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【ドラフト】ぞんびのリミテッド大考察『エルドレインの森(序文)』

こんにちは、ぞんびです。

Into the wild!

久々の記事となります。ついにスタンダード新パックの登場ですね。
ローテーションシステムの変更によりスタンダードの環境は大変動がないものと思われますが、リミテッドは毎回新鮮な体験となりますね。特に前回指輪物語はモダン級のエキスパンションであったため、それとはずいぶん遊び応えが変わってくるものになると期待しています。

今回も『リミテッド大考察』シリーズとして、エキスパンション全体を踏まえたカード評価をやっていこうと思います。全8記事を予定しています。今回もボーナスシートとして「おとぎ話枠」が存在するため記事が1個多いですね。
まず最初となるこの記事ではエルドレインの森(以下WOE)全体の能力や特徴や気づいたこと、そのそれぞれの分析や考察をしていこうと思います。この記事シリーズの目的である、『環境分析』をする際のとっかかりを可能な限り並べようということですね。

カード個別評価白編はこちら
カード個別評価青編はこちら
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カード個別評価赤編はこちら
カード個別評価緑編はこちら
カード個別評価多色+その他編はこちら
カード個別評価おとぎ話編はこちら



前提事項
以下、この記事シリーズの前提やテーマとなる部分となります。
・MTGAでのプレミアドラフトを前提としています。
・BO1、対人ドラフトとなるためBO3やクイックドラフトとはいくつか話が変わります。
・実際にエルドレインの森のドラフトが始まる前にカードリストやギミックと向き合い『こうなるだろう』『これらはどうだろうか』と予測交じりの考察をしていきます。
・この記事での用語として以下を使っています
  専門性:カードの強さが、特定のギミックに強く依存しており、そのギミックを強く補強していること。そのギミックに関わるカードを多くとレア取るほど強くなったり逆に単独で存在していても弱いことなどを示す時等に使用。
  越境性:カードが複数のギミック/アーキタイプを跨ってサポートしていること。これが高いほど、『どのようなアーキタイプやデッキを目指していても採用しやすいカード』と言え特にピックの序盤に取りやすく、取っても後続の選択肢が狭くなりづらいです。
・この記事をまず『序文』として、環境全体の分析やギミックの振り返りなどをしていきます。その後、各色のカード評価を個別に行っていきます。環境全体観や各ギミックの影響を先に把握し、存在するアーキタイプなどのイメージを固めないと正確なカード評価につながらないからですね。

1:エルドレインの森全体について


今回初再訪となる次元ですね。前回は「5色の宮廷と騎士たち」にフォーカスされており、「単色」にフューチャーされた次元でした。また、大人気メカニズムとなった食物の初登場もここですね。同じく「出来事」も強い印象を残しました。
今回は話の展開により宮廷が崩壊し、人間の世界以外に目を向けた形になっています。2色の組み合わせ10個に対して「童話」がモチーフとしてあてられており、それらのおかげでセット全体のカード群もおとぎ話っぽく、そしてどこかおどろおどろしい雰囲気になってますね。
また、今回はボーナスシート枠として「おとぎ話」カード群が追加されています。過去の印象深いエンチャントが収録されていますね。とはいえセット全体がエンチャントに傾いているわけではないことは注意です。


2:新規メカニズム『役割』

今回の目玉といえるメカニズムかもしれません。かなりの枚数が用意されており、セット全体の1割以上が役割を持っていますね。

「オーラ・トークン」という新しいトークンです。全6種(統率者セット用に追加で1種)の、固有の能力を持ったオーラ群ですね。トークンであること以外はほぼ通常のオーラと同じで、様々なカードの効果によってクリーチャーにつけられた状態で生成されます。
概ねどれも+1修正相当の効果があり、+1カウンターを置くカードと読み替えてもいいでしょう。更に祝祭や協約など様々なメカニズムやアーキタイプにも関連しており、今回最重要な能力だと思っています。
注意点としては、「オーナーが同じ役割は、一つのクリーチャーに一つしかつけれない」ということです。自分の一つのクリーチャーに役割を二個持たせると、”最新のもの”が残り、他は墓地に送られます。そのため、役割をつけるカードに対してクリーチャーの数はちゃんと確保しておく必要があるといえますね。更に+1カウンターと違って重複できないということなのでクリーチャーのサイズは思ったより膨れ上がらない(上限がある)といえますね。環境全体のサイズ感に影響しています。
役割はそれぞれ以下です。

唯一相手につける役割であり、疑似除去です。能力は残らないものの、相手から戦闘力を大きく奪えますね。相手はこれに役割を重複させることが可能だったり、能力で大きくなるタイプのクリーチャーには効果が薄いのは気を付けておきましょう。
テクニックとして「相手が呪われし者がついたクリーチャーを戦闘で使い捨てようとしたとき」に呪われし者を生贄コストにあてる動きがあります。4/4相手に3/3(呪われ中)が突っ込んできたときなどですね。こういう動きを相手に誘発させることもできるかもしれません。
青に偏って多いです


最もシンプルな強化役割です。トランプルがついてくれますね。
緑及び緑を含む多色に明確に多くなっています。
今回の緑はサイズ感が微妙ではあるのですが、それでもサイズで攻めるデッキでは頼もしい能力ですね。インスタントでつける手段も2種類ありよく見るしダメージ計算狂わされやすいでしょう。


強めの強化役割です。強化+護法の組み合わせは相性がいいですね。
軽くつけれるカードもあり、序盤のテンポ感をかなりよくしてくれる役割であると期待しています。緑と白に2枚ずつですね。


ドローの質を向上してくれる役割です。
序盤につけれるとシンプルに強いためか、レアを除いて気軽につけるのは難しくなってますね。とはいえ謙虚な賢者は使いやすく、見る機会自体はあると思います。白と青に2枚ずつです。


修正のみを場にある間は与えて、墓地に置かれたときに追加の1点ライフロスを発生させる、周りとはちょっと毛色が違う役割ですね。
黒に極端に多く、というか黒はデメリットである「自分を呪う」カード以外全部ひねくれ者ですね。赤黒の「ネズミ」と白黒の「墓地利用」両方と相性がいい能力であるため意識されてると思います。色全体として黒に攻撃的な印象を持つことにもなりました。役割の中では唯一、重ね掛けに意味があるのも面白いですね。
ネズミの影響で赤にも3枚あります。全体で最も多い役割ですね


若き英雄の名前の通り育っていく役割です。タフネス4にまでしか到達できないものの、リミテッドにおいては十分なサイズだともいえます。
これ自体にはカウンターを置く能力しかないため、十分カウンター置いた後に張り替えることで「重ね掛け」が実質可能であったり、協約コストに使いやすいのは面白い部分ですね。
白に2枚、赤に3枚ありますが4マナだったり、死亡誘発だったり、クリーチャーが死亡した後にしかつけれなかったりと「再序盤から若き英雄で殴ってごり押す」ということはほぼできないことには注意ですね。そのため相手もそこそこ大きいクリーチャーが用意できているころで、カウンター2個以上乗せるのは難しいかもしれません。
若き英雄を多用するのであれば、実は3/3より3/2のほうが成長幅が大きいみたいなのはちょっと意識してもいいかもしれませんね。特に先制を持つネズミ捕りの見習いはかなり相性がいいです。

3:新規メカニズム『協約』

今回の新規メカニズムの二つ目は「協約」です。おとぎ話によくあるような「何かを差し出して力を得る」タイプの能力ですね。
唱えるときに「アーティファクト、エンチャント、トークン」のいずれかを生贄にして追加効果を発揮してくれます。

今回はセット全体で生贄コストが多く確保できるようになっています。前述の役割トークンや食物、更に2色メカニズムとしてネズミなどトークンを出すカードは蔓延しているといっていいでしょう。ある程度は協約はできるものと思ってカード評価していいと判断しています。
とはいえ、そこまで簡単な話でもないと思います。色によって協約コストの捻出はかなり得手不得手がありますね。白赤>黒緑>青、くらいです。緑は黒よりちょっと下がってますね。それらの色では「ゲーム中に協約できる回数とタイミング」は結構限られてしまうでしょう。結果として「マナコスト通りのタイミングで協約しないと弱いカード」の評価がやや厳しくなったり、「他の協約と比べると弱いカード」の評価が一段下がることになりそうです。
性質上、インスタントであるものは強いですね。死んでしまう予定のネズミトークンや、除去を打たれたクリーチャーについていた役割など、生贄を悪用できるタイミングは多いと思います。特に役割でも触れた「呪われしもの」をインスタントで協約する動きは結構損しやすいので気をつけたいですね。インスタントはおおよそ半分あります。
色の偏りは、白が2枚、赤が3枚、他が5枚とやや偏っていますね。赤と白は祝祭が割り当てられている分で他の能力の振り分けが少なそうです。
強いカード、特に除去も多くよく見る能力になるでしょう。

4:新規メカニズム『祝祭』

メカニズム、と銘打っていますが実態は赤白のアーキタイプですね。赤白にしか存在しないメカニズムです。

土地でないパーマネントを2個出したターン中、普段より強くなるというカード群ですね。装備品である1枚を除いてすべてクリーチャーであり、また祝祭によって引き起こされる効果もすべて「戦闘力が上がる(概ねそのターンのみ)」となっています。
赤白のアーキタイプになっていることからもわかるように、軽く序盤から攻め立てることのできる能力ですね。パーマネントを2個出すというのは、シンプルに考えれば2枚カードを使う必要があり、毎ターン達成するのは難しいです。
しかし今回は「戦場に出たときに役割をつけるカード」「ネズミトークンを出すカード」「パーマネント(役割)を出す出来事」などが多く、1枚で祝祭できるケースが非常に多くなると感じています。そのため今回のリミテッドの主要アーキタイプになれるんじゃないでしょうか。
祝祭を持つカード自体はやや少なく、人気になったのであれば取り合いが激しそうなのは注意ですね。

5:再録メカニズム『出来事』

前回のエルドレイン、及び今回でも主要として取り上げられているメカニズムです。パーマネント呪文についており、「パーマネントそのままとして使う」「出来事呪文として使う」のどちらかとして使うことができます。さらに、出来事呪文として使った場合は追放され、パーマネント側として再び使うこともできます。


前回からの大きな変更点としては、「役割」の登場によって出来事部分も本体部分も両方事実上パーマネントであるカードが生まれ、増えたことですね。各色に「出来事で役割付与」するコモンクリーチャー群がいることは押さえておきたいです。
また、出来事と本体で色が違うカード群も登場しました。そのため、今まで以上に「このカードは出来事部分のみ、クリーチャー部分のみでもピックに値するか」と判断することが重要になったと思います。これもサイクルで総勢22枚あるためかなり影響が大きい判断部分ですね。
また、環境全体として「リソース切れ」がやや起こりにくくなる要素ですね基本的には除去や戦闘補助の出来事が多いため、「除去って殴る」系統のデッキが息切れしづらくなり攻めやすくなる環境だと思っています。


6:リミテッドアーキタイプ

定例の項目ですね。『2色の組み合わせ』で10通りのアーキタイプが用意されています。アンコモンの多色カードは今回は1枚ずつですが、多色である出来事がその枠を譲り受けた形だと思います。とはいえ出来事カードはあまりアーキタイプサポートっぽくないものも多いですね。
一つずつ説明していきます。

白青:「凍結」
相手のクリーチャーをタップするカード群と、相手のクリーチャーをタップすることにより誘発する能力を持ったカード群ですね。
後者が「白にアンコモン1枚、青にアンコモン1枚、多色のアンコモン1枚とレア1枚」と非常に少なく、「クリーチャータップデッキ」としてまとめるのは条件が厳しいように感じます。とはいえ、クリーチャーをタップするという行為はリミテッドにおいて強いものであり、このアーキタイプに属するカードを白青に限らず使ったり、白青でも「タップして殴る」ようなデッキとしてまとめるのは可能だと思います。ヒルダは滅茶苦茶なので、もし流れてくるようになると嬉しいですね。

青黒:「フェアリー」
クリーチャータイプでであるフェアリーをアーキタイプとしています。
これも参照カードがコモンに1枚、アンコモン以上に4枚とやや少なめですね。フェアリー全体も飛んでいる程度の共通点しかなくまとめるのはやや難しそうです。フェアリーの剣技は非常に強いカードであるため、これを使うことを狙った青黒コントロール/テンポ系のデッキを目指す形になるでしょう。墳丘のいたずら好きも、飛行が多く地上での殴り合いに弱いフェアリーたちにとって頼れるカードですね。

黒赤:「ネズミ」
「1/1でありブロックできない」のネズミトークンを多数生成し、攻めるアーキタイプです。
赤黒にしては珍しく「ネズミを直接いけにえに捧げる」ようなカードはほとんど存在しません。協約のタネにはなる、程度ですね。そのため漫然とトークン+生け贄で組むのは難しく、ちゃんと「ネズミを活用して殴る手段」を意識して取っておくべきでしょう。特注の戦闘装束などは祝祭のカードですが非常に相性がよく、このような継続戦闘補助の評価は高めたいですね。

赤緑:「パワー4」
いつものやつなんですが、そもそも参照カードが4種しかなく、極めて強力なカードもないため今回はアーキタイプとしては欠席扱いだと思います。
「怪物」の役割が赤と緑に偏っていることを利用して「サイズ差をつけて殴って勝つ」という方向性を目指すことになるでしょう。赤い祝祭を取ったけど白に行けなかったときの逃げ道などにもなれそうではあります。ピクニック荒らしは強力なんですが、このカード別に赤緑じゃなくても使いそうな勢いありますね。

緑白:「役割」
アーモント卿に象徴される、役割をつけて戦うアーキタイプです。ですが、ほぼアーモント卿とレアのイェナくらいしか直接的な支援カードはなく恩恵を感じづらいですね。色全体で役割の数が多いわけでも特にないですし。
祝祭がしやすい、出来事だったり何かのついでで役割がつくカードが多くサイズ面で戦いやすい、という点で戦うことになりそうです。エンチャントに関連したカードがいくつかあるのも特徴になっていて、そこで中長期的な戦いもできますね。ミッドレンジとしてのまとまりはあるように感じます

白赤:「祝祭」
メカニズムを軸としたアーキタイプですね。とにかくパーマネントを展開しながらどんどん殴るデッキになります。パーマネントを並べるということと、殴るということは方向性が同じなためやりやすいアーキタイプかなと思います。
パーティ破り、アッシュは非常に強力で、「次のターンに恩恵が積み重ならない」という祝祭の問題点を補ってますね。是非取りたい。
祝祭を継続的に行う手段はいろいろあるんで、自分でいろいろめどをつけておきたいですね。

赤青:「インスタント&ソーサリー」
いつものやつです。それに加えて今回は出来事もサポート対象に入っていますね。まぁ実質インスタントソーサリーなので。
これもいつものような攻撃的な「唱えるたびに強くなる」や「墓地の数だけ」カードが少なく、どちらかというと出来事アーキタイプとしてアドバンテージを積み重ねるコントロールメインなのかな、という感じですね。ジョハンは本人サイズもいいしアドバンテージ能力も持っててかなり頼りになります。

青緑:「マナコスト5以上」
これも定期的にお出しされる雑アーキタイプですね。
しかし出来事の存在があるため普段より自然に重いカードを確保しやすく、また多色アンコモンである度胸ある冒険者、トロヤンが強そうであるため期待しているアーキタイプではあります。
マナコスト5以上シナジー自体はいまいちなカードも多いので、シンプルに出来事&ランプとして振舞うのがこれもよさそう。

緑黒:「食物」
エルドレインらしいアーキタイプです。
食物を出すカードと使うカードに概ね分かれているのが常ですが、今回は「自分で食物を出すし使う」カードが多めなのは嬉しいですね。甘歯村の魔女などは緑黒以外でも強そうですし、硬いクッキーやグレタも単独で強いカードだといえます。いつもの緑黒の特徴なんですがアンコモンが結構強めですね。
全体的に食物を出す量が少ないため、襲クリームのような継続的に食物を出すカードは結構貴重かもしれません。

黒白:「エンチャントを墓地に送ること」
エンチャントが墓地に送られた時の誘発や、墓地にあるエンチャント/クリーチャーを活用する手段で成立するアーキタイプです。
アンコモンである悪夢に追われる者、ネヴァは非常に強力ですね。性質上協約、祝祭などともシナジーを形成しやすく、幅広い選択肢があるアーキタイプのように思います。エンチャントを墓地に置く手段はかなり限られているので、そこをどうするかが課題ですね。


7:各気づきポイント

ここから下はいつものように、カードリスト全体を見て気づいたポイントをまとめていきます。記事書いてるうちに、事前調査した内容忘れたんで追記するかもしれません。シャワー浴びてる最中に思いついて、上がると忘れるんですよね・・・

・コモンアンコモンのパワー
指輪物語の後だとかすれる、あるいはそれでもなおわかるのがコモンアンコモン群の強さです。特にクリーチャー。大体の色において「過去のバニラ水準のサイズ+有用な能力の2~4マナ」が揃っています。青とかがかなり顕著にも見えますね。4マナ、5マナのサイズ感を損なわないまま除去能力までついています。赤も2/2/2+メリットがコモンに1枚アンコモンに3枚と驚きますし、白黒もやはり強めに感じます。緑だけなぜか普段通りのサイズ感かそれ以下なので、サイズ感でいうと中盤では緑が一歩劣るように感じるかもしれません。
さらに、カードの水準が上がっているということで、カード評価する際は過去のカードとシンプルに比べるだけでなくちゃんとセット内での相対評価をしないといけないでしょう。気をつけたいです

・サイズ感
能力面では水準を超えてきているように思いますが、額面上のサイズ感自体はそこまででもありません。緑に3/3/3がいなかったり白も4/3/4みたいなのがいないので額面上のサイズはやや小ぶりのようにも見えます。
しかし祝祭や役割によって「1個分」のサイズは埋まりやすいです。概ね4/4前後がクリーチャーの大きさの平均で、5/5サイズはちょっと珍しいと思っておくとよさそうです。タフネスが6まで行くと疑似的な除去耐性にもなり頼ることはできますね。

・除去の水準
黒のがぶりんご飴は歴代の中でもかなり高性能なカードだといえます。協約コストも元を取りやすい効果ですし。白にも攻撃封印もレンジストライクもそろっています。ただしインスタントの除去自体はちょっと少なめに感じます。赤の大型除去がソーサリーな上に4点止まりなこと、黒の確定除去も5マナであることによる印象ですね。そのため後半のクリーチャーは意外と生き残りやすく、互いにしっかり盤面を固めることになるかも。
とはいえ、呪われし者の役割と、青白の凍結効果の存在によって「実質除去」であるカードはかなり多いように感じます。少ないクリーチャーで盤面を支えて戦うようなデッキは成立しづらいんじゃないでしょうか。出来事でカード枚数稼ぎやすいこともあり、ちゃんと場にクリーチャーを出すことが重要に感じます。

・「ぴったり」の危険性
今回のドラフトでは「相手のパワー/タフネスとぴったりのパワー/タフネス」での戦闘はかなり危険だと考えています。特にタフネスぴったり。
それは、「効果が残るコンバットトリック」の多さです。実に3枚もアンコモン以下に「インスタントで打て、パワータフネスに1の修正を加える役割を出す」カードがあります。さらに役割ではないものの出来事であるため損をしづらいインスタントも1枚あります。これはかなり多いと感じる枚数ですね。「ピッタリ戦闘」を仕掛けるとこれによって計算を狂わされたうえに相手のサイズが上がったまま残りたちまち取り返しがつかないレベルで不利になってしまいそうです。
最序盤であり除去などの保険がない状態でピッタリブロックなどをしたりは場合によっては控えるべきですし、クリーチャーの評価基準として頭でっかちの方が低マナは安心するかもしれません。
ぴったりを役割で返されて負け、は本当に多そうな死因だと思います。

・タフネス1の危険
今回はタフネス1いじめのカードがちょっと多い気がします。コモンにはかなり強そうな串焼き投げ、アンコモンには夢ばれ、覆われた羊飼い、遊び戯れの使い魔と優秀なカードが揃っています。クリーチャー全体のサイズ水準が上がっているため、タフネス1を多く運用しなくてはいけないことは少なくなると感じますが、いざそうなってしまった場合には気を付けましょう。上の項目では頭でっかちがいいと書きましたが、2/3/1などはちょっとリスクがありますね。
ネズミトークンなども、いたずらに取っておいてもまとめて流される可能性があるので、どんどん突っ込ませるべきかも。

・ライフが危険
今回は結構ライフがすり減りやすい環境に感じます。
怪物役割の存在、ひねくれ者役割の存在がその原因ですね。1点、2点といった軽微なダメージの蓄積が多くなり、最終的なリーサルに達することも多いと思います。
もっとピンポイントでいえば、黒が色としてライフルーズが今回得意な気がしています。ひねくれ者に、シュガーラッシュに、忌まわしき訪問者に、望み無き悪夢とバーン効果を持つカードがいつもよりコモンに多いと感じます。明確なアーキタイプとして取り上げられてはいませんが、この辺りのカードを集めた「黒いアグロ」の可能性は感じますね。裏アーキタイプとして注目しておくべきでしょう。

・アーキタイプの密集度
今回、アーキタイプ同士が密集してる、あるいは越境性が高いカードが非常に多い状況になっています。今回登場したメカニズム同士の関係性によるものですね。
本来緑白のアーキタイプである役割を産むカードは、パーマネントを2個並べやすく祝祭に貢献しますが、同時に協約や白黒のアーキタイプとの相性がいいです。赤緑のためのパワー4を作ることもできますね。出来事は赤青と青緑を実質サポートしていますが、これもパーマネントの数が増えるため祝祭と相性がいいです。ネズミは言わずもがなパーマネントを並べることができますし、食物もその路線ですね。
このように、アーキタイプのテーマがほぼ直接別のアーキタイプを支援しているケースが多く、結果として二つ以上のアーキタイプに属することになるカードが多いですね。
結果として何が起こるかというと、同じ色で同じアーキタイプをやっているつもりでも使うカードの内訳が変わり、それにより同じアーキタイプでも速度が違うなどというケースが出てきます。また、それはつまり「オリジナルアーキタイプ」を組む余地が非常に幅広いということですね。赤の祝祭カードと黒のライフルーズで赤黒ビートをしたり、緑黒で怪物+エンチャントが墓地に行くことによるライフルーズで攻める、などいくらでも思いつきます。どのアーキタイプに関連できるかや、どの方向性のデッキに入れることができるのかなど視野広くカードを見て、いろいろアーキタイプを開発する「リミテッド力」が強く問われるセットになるんじゃないかと思います。
例外的に青のフェアリーと凍結は他のアーキタイプと全然越境しておらず、ひいては青全体がアーキタイプ組みづらいことになってしまうかな、という不安もあります。青は自分でテンポデッキを目指すなど必要かも。

色事情
今回もコモンの二色土地がありません。水晶の岩屋と未開地という強めの5色土地は2枚あるものの、それだけで多色サポートができるかは不安です。協約や祝祭のコストとして水晶のプリズムなどが使えたりもしますが、あんまりやりたくなさそう。
アーキタイプの越境性が高いとはいえ、それらを広げることによる3色デッキなどは組むことが難しいと判断しました。緑の色サポートは悪くないので緑中心の赤緑青とかならいけそう。


・おとぎ話とエンチャントの重要性
今回はボーナスシートとして「おとぎ話」があります。これはコモン枠1枚と置き換わり、必ずすべてのパックに1枚入っています。
とはいえ、おとぎ話のカード群は正直あまり強くないです。アーティファクトと違い色を持つためどのデッキに入るわけでもなく、また今回はエンチャントクリーチャーも採用されていません。つまりクリーチャーが入っておらず、それだけでちょっと平均点が下がりやすいですね。また、かなり癖の強い、「コンボ/専用デッキ用」のカードが多く、それらが成立していないものが殆どです。そのため、設計図や多元宇宙の伝説達に比べると全体的なインパクトが薄く、「エンチャントを壊せるようにしておいた方がいい」とは言い切れない結果だと思います。通常セット内にはエンチャントほとんどないですし。
とはいえ一部極めて強力なエンチャントがあることも事実ですね。出来事で破壊できるなら安心するかも。魔法破りだけは滅茶苦茶デッキに採用しやすいんで、入れておくと安心できますね。

・全体観
「ピッタリコンバットのリスクがある」「祝祭が強そうに見える」「先に役割つけて殴る方が有利」「出来事の関係で攻める側が息切れしづらい」ことにより先にマナが使える先手側が今回も有利に見えます。でも先手でも2ターン目にアクション取れないとすぐ不利になりそう。
ライフが素早く0になるということはないと思いますが、先手がずっとマウントを取りやすい環境なのかなと感じています。受ける側のデッキは軽い除去などで序盤を耐え、サイズとカード1枚多い分の勝負に持っていく必要がありそう。ゲーム速度は除去の多さにより早くはないと思いますが、お互い暇ターンが生まれづらい密度の高い環境になるかな、と思っています。


最後になりますが二つ宣伝です。

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また、今回の記事は無料公開としています。が、もし記事読まれたかたでご厚意でサポートしていただける方がいましたら是非今後のMTGAでの活動や主催しているMTGA大会企画『まじ☆すと』の運営資金とさせていただきます。是非よろしくお願いします!励みにもなります!


では、次の記事でお会いしましょう。



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