持って同居させました。その結果、こちらの思いとは裏腹に2頭の相性はバッチリでした。
※キララ(上)とラガー(下)同居の様子
その後、発情に合わせて交尾も成功し、2018年には待望のオスの子“ラッキー”が生まれ、”‟キララ”は初めて母親となりました。“ラッキー”は2年間盛岡で過ごしたのち、昨年、横浜市野毛山動物園のメス“ココロ”のパートナーとしてお引越ししました。“ラッキー”はそろそろ大人になる時期なので、近いうちに2世が誕生することを期待しています。
※“キララ”と生まれてすぐの“ラッキー”
“キララ”は2014年に飼育を開始してからしばらくは大きな病気やケガはなく、健康に過ごしてきましたが、昨年の5月に疝痛(腹痛)による食欲不振や便秘などの症状が見られ、今年に入ってからは同様の発症を繰り返すようになりました。
8月に再び疝痛の症状が見られた際は、食欲不振により体力が落ちてしまわないよう、様々な嗜好性の良い食べ物を試しながら、投薬治療や原因を詳しく調べるために、麻酔下での内視鏡(胃カメラ)検査などを行いました。検査結果では胃粘膜の異常が見られた他、血液検査では腎臓や肝臓の数値に異常が認められました。疝痛の発症要因は様々あり、“キララ”についてもはっきりした原因はわからなかったのですが、運動不足やストレスも引き金になった可能性がありました。
※麻酔下で検査と治療をする様子
さらに8月21日と24日には麻酔下での点滴治療を行い、その後は度々麻酔をかけることに対する“キララ”の負担も考え、麻酔をかけなくても点滴ができるよう、あらかじめ留置針(点滴用の針)を固定しておき点滴治療を続ける予定でしたが、翌25日朝5時半ごろに様態が急変し、突然横に倒れ、その後死亡を確認しました。
※留置針から点滴を試みる様子
解剖の結果、腸の動きが低下したことや脱水などが引き金となり、硬くなった食渣(餌の塊)による腸閉塞が起き、その結果、結腸破裂を起こしていたことが分かりました。
シマウマの11歳という年齢は飼育下ではまだ寿命とは言えず、飼育担当者として、再び“キララ”の元気な姿を皆さんにご覧いただくことができず、残念な結果に終わってしまったことに悔しい気持ちで一杯です。
治療のご報告などに対し皆様から応援を頂いていました。また亡くなった後もたくさんのお悔やみのお言葉を頂戴しました。“キララ”が本当に多くの皆様に可愛がっていただいたことを改めて感じるとともに、これまで応援をして頂いた皆様に心からお礼申し上げます。
※キララの献花台
今後オスの“ラガー”に対しては、“キララ”の死から考察されたことを活かし、飼育方法(給餌方法や運動不足の解消など)を見直すとともに、ハズバンダリートレーニングを取り入れることで、健康診断や定期的な採血を行い、病気を早期発見・早期治療ができるように努めていきたいと思います。
※“ラガー”のトレーニングの様子(棒の先に鼻先をつける練習)
これまで “キララ”を可愛がっていただき本当にありがとうございました。
グレビーシマウマ担当 川目光明