SCG Player of the Year、Alex Bertonciniの不正行為についての情報の公開 (2011/12/12 再翻訳)
訳注:さっきの翻訳がやたら好評だったので、マジックで初の翻訳に挑戦した際の、今見るとあまりにも酷い訳でめまいがする(未だに何かに付けて読まれてるっぽい)文を訳し直しました。
この文章は特定の誰かを吊るし上げるためにあるものではありません。ただ、「イカサマ師を排除することの大事さと難しさ」を共有し、環境をより良くするために書かれたものです。
[更新:Bertonciniは記事にあるように原文公開後の12月15日付けで18ヶ月の出場停止(訳注:なおその後2014年に3年――確かこれが2度目――そして2019年1月にLifetimeの出場停止を受けています。)処分を受けました。]
[原文編集部注:私はこのブログを、MtGの主流なサイトにはふさわしくないような話題を扱う場として始めました。私自身も長い事、サマ師を捕まえその行為について書いてきました。ここでDrewが明らかにすることは論議を呼ぶでしょうが、それは提示された証拠を損なうものではありません。そして、もしAlex自身が自分の立場からの真実を伝えたいのであれば、私はそれをここに公開し、広告することを約束します。]
こんなジョークがある。
それは、GPの土曜日の夜(訳注:当時のジャッジディナー。現在(日本以外では)日曜夜に行われるのが通例)。人々はテーブルを囲み、夕食を食べながら他愛もない話をしています。
そして、ふとAlex Bertonciniの事が話題に上ります。
「そういえば、ヤツのサマの事を知ってるかい?」
「ああ、知ってるぜ」
「奇遇だな、俺も知ってる。」
そして一人がふと、最初の一人を指さして「ちょっと待って、それは何の話?」と問います。
彼らはその話を聞き、眉を顰めます。そして、2人目が「うーむ、僕が聞いた話とは違うようだ…」と言いました。
また、彼らは話を進めていきます…
Alexのイカサマ話は、6人それぞれ違うものだったのです。
私がAlex Bertonciniに会ったのは3年前のことだ。当時の私はプレイも稚拙でデッキ構築もろくにわかっていないような素人で、トーナメントシーンが何たるかもろくにわかっていなかった。一方のAlexは、その年の頭にフェアリーで初めてオフラインのトーナメントでの成功を収めた程度の、新星と言われるような競技プレイヤーだった。私は当時カバレッジを愛読していたために彼の名前を知ったのだ。尊敬を集めている―いや、もはや雲の上という程に評価されていた彼と、友人になりたいと思っていた。
その後の数年で、Alexと友人になった。お互いの家に泊まったり、大会までお互いを車に乗せていったり、ルームシェアしたり、一緒にデッキに取り組んだり、テクノロジーについて語り合ったり、人生について話したり。しばらくの間、彼は私にとっての親友だと思っていた。
この記事を理解するためには、私の視点が客観的でないことを認識して貰う必要があるだろう。どの時点であっても、私の行動は感情に左右されたものだ。それがうまくいったときもあれば、そうでないときもあっただろう。しかしながら何らかの判断を下す前に、彼が我々を結びつけたゲームにおいて不正をしたと確信したが故に、私はかつてからの深い信頼を捨てたのだということを理解していただきたい。
また、これは公開処刑を目的としたものでもない。出場停止を課せるのはDCIだけであり、失格処分を下せるのはジャッジだけである。私はDCIのメンバーでも高レベルジャッジでもない単なる一プレイヤーに過ぎず、ジャッジやオフィシャルより多くの情報を持っていてもそれを利用して何かをすることはできないのだ。私は数ヶ月の間入念に情報収集をした結果として、これをコミュニティの手に委ねることが最善だと判断した。DCIのみが出場停止を課し、ジャッジのみが失格処分を下すとしても、ジャッジを呼ぶのは誰だろうか?イカサマ師の行動を見咎められるのは誰だろうか?そしてイカサマ師を見つけた人間は道徳的に、そして共同体に対して、どのような義務があるのだろうか?
また、この記事はそうした情報を広めるためだけに書いているわけでもない。今にも負けそうになっているときに追加の土地をプレイしたりカードを引いたりするようなことを考えてしまう人全てにメッセージを送りたいのだ。マジックのコミュニティには、そうした人間の不誠実さを察知し、不正を暴露するために働く人間がいることを知ってほしいのだ。マジックのコミュニティが、イカサマ師にとって安息の地であるかのように見える行動をとって欲しくはないのだ。我々のコミュニティが、イカサマ師を守ってしまうことは望まない―それは次のイカサマ師を育てることにしかならないのだから。この記事はAlexのイカサマの長い歴史であるが、同時に彼のやり口を真似てその成功を自分も得ようと考える不心得者に対する警告でもある。マジックにおいてイカサマ師が歓迎されることは絶対になく、そしてそれを暴くためならいかなる反発をも物ともしない人々もいるのだ。
私は良きにつけ悪きにつけ、この数年間多くの週末をSCGオープンを回って過ごしてきた。「グラインダー」として、サーキットの顔の一人に数えられるようにもなった。Starcitygames.comでの記事連載も始まり、幸いにも好評を博している。私はこのコミュニティに率先して飛び込み、読む価値のある物語を提供しよう。
この記事はこの週末にシャーロットで行われたSCGインビテーショナルで優勝しプレイヤー・オブ・ザ・イヤーを連覇したAlex Bertonciniが、いかに常習的なイカサマ師であったか、という物語である。
物事を正しく理解するには、まず時を遡って時系列順に語るべきだろう。
イカサマ蒔き
私にとっての物語は2010年の6月から始まる。Alexが青単マーフォークをプレイするためにセントルイスに向かっているとき、私はガールフレンドの元に運転していた。我々は電話で少し話して、それから彼の幸運を祈り電話を置いたのだった。カバレッジを読んで、彼が二位に終わったことに励ましのメールを送り、そしてGPコロンブスに向けて自分のデッキの準備に取り掛かったのだった。
そこから数週間の間に、「第3ラウンドでAlexがイカサマをやった」という噂話がネット上に広まった。その時点で私はまるでそれを信じていなかったから、事実を確かめようともしなかった。長い時間付き合っていい人間だと知っているのに、不正の噂などという腹立たしい話の裏を取ったりするだろうか?私は彼がイカサマ師ではないと確信する程には彼のプレイを見てきたのだ。救いようのない話だが、当時の私は彼が無実であり、アンチはクソくらえ、などと思っていたのだった。
As we now know, Alex cheated Andy Hanson in that feature match. It can be found here. To highlight the relevant parts of game 1:
既に知られているように、AlexはAndy Hansonとのフィーチャーマッチで不正を犯していた。(訳注:ソースのカバレッジは既にネットの海に消えている)
1ゲーム目のハイライトを引用してみよう:
次の禁止改訂で《神秘の指導者/Mystical Tutor》を失う前にリアニメイトを使う選択をしたAndy Hansonは、《思考囲い/Thoughtseize》を見せてAlexに《目くらまし/Daze》を捨てさせた。 2ターン目、《銀エラの達人/Silvergill Adept》はAlexに2ターン目の相手のコンボに有効な《対抗呪文》ではなく《誘惑蒔き》を引かせた。 ターンが返って、Andyはアップキープに《納墓/Entomb》を唱え、《白金の天使/Platinum Angel》を探して墓地に置いた。Alexはその4/4が典型的なリアニメイトデッキではあまり見られないな、とコメントした。しかしながらHansonはまたしても土地を引くことが出来ず、ゲームを決定づける《Underground Sea》を待つことになった。
(中略)
しばらく後、ついにAlexに選択の余地は無くなった。《誘惑蒔き/Sower of Temptation》の引き金を《白金の天使/Platinum Angel》に向かって引くか、7/11のリバイアサンに 殺されるかの2択だったからだ。彼は島1つを残して4マナを倒し、2/2を戦場に出した。Andyは《目くらまし/Daze》を追放して《Force of Will》を 唱えようとしたが、Alexはそのプレイが大丈夫かどうかジャッジに尋ねた。
「ライフが-16の時に1点のライフを支払えたっけ?」
ジャッジが「不可能だ」と答えると、Hansonは投了した。
これだけなら問題はなさそうだ―Alexは《白金の天使/Platinum Angel》を《誘惑蒔き/Sower of Temptation》で奪って殺した、非常にシンプルだろう。
そう、その日Alexのメインデッキに《誘惑蒔き/Sower of Temptation》が入っていなかったということを除けば。
メインデッキに《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅/Kira, Great Glass-Spinner》…入っている。
4枚積み沢山…そうだ。
《誘惑蒔き/Sower of Temptation》…サイドボードに2枚。
確かにこれは単なる間違いだったかもしれない。その可能性があるように見えるかも知れないが、Alexは自分のデッキの内容を忘れるような人間ではないのだ。彼がデッキリストを忘れたなんてことはありえないのだ。実際彼がこのデッキを登録したのはたった3時間前の話なのだ!これはロケット科学のような複雑なものではないのだから。つまり、不愉快な2つの可能性があるだろう。
・彼は前のラウンドのサイドボードで《誘惑蒔き/Sower of Temptation》を使用したまま戻し忘れた(他のサイドボードも戻し忘れたが、たまたま引かなかった)
または、
・事前サイドボードとして、意図的に《誘惑蒔き/Sower of Temptation》をデッキに入れ、単なる《風のドレイク/Wind Drake》に過ぎない《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅/Kira, Great Glass-Spinner》を抜いた
仮に前者だったとして、サイドボードを手にとった瞬間、自分を見つめる綺羅をそこに見たAlexが直面した道徳的・倫理的なジレンマを考えてみよう。ジャッジを呼んで、今盗んだばかりのゲームを正しく失うか(訳注:当時のIPGにおいては、サイドボードの戻し忘れは原則として〔ゲームの敗北〕であった)どうかという話だ。ああ、あり得る。
それとも、ラウンドの前に《白金の天使/Platinum Angel》というシークレットテクを耳にして余計なカード2枚を抜けた幸運に感謝しつつ、サイドボードして可愛そうなAndyを倒してしまったのだろうか。登録したデッキの内容を覚えていない、などともっともらしい言い訳ができるのであれば、人生は随分楽なものになるだろう。
そして、私は彼の言葉を信じたのだ。
そう、もう一度言おう。
私はAlexの主張を信じてしまったのだ。当時の私は非常に馬鹿げた自己陶酔的なパラダイムに浸っていた。
・私は人格的に優れたジャッジである。
・彼は私の友人であり、私は良い人間とのみ友人になるのだから、彼は良い人間である。
・彼は良い人間であり、私が彼を好きであるのだから、彼がイカサマ師であるわけがない。イカサマ師は悪人であり、例えば視界に入った子犬を蹴飛ばすような素性から用意に見分けられるもので、人当たりの良い人間がイカサマ師であるはずがない。
・イカサマ師というのはそうした人格からくるもので、私が信頼している彼はそんなイカサマ師ではありえない。
・私はイカサマを見つける方法を知っているのだから、もし彼がそんなことをしていたならとっくに見つけているはずである。
ただ、これらの対偶を取ってみれば、実際に起きていたことを知ることができるだろう。笑い話はこうして起きたのだった。
なにはともあれ、2010年を通じて私は彼の親友であり続け、クリスマスから新年にかけて共に過ごしたのだった。
大いなるサマ紡ぎ
さて少し早送りしてみよう。2011年、私はSCGオープンのサーキットに多くの時間を費やそうと決めたため、結果Alexと行動を共にすることも増えていった。彼を含め何人かのプレイヤーは、DCで2月に行われたSCGオープンのために私の家に泊まっていた。サンノゼで何が起こっていたのかはまるで私の知るところではなかったのだ。Alexの第7ラウンドのフィーチャーマッチの話は、長いこと私のレーダーをすり抜けていた。
綺羅のビデオに出くわしたのは夏も終わりに差し掛かった頃だった。ちょうど我々の仲が少し険悪になっていた頃だ。「Alexが常習的なイカサマ師だ」という何人かの主張について調べているうちに、ある友人が「《呪われた巻物》と綺羅のイカサマを知ってるかい?」と尋ねてきた。当時の私は知らなかったため、映像を送ってもらうように頼んだのだった。それこそが、1月にサンノゼで行われたレガシーオープンの第7ラウンドだったのだ。
動画(訳注:こちらも現存しない)の32分頃から事態は発生している。要約してみよう。
Vidianto Wijayaは青白の相殺デッキをプレイしており、《呪われた巻物/Cursed Scroll》と《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》、そして沢山のカウンターを使っていた。除去が多く入っているわけではないものの、《呪われた巻物/Cursed Scroll》がマーフォークに対しては《渋面の溶岩使い/Grim Lavamancer》のように機能していた。Alexはその状況を解決するべく《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅/Kira, Great Glass-Spinner》をプレイし、空から2点を刻み始めた。
Alexは土地が3枚で止まっていたため、少し出足が遅れていた。一方Vidiantoには土地6枚とカウンター2つのジェイス、そして《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》と《呪われた巻物/Cursed Scroll》があり、ジェイスの-1で綺羅の「盾」を剥がした上で巻物での撃墜を狙っていた。
このマッチはGavin Verhey、Brian Kibler、そしてPatrick Chapinが実況解説をしていた。Vidiantoがアンタップしたときには土地6枚とカウンター2つのジェイス、《呪われた巻物/Cursed Scroll》が戦場に、そして手札に《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》と《呪文嵌め/Spell Snare》があった。土地を引いてプレイし、そしてジェイスを起動し綺羅の「盾」を破る。《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》でAlexの手札を見て、《珊瑚兜の司令官/Coralhelm Commander》、《アトランティスの王/Lord of Atlantis》、そして《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》を確認してそのままにし、巻物を起動して《呪文嵌め/Spell Snare》を公開し、そしてターンを返した。状況を整理すると、
Vidianto:ジェイス(忠誠1)、7枚の土地、独楽、巻物が戦場にあり、手札は《呪文嵌め》1枚。
Alex:島2枚と《変わり谷》をコントロールし、手札は灰色熊3枚と灰色オーガ1枚(訳注:マナコストとP/T参照)。
Alexは返しに2枚目の《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅/Kira, Great Glass-Spinner》を引き、プレイしてターンを返した。興味深いのはここからだ。
Vidiantoは《渦まく知識/Brainstorm》を引いて唱え、土地2枚とジェイスを引いた。土地と《呪文嵌め/Spell Snare》を戻し、8枚目となる土地と《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が手札に残った。我々は知っているが、最後のカードがジェイスだと知らないAlexの視点から見てみよう。Vidiantoは8枚目の土地をプレイし、ダイスをジェイスから取り除いて綺羅を指差し、「綺羅をバウンスしてジェイスが死んで、能力は打ち消されます」と。そしてVidiantoが巻物をプレイしてジェイスを公開する前に綺羅が…
おっと、今のが見えただろうか?少し目を離していなかっただろうか?普通カードが墓地の方に向かって動き始めたら、それが実際に置かれたところを見ていなくても「墓地に置かれた」と信じるだろう。
もう一度見直してみよう。Vidiantoがジェイスを見せているところではなく、Alexの方をだ。彼が綺羅を墓地の方向に動かすのを見てみよう。そう、知っての通りそこには今死んだのとは別の綺羅がいるのだ。そして、その瞬間彼は今の綺羅を裏返して手札に戻し、勝利への最後の希望をつなぎとめようとした。
驚くべきイカサマの手口だ。1ゲーム目では、Alexは墓地をきれいに広げてカードがすべて見えるようにしていた。しかしこのイカサマのあと、彼は墓地をひとまとめにしてしまい、一番上の綺羅しかみえないようにしてしまったのだ。墓地に綺羅が何枚あるかって?わからないけども綺羅は一番上に、あるべきようにあるように見える。心配はいらないね。
(無精者などでは決してない)3人の実況全員が見逃した程うまく行われたのだ。実のところ唯一Gavin Verheyが「また綺羅?3枚目じゃないか…あれ、彼は2枚しか入れてないんじゃ?」と違和感を覚えただけだった。しかしChapinは話を続け、GavinもまたAlexの手札に解決策があるかどうかという議論に戻ってしまった。疑問は忘れ去られ、そしてVidiantoは結局彼を圧倒したまま数ターンの後に勝利を収めたのだった。
これが私の目が完全に、そして二度と曇り直すことのないレベルに覚めた瞬間であった。私はこの2分間を何十回と見直しただろう。彼の手口を解剖し、墓地の置き方を変えたり手札をシャッフルしたり、また対戦相手に「綺羅は墓地に行った」と思わせるような動きをしたり、ということを解明していった。最終的に、彼がイカサマを働いて、そして負けたということを確信したのだった。
この映像を見てからというもの、私は少しおかしくなっていたのだろう。あらゆる知人にAlexの不正について知らないか聞いて周り、その話を集めてその卑劣さを糾弾する記事を書こうと考えていた。また、ポッドキャストでは彼が昨年どれだけ重大な不正を働いたのか、知る限りのことを語った。
そして、少し落ち着いたのだ。「これはイカサマ師を捕まえるやり方ではない、何某かの方法で彼を「止める」だけではないだろうか?自分は高潔でもなんでもない、ただかつての友と敵対するために法を利用するただの子供に過ぎないのではないか?自分はただの馬鹿者になってしまうのではないか?さあ、落ち着くべきだぞ」、と。
故に一度落ち着いて考え直した。自分の動機や仮設、データ、友人、そうしたすべてのものを自問自答したのだ。その記事の公開は延期することにした。グランプリ・ピッツバーグで会った賢い人々と話し合い、次にすべきことについてのアドバイスを求めた。彼らの答えは、3つの力強いアドバイスに結実した。
・私がこれを公に語ってしまったことで状況を多少混乱させてしまったが、それを続ければ更に自分の目標を損なうことになっただろう。これは彼のイカサマに関する話であり、魔女狩りにしてはいけないのだ。
・故に、以降これを公に語るのではなく、DCI(具体的にはSheldon Menery)へと語るようにすべきである。
・誰一人Alexが潔白とは思っていなかったが、それでもクロを証明しなければならない。
私は彼らのアドバイスを心に留め、より有力な実例を探し続けた。聞いた話のいくつかを共有することもできるが、証言というものは確かな証拠ほど雄弁ではないだろう。
マジック最大の探検
幸運にも私にはTwitterがあり、Matt Pratserが私の動画を見ていたのだ。彼はカンザスシティで行われた今年最初のオープンで撮られた短い動画を教えてくれた。
動画はこちら(訳注:こちらは現存している)
そして再び、最初はイカサマに気づくことができなかった。一度動画を閉じて、「何の冗談だい?ただ《探検/Explore》を唱えてて、君が数え間違えているんだろう?」と書きかけたのだ。
そしてもう一度動画を見返して、Alexが《花盛りの夏/Summer Bloom》のようにプレイしていたことに気づいたのだ。どのような手口だろうか?
ドロー、4枚目の土地をセット。《探検/Explore》、5枚目(このターン2枚目)をセット。《定業/Preordain》。(恐らくデッキの下を覗き見つつ)2枚を下に送ってドロー。ここで見えるように墓地の《探検/Explore》の枚数をこれ見よがしに数える。そしてこのターン3枚目、計6枚目の土地をセットするとすぐにターンを返した。
「今何ターン目?」という質問に対して、彼は「《探検/Explore》2枚だよ」とごまかしたのだ。
彼のイカサマにかける情熱は相当なものだ。対戦相手との信頼関係を崩すことも、動画を撮影しているMatthewを気にすることもせず、そして対戦相手がゲームの進行に満足しているかを確認しているのだ。結局、Alexに騙されたこの相手は、騙したばかりの彼を讃えたのだった。
これは8月下旬にSheldon Meneryに送った証拠となる記録の3つ目だ。私は証言や証拠を集め、DCIの調査委員会に送った。多くの人からAlexの振る舞いに関する記事を求められたが、DCIの調査を待ちたかったが故に、数ヶ月待つことにしたのだった。
そしてAlexがインビテーショナルでプレイすることが確実になるにつれて、私はSheldonに送った手紙を可能な限り多くの人に届けるべきだということに気づいた。私の最後の懸念は、Alexは彼がそういうことをする人間だと知らない多くの人々を騙すのではないかということだったのだ。この記事をインビテーショナルに間に合うようにTedに届けることは出来なかったが、一日半の間にSheldonへのメールを300人もの人々に送ったのだ。その週の前半のうちに着手していなかったことを悔やんではいるものの、一方半端な記事を世に送るよりは良かったとも考えている。
それでも、まだAlexの過ちを認められない人もいるかも知れない。「Drew、人は間違いを犯すものだ。Alexは自分が不器用な馬鹿で、ずさんだけども 悪意はないんだと言っていたし、私は彼を信じている。あなたが明らかにした事は、今まで他の多くの人が犯した間違いをAlexも犯したということに過ぎない。 私には、これが悪意に基づくものとは思えない。またDCIが本当悪質だと判断したなら、とっくに彼をトーナメントから締め出していたはずじゃないか」と。
「注意」という言葉
数多くの証拠に付け加える、私自身の体験がある。SCGナッシュビルでのことだ。Alexと私はSCGナッシュビルとダラスの間の一週間をアラバマ州タスカルーサでAdam Caiのところに厄介になろうかなどと話していた。
第6ラウンドのことだ。私はチームアメリカ(《もみ消し/Stifle》、《目くらまし/Daze》、《意志の力/Force of Will》、《トーラックへの賛歌/Hymn to Tourach》、《タルモゴイフ/Tarmogoyf》、《墓忍び/Tombstalker》を擁する青黒緑の妨害デッキ)をプレイしており、彼は青単マーフォークを使っていた。彼にとっては有利なマッチアップであるものの、私が多くの脅威を展開する前に倒しきらねばならなかった。彼のターンに入って、彼は薬瓶から《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》を出してそのまま両手でクリーチャーを倒して来た。
「待って、まだ騎兵を薬瓶で出したところだろう」と私は彼を止めた。
「おっとすまない、そうだな」
(右手を上げて)「ジャッジ!」と呼んだところ、彼は「おい待ってくれ、謝ったじゃないか。別にジャッジを呼ばずともすぐ戻せるだろう?」と言ったのだ。
私はこのことと向き合わねばならない。一体どれだけの人がこんなことを言うだろうか?どれだけの人が、杜撰なプレーを見咎めてジャッジを呼んだ友人が決まり悪い思いをする程に警告を恐れるだろうか?結局のところ、それは〔ゲームの敗北〕ではなく〔警告〕で、つまり「二度とするな」というだけなのに。
ジャッジが来て、私が状況を説明した。Alexも同意したが、その直後彼が「警告を注意に格下げしてくれないか」と言った瞬間は今でも私の記憶に強く残っている。敢えて言及するほど大きなことには見えないかも知れないが、逆に今まで警告を注意に格下げするように頼んだ対戦相手を見たことがあるだろうか?警告の注意への格下げを要求するのはどのような人だろうか?恐らく、一番簡単なところから始めるべきだろう。そう、「警告と注意の違いは何だろうか?」と。
〔注意〕はDCIのデータベースに記録されないが、〔警告〕は残される。もし大会中に警告が必要数累積してしまえば、〔ゲームの敗北〕を受けることにもなる。そして同じ違反で警告やゲームの敗北が累積していけば、故意の違反として調査を受けることになるだろう。もし多くの警告が注意へと格下げされているなら、それはDCIが警告の過度な累積に気づけなくなるということなのだ。
さて警告を注意に格下げするよう要求した人間についてもう一度考えてみよう。私はそんなことをしたことはないし、Alexを除けば私の知人も誰もしないだろう。なぜかって?私達はイカサマなどしないので、警告が累積していくようなことはないのだ。一方Alexは多くの警告を受ける見込みがある故に、常に格下げを求めているのだ。これは彼にとってリスクも機会費用もなく、時として失敗した小さな誤魔化しに「タダ乗り」できるということを意味している。
Alexがこのように様々なイカサマで成功している理由は、彼がとても親切でフレンドリーな性格だからだろう。この数日間で、コミュニティから同じような議論を多く耳にした。曰く、「Alexは本当にいい人だ。彼に実際に会ったけどとてもクールで、何度かプレイしたけど彼はイカサマなんかしていなかった。彼がイカサマ師だなんてことはありえない!」と。
私にとって、こういう人たちは理解に苦しむのだ。「一緒に飲みたいから」なんて理由でどうしようもない大統領候補に投票する人と同種だろう。議論の焦点が何かということを理解できていないから、彼が誠実にマジックをプレイしているかという問題と、彼がカリスマ的な人物であるかという問題を混同するのだ。というよりも、私はそうした人たちがただ混同しているだけであってほしいと思う。そうでなければ、彼らは「親切な人間はイカサマ師ではない」と信じ切っているということになってしまうのだから。
世の中には「イカサマ師」と「いい人」の2択しかないと思っているような人には、「それは誤りだ」という悲しい事実を教えねばならないだろう。悪い奴の全てがSnidely Whiplash(訳注:コメディー映画『ダドリーの大冒険』に登場する悪役)のような外見をし、言動をしている訳ではないのだ。Mike Long(訳注:http://mtgwiki.com/wiki/Michel_Long)はきっといいヤツだったに違いない。しかし、それは彼が自分や対戦相手のデッキを積み込んだり、ダブルドローしたりというイカサマをしなかった、なんてことを意味してはいない。一方で、ただ「ナイスガイである」というだけの理由で、多くの人々が彼を擁護したであろうことを意味している。そもそもイカサマ師にとって、嫌われたり警戒されたりすることはまるで無益なのだ。もし「間違えた」としても人が味方をしてくれる可能性は遥かに低くなるだろうし、自分のいないところで誰かが庇ってくれれることもなくなるだろう。積極的に嫌ってくる人に至っては、イカサマ師であることを証明すべく証拠を集めたりもするだろう。
Alexはチームドラフトの支払いから逃げたり、ホテルの部屋で人の邪魔をしたり、人のものを盗んだりするような人間ではないが故に、マジックのゲームで人を騙してきたということは確かに信じがたいことだろう。しかし、綺羅や探検の映像、そして誘惑蒔きの話し、更にはこの数ヶ月に集めてきた証言(一部は匿名を条件に協力してくれたので、ここで詳細を語ることはしない)から判断できたイカサマのリストは次のようなレベルに及ぶのだ。
・初手で8枚引いた
・マリガン後の《思案/Ponder》で過剰なカードを引いた
・不適正なマナで呪文を唱えた
・不利なマッチアップで事前サイドボードをした
・対戦相手が森をコントロールしていないのに、《水没/Submerge》を代替コストで唱えた
・島と薬瓶だけが非Foilになっているマーフォークデッキを使っていた
・《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》の0能力で2枚のカードを戻さなかった
私にはマジックのコミュニティ全体とコミュニケーションを取って、Alexの不正についてのすべての話を集めることはできないが、それでも自分の集めた証拠に基づいて彼をイカサマ師と断ずるには十分な自信を持っている。他にも悪意が疑わしい動画がいくつもある。その一つはほんの数ヶ月前、既にAlexの《渦まく知識/Brainstorm》が《Ancestral Recall》ではないかという疑いが持たれ始めていた頃のSCGアトランタの第6ラウンド、Alex Smithとの試合の7分あたり(訳注:やっぱり動画は消えている)で彼は《渦まく知識/Brainstorm》から4枚のカードを引いているのだ。
Alexが単に杜撰なプレイヤーである可能性はまだあるだろう。私も、「彼が長い間衆目の中でマジックをしていたにも関わらず、自分の有利にならないミスをしたという話は聞いたことがない」ということさえなければそれを信じたかも知れない。普通、杜撰なプレイヤーはそれなりの頻度で自分の不利になるミスもするものなのだ―例えば例えばLSVが「土地置いてエンド…じゃない、《定業》してもう1枚土地置いてエンド」ってやったようなやつだ。だが、私は彼が自分の利益にならないミスをしたことは一度も見たことがないのだ。もし彼が単なる杜撰なプレイヤーだったとして、彼が自分の有利にならないようなミスをした姿が見られていたのなら、もっとその説には説得力があっただろう。そして最後に、マジックの古参プレイヤーからの金言として、
「過去の例に照らして見るに、『誰かがサマ師だ』という噂と、具体的な『ヘンな状況』が大量にあったとしたら、ソイツは百万%"クロ"だ」
という話もある。
この記事は、Alex Bretonciniを磔架しようというものではない。私にとっての目標、つまり彼の不品行を知ったときからしたかったことは、単に彼がイカサマを繰り返すことを止めるか、イカサマ師を捕まえて追放するか、そのどちらかなのだ。そしてどちらにせよ、イカサマ師はマジックコミュニティから追放し、二度と戻ってこれないようにしたいのだ。潔白なプレイヤーが彼の席を埋めるもよし、彼の席を空席のままにするもよし、だ。どちらにせよ、マジックの世界にイカサマ師の座る場所は存在しないのだ。
以下はこの件に関するSCGの声明文の抄訳です(原文はやはり消えています)。
DCIは本日、Alex Bretonciniに18ヶ月間の出場停止処分を課すと発表しました。Star City Gamesのポリシーにあるとおり、Alexは出場停止期間中 StarCityGames.comで行われる全てのトーナメントに出場することができません。またそれに加え、StarCityGames Player's Clubのレベルと それに付随する全ての便益も、出場停止期間中に受けることはできません。彼がDCI認定イベントに出場可能な間に受賞した賞品に関しては、 既に授与されており取り消されることはありません。
我々はDCIが全てのトーナメントに対し完全性・公平性を確保しようとしていること、並びに全ての違反について公正かつ公平な処断をしていることを 評価し、尊重しています。
訳者あとがき:この記事は8年半前の自分の仕事が気に食わなかったのでやり直したモノです。コミュニティにとっては意義のある文章だと思いますが、さっきの記事以上に需要が不明なので購入ボタンも置きません。
(もちろんサポートいただければ泣いて喜びますが…)
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