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忍殺TRPGリプレイ【ライノ・イン・マイ・マインド】

はじめに

ドーモ、シニゾコナイザーと申します。今回は海中劣=サンのシナリオ、【ニンジャになった日】をプレイさせていただいたので、リプレイを書かせていただきたいと思います。

まずはダイスを振ってモータルPCを作成しました。

◆シゲタロ(種別:モータル)  DKK:0  
カラテ    3  体力  3 
ニューロン  3  精神力 3 
ワザマエ   1  脚力  2/N
ジツ     0  万札   0

攻撃/射撃/機先/電脳  3/1/3/3
回避/精密/側転/発動  3/1/1/0
即応ダイス:5  緊急回避ダイス:0

◇装備や特記事項
なし

せっかくなのでオプションから⑥の『ただのヨタモノ』を選びました。

本編

シーン1

「アーッ!ナメてんのかコラーッ!」
「ウッセコラ!シネッコラ!」

貪婪の都ネオサイタマの一角、場末の酒場で2人の酔漢が殴り合っていた。

「ノコータ!ノコータ!」

全く無関係の3人目がレフェリーを気取っているが、泥酔者の目で勝負の趨勢など認識できるハズもなく、適当に喚いているだけだ。

「アア…クソッ…痛ぇな畜生」

殴り合う酔漢の片方、シゲタロが呟く。
先程からなぜ喧嘩しているのか思い出そうとしているのだが、酔いと打撃のダメージが響いて思考がまとまらない。
思い出せないという事は大した事ではないのだろう、と迷いを振り捨て拳を握る。
大した理由でないのなら喧嘩する必要もないのでは、という考えには至らないのだ。

「これで…終わりだァーッ!」
「行くぞッオラー!」

3D6で〔6,5,4〕=成功数3

【体力】1→0

シゲタロの繰り出した一撃は、偶然顎にヒットし相手を昏倒せしめた。
彼の血中を、アドレナリンと勝利の歓喜が駆け巡る。

「ハッハァー!見たかオラーッ!」

見物していた数名がまばらな歓声を上げる中、シゲタロは笑いながら倒れ込んだ。

「ああっ…クソ…力が入らねぇ…」

シーン2

「やってるな、兄弟」

馴れ馴れしげな呼びかけが聞こえ、寝転んだまま声の方を向く。
そこにはピンクの小さなサイが佇んでいた。

「やあミゲル!ハハ、どうだ!やってやった!」
「甘いな兄弟。ザンシンを忘れるな。感じ取るのだ。
ネイチャー…ゼン…そういったものをな」

1D6で〔2〕=成功数0

シゲタロは胡乱な目つきで頷く。
何やら分からないが、含蓄がある。

「ウム…ウム…そうだな…」

この曖昧な友人は、いつからか彼のニューロンに住み着くようになった。
こうして折に触れてインストラクションを授けてくれるのだ。

シーン3

「お~う、シゲの野郎はいるかァ!」

突然、くたびれた酒場に似合わぬ蛮声が響く。
シゲタロは条件反射で立ち上がり、咄嗟に頭を抱えた。

「ヤ、ヤバいよ…ガンオカ=サンだ!」

ガンオカは無慈悲な取り立てで一帯に名が知られている『ブラッディカクタス・ヤクザクラン』のワカガシラである。

シゲタロは彼にカネを借りてからスノーマン・エフェクトめいて借金を膨れさせ、もはや身動きの取れない状態であった。

「ど、どうしよう…逃げ道、そうだ!逃げ道を探さないと…」

3D6で〔1,3,3〕=成功数0

だがまだ酔いもダメージも消えていない。
視界がうまく定まらず、逃げ道どころか足元すら覚束ない。

「お~いたいたァ!」

シゲタロの姿を見つけたガンオカが、ゆっくりと近づいてくる。

「アッ…ガンオカ=サン…」

シゲタロの方からも近づこうとして転倒し、ガンオカの胸元に縋りつく。

「お~う、だいぶ酔ってんなァ。
よしよし、今スッキリさしてやっから…よ!」

鳩尾に強烈な膝蹴りが突き刺さり、シゲタロはうずくまって吐く。

「オゴッ…オゴゴッ…」
「ウゲッ吐きやがった!汚ねぇ!」

ガンオカの舎弟が飛び退く。

「お前さ、俺いつも言ってるよな?
借りたものは返すのが常識だってよ」

軽く蹴って仰向けにさせ、腹を思い切り踏みつけた。

「アバッ…スミマセン…スミマセン…」

シゲタロはうわ言のように謝り続けながら、ピンクのサイを探していた。

「どこだァー…いるんだろミゲル…出てこいよォ…」

「は?何言ってんすかコイツ?」
「コイツはな、頭ん中に妖精のお友達を飼ってんのさ」

シゲタロは狂信者のように振る舞いつつも、脳の冷静な部分が出した無慈悲な結論を理解していた。

(分かってただろ…あんなもの安酒のドラッグ割りが生み出した幻影だ。
酔いが覚めたら露と消える、脆いタルパだ)

不意にガンオカの足に抱きつき、一心不乱に懇願する。

「許してください…今日は一銭も持ってなくて…明日、明日には…」

一瞬でも我に返ったら絶望に押しつぶされる。
その確信が、シゲタロにブザマな命乞いを強いていた。

ガンオカは蛆虫でも見るような目つきで、シゲタロを振り払う。

「…お前さ。もういいわ」

シーン4

「エッ?も、もういいって…」

「実は死体を高く買い取ってくれる先を見つけてさ。
もうお前に返済してもらう必要はなくなったんだわ」

懐からチャカ・ガンを取り出し、シゲタロに向ける。

「アイエッ、待っ…」

躊躇なく引き金が引かれ、弾丸はシゲタロのレバーを貫通した。

「アバーッ!!」

「…ア、アイエエエ!!」

周囲の酔客たちは事ここに至ってようやく状況を理解したらしく、我先にと逃げ出した。

「さ、トドメはお前がやるんだ」
「エッ」

ガンオカは舎弟にチャカ・ガンを握らせ、シゲタロの頭部に狙いを定めさせる。

「あの…でも…」

「どうせこの先ヤクザとして生きていくなら、いずれは殺る事になるんだ。
ヤクザは人殺して一人前になんだからよ!」

「それは…そうかもしんないスけど…」

「いい加減根性見せろや!
人の1人も殺せねえ玉無しを置いとくほど、ウチの事務所は広くねえぞ!」

震える銃口を覗き込むシゲタロに、2人のやり取りは聞こえない。

(なんだこりゃ。撃たれてやがる。誰が?俺がか?ナンデ?
どうして俺はこんな所で弾喰らって倒れてんだ?)

なぜこんな事になったのか、必死で記憶の糸を手繰り寄せるが、その糸はどこにも繋がっていない。
酒とドラッグで擦り切れたニューロンからは、過去の記憶などとうに消え去っていた。

「よう。やってるな、兄弟」

声が聞こえる。
シゲタロの口から、乾いた笑いと血塗られた嗚咽が同時に漏れ出た。

「…何で今になって出てきたんだ、オバケがよ」
「オバケ?傷つくぜ兄弟。俺はお前を助けにきたってのによ」

ピンクのミニサイが、ヤクザの足をすり抜けて近づいてくる。

「ハッ…助ける?そりゃいい、そりゃいいや…
どうやらとことんおめでたく出来てるらしいな、俺の脳みそは」

最後の最後に、妄想の小動物に助けてもらおうとしているとは。

「おい、なんか勘違いしてないか?
俺はお前じゃないんだぜ、これからそうなるけどな」
「は…あ?ミゲル、お前何言って…」

サイの幻影はどんどんシゲタロに近づいてゆき、最後に頭の中へ入り込んできた。

『ドーモ、シゲタロ=サン。エラスモ・ニンジャです。
今日からお前が俺だ。お前がニンジャだ』

サイの声は脳内を反響しながら広がり、際限なく増幅していく。
頭が割れそうな痛みに、銃創がある事も忘れてのたうち回る。

「アバーッ!アババーッ!!」

その頃ちょうどガンオカの舎弟が自己正当化を完了した。

「死んで社会に役立て!このヤク中が!!」

舎弟の放った弾丸は狙いあやまたず直進し…床に穴を開けた。

「は?」

シゲタロの姿がない。

「ドーモ」

背後からの声。振り向いた舎弟の脳天に、十字の金属片が突き刺さる。
スリケンだ。

「ニン…」

ガンオカは恐怖のあまり言葉に詰まり、恐る恐る振り返った。

「あーそうか。アイサツすんのはニンジャ相手だけでいいのか。
分かってきたぞ」

一応ジツも振ります。
1D6〔4〕=成功数1 【ジツ】1
1D6〔4〕=成功数1 4:ムテキ・アティチュード

そこに立っていたのは、ドス黒い装束で全身を覆った巨躯のニンジャ。

◆名も無きニンジャ(種別:ニンジャ)  DKK:0  名声:0  所属:ストリート
カラテ    3  体力  3 
ニューロン  3  精神力 3 
ワザマエ   1  脚力  2/N
ジツ     1  万札   0

攻撃/射撃/機先/電脳  3/1/3/3
回避/精密/側転/発動  3/1/1/4
即応ダイス:5  緊急回避ダイス:0

◇装備や特記事項
☆ムテキ・アティチュード(LV1)

「ク…クソッ!どうなってやがる、こんなッ…」

ガンオカはNRSを薬物によって抑え込み、舎弟の死体からチャカ・ガンを奪い取って構える。

「殺すぞッコラー!!」

「そんなオモチャで俺を殺せると思ってんのかァ!?
俺は無敵のニンジャ様だぞ!!」

次から次へと溢れ出てくる衝動を抑え、まずは1枚のスリケンを投じる!

1D6〔6〕=成功数1 

「アバッ」

その一発でガンオカの首は胴体と泣き別れ、肉塊と化した。

「…ア?」

ニンジャは自分の、スリケンを放った方の手を見た。

(ちょっと待ってくれよ。なんだよそれ。これだけの事で…)

一生抗う事のできないシステムの壁のように感じていたヤクザは、ただのモータルだった。
ニンジャ…つまり自分の気まぐれひとつで生死を左右できる、無力な生贄に過ぎなかった。

「……ウオオオオオオッ!!」

行き場を失ったエネルギーが彼の身体を駆け巡り、無為な破壊を行わせた。
椅子も机も酒瓶も、なにもかもが気に食わない。
とにかく全て目の前から消したかった。

彼が気付いた時には、酒場は更地と化していた。

(…全て茶番だ。ヤクザもニンジャも…全部猿芝居じゃねえか。
なんなんだよこれ、どうすればいいんだよ)

鏡の破片を拾い上げ、今の自分の姿を確かめる。
かつてのみすぼらしい体格とは比べ物にならない、筋肉の鎧。
いつの間にか全身を覆っていた、刺々しい装甲。
双眸が放つ、非人間的な光。

(誰だこれ…俺はどこだ?
…違う、アイツは最初から俺の側にいた。
気付いてなかっただけだ…)

そこまで考えたところで、気配を感じて振り向く。

(気配なんぞ感知できるようになっちまった。
俺に必要なのか?こんな御大層な力が…)

気配の主は覆面…否、メンポを付けボディアーマーを着用した男だった。
カタナを交差させたような紋章が、あちこちに付いている。

「ほう、まだいたか。手間が省けたわ。
ドーモ、トゥーホットです。
貴様、『なりたて』らしいが…運がいいな。ソウカイヤに入れるチャンスを与えられるとは」

「はぁ、ドーモ…え?
な、なんて言ったんですか?もう一回お願いします」

「ソウカイヤに入れてやろうと言うのだ!」

「ソウカイヤ…?」

聞いた名だ。
だが何の組織だったか思い出しかねていた。

「フン、知らん貴様に教えてやろう。
ソウカイヤこそネオサイタマの支配者!
あらゆる権力とカネを従える闇の王なのだ!」

大仰な言い方だが、内容に誇張は一切ない。

「ええと…そこに俺を入れてくれると?
でも、それってまるでヤク…」

口にした途端、脳裏に蘇る記憶。

「クロスカタナのエンブレムは…ソウカイヤ!
裏社会を牛耳るヤクザの親玉!」

彼はあちこちで借金を作る中で、ヤクザの内部事情にも少しは詳しくなっていた。

「なんだ、分かっておるではないか。
さぁ、お前もその一員となる栄誉を受けろ」

「…殺す」

「エ?」

「ヤクザ…ヤクザ!その響きを聞くだけで吐き気がする…
全部お前らのせいだ…ドラッグも借金も…」

これまでの人生からしてヤクザを恨むのも無理ない話ではあるが、彼の場合はもっとシンプルだ。
要するにドラッグのキメすぎで、ヤクザに虐げられた記憶しか残っていないのである。

「殺してやる…殺してやるッ…!」

トゥーホットは溜め息をつき、カラテを構える。
その両手に炎が漲っている。

「貴様も元底辺労働者とやらか?
最近はソウカイヤの偉大さを理解できぬ愚か者が多すぎる…
よかろう、少し教育してやる」

「…やっと分かった、この力。
全てのヤクザを滅ぼすための天啓だ!そうだろ、ミゲル!!
アッヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

メンポを着けていても分かるほど、彼の表情は歪んでいた。

これが後に『ヤクザスレイヤー』と恐れられる名も無きニンジャの、最初のイクサであった。

【おわり】

最後に

背負う物が無いキャラが結構好きなので、ヨタモノとイマジナリーフレンドのコンビで進めました。まあイマジナリーではなかったんですけど。
フジキドのような悲しみを背負った憎悪ではなく、『ヤクザにボコられた記憶ぐらいしか覚えてない』という空虚な憎しみも好きですね。
シナリオの構成のおかげで、かなり自由にニンジャのオリジンを組み立てる事ができたので、ありがたかったです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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