見出し画像

結局のところ、「日本酒版ソムリエ」と言われちゃあ敵わんのですよ。

今回は日本酒に興味がある人は聞いたことがあるかも知れない資格、唎酒師について。

度々ネット上で色んな意見が飛び交いますが、たまにはこれに対してまとめて考えてみたいと思いますよ

そもそも唎酒師とは

日本酒に関わる資格の中で、最も有名な資格
唎酒師

日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が認定する民間資格で、設立からおよそ30年経った今現在では、資格取得経験者は延べ4万5千人にも上るようです。ただし、年会費を払っていて資格を保有しているとされる人数は、9千人弱になっていますが。
唎酒師の外国語版、「国際唎酒師」の資格取得人数を含めても、現在の資格保有人数はおよそ1万2千人程になります。

爽酒、薫酒、醇酒、熟酒というような4タイプ分類は、このSSIが発案のものになります。日本酒を置いている飲食店ではこれを活用してお酒を分類しているところもありますね。

唎酒師の資格としては、専門的な知識やテイスティング能力は基本的な範疇に留め、あくまで提供者として日本酒をお客様に分かりやすく伝えられること、という点をかなり重視していると思います。お客さんそれぞれに合った適切なサービスと提供が出来る事は、やっぱり重要ですものね。

あまり知られていないですが、唎酒師の上位資格もいくつか存在しています。
またここからは、日本酒だけでなく焼酎も範囲になってきます。

教育系資格の「日本酒学講師
テイスティング系資格の「酒匠(さかしょう)
こちらは現在の認定者数はそれぞれ350人前後

さらに、酒匠の上位、唎酒師の最上位資格として
SSI研究室専属テイスター」があります。
こちらは70人程。

上の2つは講習会が年に1回しか無い事、そして専属テイスターは酒匠を取得した上で、更に年10回開催のトレーニングセミナーに5回以上参加する必要があるため、取得のための心理的・金銭的ハードルもかなり高いものではないかと思います。
専属テイスター取得までは最短で行ってもおよそ30万円が必要です。なかなか勇気が必要な金額かもしれません。

ちなみに専属テイスター認定者は公式HPにて氏名が公表されています。ここに掲載されると、「辿り着いた感」はありますよね。


唎酒師に対抗する資格

そんな中、ワインの資格「ソムリエ」を認定している日本ソムリエ協会(JSA)が2017年に日本酒の資格「SAKE DIPLOMA」を立ち上げました。

ソムリエという国際的にも認知された資格を扱うJSAが日本酒の資格を認定する、しかもその難易度が唎酒師の比では無く難しい、ということで、現在最も注目されている日本酒の資格といってもいいでしょうね。
日本酒だけでなく、焼酎の知識やテイスティングも求められ、日本の酒類への幅広い理解が求められるものになります。

昨年までの試験で、合格者は延べ3300人程。
日本酒関係者だけでなくワイン関係者も受験されているようです。
年々難易度も少しづつ上がっているとの噂もあり、今後より価値のある資格になっていくでしょうね。

こちらはソムリエという世界共通の資格の観点からワインと同じような視点で日本酒を見ていて、酒米の系譜やその生産地、日本酒の香りの成分、テイスティングの評価など、「世界標準の価値観で専門的な知識とテイスティング能力を有している」ことを重視している資格かと思います。

提供者目線ももちろんありますが、唎酒師とは立ち位置が違う資格であることは間違いないでしょう。

私自身はこの資格を受験していないので正確なことは言えませんが、酒匠の難易度に近いのでは。知識面での深さはSAKE  DIPLOMAが、テイスティング面では酒匠の方が難しいのではないかなと思います。

この他にも、提供者向けには
世界最大ワイン教育機関WSET(Wine & Spilit Education Trust)が、日本酒講座「WSET SAKE」を、
ジャパン・サケ・アソシエーション(JSA)が「サケ・エキスパート」を。
また酒造関係者向けには
酒類総合研究所が「清酒専門評価者」を認定しています。

資格の認知度の問題

様々な機関が日本酒に関する資格認定を行っていますが、認知度で言えばSSIの唎酒師が一般的にもどうにか広がっている方で、次いで日本酒関係者的にはSAKE DIPLOMAが続く、といったところでしょうか。

まあでも、唎酒師しか知らない方がほとんどでしょう。
むしろ知っていたらすごい、くらい。

それほどまで、日本酒に関しての資格は認知度が非常に低いように思います。
更には、唎酒師のレベルを嘲笑うような声も聞かれますね。
試験が簡単過ぎるとか、大したことないとか、そもそもSSIがどうとか。

こういった批判的な意見を発する方々って大体は無視してもいいようなものではあると思いますけれど。

これに対してワインだと、ソムリエの知名度や権威もかなりあるのではないでしょうか。
「ソムリエ」という言葉が表すイメージや能力について、比較的多くの方が共通の認識を持っているものと思います。
それはどこから来たのか。


最大の要因はやはりメディア露出の量なのだろうと思います。

コミックやドラマでは90年代に稲垣吾郎さんが主演の「ソムリエ」、00年代では本場フランスでもヒットを飛ばした「神の雫」など、ソムリエという資格・仕事にフォーカスを当てた作品が注目を浴びています。そういった一般大衆にソムリエという言葉やイメージを植え付けるような作品が度々ワインの世界には登場していますね。

これが日本酒では。
ドラマ化もされた「夏子の酒」など日本酒を取り上げる作品はあっても、「唎酒師」に注目した作品は無い。また最近日本酒に特化した漫画「いっぽん!」は途中で連載が止まる状況。
一般の方々が「唎酒師」という言葉そのものに触れる機会が全く無いと言っても過言では無いでしょう。

これ、比べてみるとかなり日本酒は不利ですよね。
「この人は日本酒に詳しい」と明確に示すものがそもそも認知もされていないんです。これじゃあ資格を保有していても価値を感じにくいですし、マニアックな素人さんから下に見られることに繋がってしまうと思うのです。

現状では、お酒に詳しいひと=ソムリエ
という言葉のイメージかな、と。
それでは日本酒やさんとしては敵わんのですよね。

これから

海外から入ってきたものが大好きな日本人には、日本古来のものであり
映えない×美味しくない×イメージ悪い
の三重苦がある日本酒はあまり刺さらないんですよね

グルメトレンドを引っ張るdanchuさんも定期的に日本酒特集を作っていますが、その購買層はどういったところなのでしょう。
既に日本酒が好きな人以外に届いているでしょうか

どちらにせよ、日本酒のイメージを変えられるような働きをしないといけませんよね。
映える(かわいい)×美味しい×20代でも当たり前に飲んでる
みたいな。


TwitterやInstagramなどで頑張って活動している方もいらっしゃいますし、まずは興味を持つ人を増やさないことには始まりませんので。


あと個人的な意見ですが
「有資格者のいる店」リスト
とか作って欲しいですね

「日本酒 新宿」などで検索したときに、付近にある有資格者のお店が表示されたり、みたいなの。
どうでしょうか。
お店を探すときに、いっぱいあってよく分からない、ってよりは、この中ならどれを選んでも安心、っていうものが出来ると便利ですよね。


そんな風にして、日本酒を飲むなら・買うならこの店が安心だね、みたいな雰囲気が醸成されていくといいなって思いますよ。


唎酒師って言葉が、ソムリエに負けないような権威あるものになって欲しいですね。

ぜひフォローやスキもよろしくどうぞ。サポート頂いた分は今後の研究活動費として運用致します。