MtGの気掛かりな状況: あなた向けではない記事

(原題 This Article is Not For You: Worrying Trends in MtG byJACOB WILLSON


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人はみな「マジックは終わりだ」と毎週のごとく言うが、27年経った今も依然として力強いままである。しかしながら、2019年という年がマジック・シーンの大きなターニングポイントであったということを否定することはできない。『灯争大戦』からというもの、全てが変わったように感じるのだ。プレイヤーたちはWotCが下す決定に幻滅しつつあり、毎週のようにポリシーやカードを巡って新しい論争が起きているようにすら思える。マジックはまだ終わってはいないが、しかし一方で数多くの熱心だったプレイヤーたちがゲームへの愛情を失っており、マジックの未来は以前ほど明るいものではなくなってしまっている。

テフェリーの春、ホガークの夏、オーコの秋、覆すものの冬

MTGはパワーインフレに苦しんでいないことを誇ってきたゲームである。ポケモンカードや遊戯王といった「いとこ」たちとは異なり、アルファ版に収録された多くのカードは未だにこのゲーム有数のパワーカードと考えられている。パワー9は、他の全てのバランスの取れたカードを超える伝説のカードセットと言えよう。どんな瞬間的なマナ加速も《Black Lotus》を超えることはなく、どんなドロースペルも《Ancestral Recall》の効率に勝ることはない。《稲妻/Lightning Bolt》は未だにフォーマットを定義しているし、どんな二色土地も《Volcanic Island》には劣る。パワーインフレは避けられないものではあるが、このゲームにとっては良好に働いてきた。《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》より強いクリーチャーカードが現れることは良いことだろう。また、プレインズウォーカーのような新しいカード・タイプはデザイン空間を大きく広げたのだ。

しかし2019年、前例のない形でその限度を超えてきてしまった。《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》は全くもって不愉快で強力であり、また《甦る死滅都市、ホガーク/Hogaak, Arisen Necropolis》のようなカードははモダンフォーマットでのバランスを考慮されていなかった。《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》は最強のプレインズウォーカーの座を9年ぶりに《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》から奪い、全く異なる方法でゲームを破壊してきた。2019年以降のデザインにおける決定は全ての認定フォーマットに影響し、数年前とは全く異なる形へと変えてしまったのだ。

スタンダード

スタンダードでは、数多くの手段でマナを「ごまかす」ことができるようになった。《裏切りの工作員/Agent of Treachery》を4ターン目にプレイしたり、《創案の火/Fires of Invention》でマナを2~3倍にしてみたり、そもそも緑はバカバカしいほどに強力になっている。《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》と《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》はどんなデッキを相手にしたとしても、メタに大きなプレッシャーとして働いている。現在スタンダードでは4枚が禁止されており、来週には更に新しい禁止や制限が発表されるだろう。ほとんどの戦略は独自のゲームプランに従って、相手とのインタラクションを最低限にするように組まれている(そしてこれは他のフォーマットでも見られる傾向なのだ)。

パイオニア

このフォーマットは以前、さながら駄目なフォーマットの海に浮かぶ目印のようだったが、テーロスの発売後状況は一変した。トップメタ5デッキのうち4つ(ディミーア《真実を覆すもの/Inverter of Truth》、ロータス・ブリーチ、スゥルタイ昂揚、白単信心)はテーロス参入の結果生まれている。モダンと比較しても、コンボデッキに対処する手段が限られているために、こうしたデッキたちがフォーマットを荒らすことがより簡単になってしまっている。イコリア発売後の現在、トップメタの5デッキはディミーア《真実を覆すもの/Inverter of Truth》とロータス・ブリーチの両コンボデッキと、あとは相棒のなにかだろう。(例えば私自身のスピリットデッキのように)この例から漏れるようなデッキは、もはやプレイしていないのと同じかもしれない。

モダン

『モダンホライゾン』は当初とてもエキサイティングな、プレイヤーが長年待ち望んできたセットだと考えられていた。しかし、それが実際に現れた今、多くのプレイヤーは『灯争大戦』前の時代に戻っており、このマジック最後の年がなかったかのようにプレイしている。ホガークデッキは夏の間Tier0デッキであり、《黄泉からの橋/Bridge from Below》と《信仰無き物あさり/Faithless Looting》を巻き込んで消えていった。《オパールのモックス/Mox Opal》のような定番だったカードも、ウルザの罪によって禁止されてしまった。そして今や、より下の環境と同様に《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den》のようなカードが更に目立つようになりデッキの多様性が減少し、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》のような定番カードもフォーマットから消えつつある。

パウパー

2019年までに破壊された全てのフォーマットと違い、パウパーはほとんど無傷で耐えられた。《アーカムの天測儀/Arcum's Astrolabe》は既にプレイされているカードの1マナ版であるということがすぐに発覚し、あっという間に定番化してしまった。しかし、それが禁止されるとフォーマットはすぐに正常な状態に戻った。コモンにはオーコや相棒のようなカードも来ないため、荒廃を免れられている。しかしながら、公式フォーマットの中ではもっとも珍しいものである関係で、パウパーの競技イベントを見つけることは非常に困難である。

レガシー

レガシーのような古いフォーマットを、2019年だけでこれほど大きく混乱させられたことは印象的である。しかし、このような古いフォーマットにおいては、相互作用によって意図しない結果を生じてしまうことはままあるのは事実だ。《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》や《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》はフォーマットにおけるアドバンテージやインタラクションの機能を根本から変更してしまった。《レンと六番/Wrenn and Six》は何ヶ月にも渡って人々をゲームから締め出した不毛の大地であり、また最近では《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den》と《黎明起こし、ザーダ/Zirda, the Dawnwaker》も禁止の憂き目に遭った。これが、《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》と《アーカムの天測儀/Arcum's Astrolabe》がメタゲームの大部分を支配している間に起こったことの全てである。

(訳注:筆者は忘れているようだが、《死の国からの脱出/Underworld Breach》なんてのもあった。)

ヴィンテージ

マジックにとって前例のない年だったとしても、ヴィンテージに起こったことを想像できた人はいなかっただろう。《大いなる創造者、カーン/Karn, the Great Creator》は《神秘の炉/Mystic Forge》に続いてこの年最初に制限されたカードだった。《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》は《Black Lotus》まで鹿にして人を殺してしまい、また《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》もあまりに一方的であり、彼らも制限されていった。そして最後に、単に制限しても意味がないという理由だけで、《Chaos Orb》や《Shahrazad》と並ぶ黒枠の禁止カードが生まれたのだった。


フォーマットは楽しいときとそうでないときの間で揺れ動くものではあるが、この一年は破滅的なものだった。パワーレベルの問題から全てのフォーマットで禁止カードを招き、そしてなお未だにほとんどのフォーマットはつまらない、または決して面白くないという状況にある。WotCは印刷するカードのバランスを監視するチームを用意すると約束したが、明らかにそのチームは十分に効果を発揮してはいない。確かに過去にもフォーマットが壊れたことは幾度となくあったので、これだけでゲームが終わることはないだろう。親和、カウ・ブレード、エルドラージの冬はみな酷いものだったが、多くのプレイヤーはより良い未来を期待して耐えてきたのだ。しかし、今やどのフォーマットも次々に破壊されていってしまうため、望みはどんどん薄れるとともに「これが新しい世界秩序である」という思いが募ってくる。

御大尽万歳!

往々にしてフォーマットは荒れるものであり、それはもう見慣れたゲームの特徴とすら言える。しかし、更に憂慮すべきなのはWotCがプレイヤー・コミュニティに対して行ってきた新しいアプローチである。昨年、目まぐるしいほどの量の製品をリリースし、そしてその全ての購入を求めてきたのだ。これらの製品の大半はゲームに熱心な「御大尽」をターゲットにしており、一般的なプレイヤーが費やすつもりだった金額を遥かに超える価格で販売されている。もちろん御大尽向けの製品があること自体は悪いことではなく、例えば過去のFrom the Vaultシリーズは彼らに向けた良い再版製品として機能していた。しかし、今やこの傾向が他の全てのプレイヤーを犠牲にしつつあるのだ。

この最も悪質な例は『ダブルマスターズ』だ。主要セットよりも遥かに必要なリソースの少ない完全再版のセットに、標準的なブースターの4倍もの金額のパックがあるのだ。これは、必要な人々の手に古いカードを行き渡らせるという彼らの言う目的が事実とは異なっていることを示している。彼らはカード市場の動向から、プレイヤーが「宝くじ」のために数倍もの金額を払うことを厭わないことを知っており、その金額が見合わなくなるまで釣り上げ続けるだろう。一回のドラフトに50ドル(訳注:公式な価格は未発表)というのはとてつもなく高額であり、御大尽だけがドラフトを始めようとしてパックを剥いていくのだ。

超御大尽

御大尽をターゲットとすることは、長期的な売上の観点からも好ましくない。御大尽は確かに多くの金を費やすだろうが、一緒に遊ぶ仲間が居なければゲームにお金を使う理由はなくなるだろう。レガシーに新たに参入した人は、既に価格がつり上がっているために新しい人が入ってこず「死んだ」フォーマットになっていることにすぐ気づくだろう。そして、昨年のパワーインフレが上の環境にさえこの問題を持ち込んできたのだ。お気に入りのデッキがTier1から転落するたびに、メタゲームに追いつくために新しいカードの購入を強いられるのだ。メタゲームは次のセットが発売されるたった3ヶ月で大幅に変わるというのに、だ。そして、多くのプレイヤーは変化に追いつこうとしたり、古いデッキを使い続けたりするのではなく、ただ辞めてしまうのだ。

グラインダーが塵に

多くのプレイヤーがメタゲームに追いつくために多額の金額を費やす主な理由の一つは、トーナメントに勝ちトップに留まるためである。しかし、そうしたプレイヤーがそのシステムの中にいることで罰を受けるというのであれば、競技マジックの最高峰でプレイし続ける理由はあるのだろうか。最近、WotCは競技マジックに対して、傍目に見ても困惑するような有害な決定をしてきた。

肉は塵に

その中でも最も重要なものは、プレイヤーの1%のさらに1%に過ぎないMPLに選ばれない限り、トーナメントでの勝利から収益を得ることは途方もなく難しくなっていることだ。今年グランプリの多くは中止され(確かにCOVID-19のせいが大半だが、特定の一社がグランプリを独占していること自体が駄目なのだ)、アリーナのトーナメントは非常に大規模であり競技プレイヤーにとっての期待値は極めて悪い。もしカードを使ったゲームで稼ぎたいなら、ポーカーやハースストーンをやった方がよほど有益だろう。

これに加えて、高い賞金プールで釣ってプレイヤーにPTQへの参加を求めたあとで、彼らはプレイヤーツアーの賞金を下げると発表したのだ。更に懸念されることは、こうした変化が一般の人々の目に触れる前に、舞台裏でMPLの一部のプレイヤーがそれを察知していることだ。Austin Bursavichは、Webサイトに発表が掲載される一週間前にこの知らせを受けてツイートした結果として、競技から追放された。これは、エリートの一部でなければその声が押しつぶされてしまうことを示している。

結論

マジックはいつも終わりかけている。それは普段恐れるようなものではないが、自分にとってのゲームの楽しみが損なわれることを心配しているのだ。現在の展望としては、パワーインフレの管理が不十分であること、御大尽の財布を狙っていろいろなものを犠牲にしていること、そして組織化プレイの将来の暗さである。マジックは私の好きなゲームの一つなのに現状は自分にとって参加したいような方向性ではなく、方針が戻されることを願っている。そして、他の多くの人もまた同じように感じていることだろう。

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訳注:このNoteは無料ですが、翻訳に投げ銭してくれる方には本当に感謝します。(有料ラインの下にはなにもありません)

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