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クリエイティブについての本音と戦略

◆ストーリーメイカーとして

僕は、デビューしてまもなく「後藤ひろひと」と出会い、よく呑みに行っては、脚本の話を朝まで延々と交わしていた。

後藤さんは、演劇界で知らない人はいない劇作家で、代表作に『人間風車』、『ダブリンの鐘つきカビ人間』などがある。

芸能活動のスタート地に面倒を見てくれた先輩。ロザンの菅さん、劇作家の後藤さんなど。その後、三谷幸喜やエルンスト・ルビッチにはまり、立川志の輔にはまった。その中で胸を躍らせてくれたのはストーリーメイカー達でした。

それはそのまま自分の時間割にも反映されている。僕の人生の時間の大半をささげているのは「ストーリー作り」です。

ストーリーメイカー1年目の頃は「この衝撃の展開を見よ!」「個の裏切りを予測できなかったろ?」といった感じでどやどやした作品を発表していた。

しかし、作品数を重ねるたびに、「ギミック」でお客さん(コアファン)の満足度を獲得することがいかに簡単で、”誰でもかけそうな普遍的な物語”を世の中に残すことがいかに難しいのかを知る。

例えば「電球」の発明。「それ思いついていたよ」というのはすごく簡単であるが、思いついたものを形にするのは難しい。

脚本も同じで、「誰でもかけそうなのに、誰にもかけない脚本」が一番難しい。

『えんとつ町のプぺル』は、「【輝く星がありました】が落ちとなる感動物語を書きなさい」という問題です。この問題は誰でも挑戦できますが、解くのはかなりハードルが高い。

そして、「感動物語を書けばいい」というだけではない。この問いの答えを「普遍的なもの」にするには、「全ての層」を押さえなくてはいけません。

◆全ての層?

例えば、屋根の上にのってしまった帽子をルビッチが取りに行くシーンがあります。屋根にかかったハシゴの下では、父と母がルビッチを見守ります。

このシーンでは「3つの層」にアプローチをかけています。

①「ストーリー」として見る人 ②「脚本」目線で見る人 ③「メッセージ」目線で見る人 この3つです。

①の人には、「家族の距離感」を売る必要があります。ここでは、セリフや色使いで「いかに信頼・尊重しあっている温かい家族か?」を丁寧に描きます。

②に人には、このシーンがラストシーンの伏線であったことが分かった瞬間に快楽を覚えます。

そして、作品のリピート率やギフト率を上げるためには、なんといっても③を押さえておくことが大事です。

『メッセージ』には、「お客様を鼓舞する役割と」、「お客様を代弁してくれる役割」という2つの役割があって、普遍的な問題を描くなら、ここを安く見積もったらいけない。

脚本は、紙の上に書くものではなく、劇場を支配するものなので、もちろん大切なシーンで赤ちゃんが泣いてしまうことも織り込んでおく必要がある、ここの配慮がないと、「ファミリーで観に行く作品」になれないです。一部のコアファンを満足させることが出来ても、世界は獲れない。

今日は、脚本の作ることは容易なことではないということ。全ての層にギフトとしてメッセージを送らなければいけないこの2点をお話ししました。


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