豆と如月の話

著:ビタファ

豆の話をしよう。

如月には豆が関係するイベントが二つある。その一つが節分である。福は内、鬼は外と言いながら豆をばらまくこの日本の伝統的な風習の起源は遡ること八百年、鎌倉幕府の霊媒担当大臣であったサニブラウン=N=ヤスベエのある逸話であると言われている。

富士の山麓で修行僧が相次いで妖怪に襲われているとの報を受けたヤスベエは、現地に向かい得意のダウジングで件の妖怪を探し出す。その妖怪は二人組で、一方は山と見間違うほどの巨大な顔面に普通の人間と同じ大きさの目鼻口がついているボッケという名のボヘミアン、他方は全身フジツボだらけの体にやはり普通の人間と同じ大きさの目鼻口がついているモズンタというボヘミアンであった。

ヤスベエはボヘミアンズになぜ人間を襲うのかと尋ねる。するとボヘミアンズは人間の生命エネルギーを吸収するためだと答えた。それを受けたヤスベエは少し考えたのち、ボヘミアンズにこう提案する。

「ここにそれぞれ"福"と"鬼"の印が刻まれた二枚の札がある。これらは生命エネルギーを生み出す特別な力を持った札である。お前らにこれを一枚ずつ渡すので、もう人間を襲うのはやめよ。」

ボヘミアンズはこの提案を快く聞き入れた。ボッケとモズンタは福と鬼の二つある札についてどちらが先に選ぶかをじゃんけんで決めようとしたが、両者とも手の指が二本までしかなかったためグーのあいこが延々と続き決着がつかなかった。しかし落ち着いて確認してみると両者の第一希望は異なっていることがわかったため、ボッケとモズンタは福と鬼の札を希望どおりに受け取るに至った。

福の札を受け取ったボッケはなんと不思議なことに、体の内側から生命エネルギーが湧き出てくる体質に変貌し肌のキメが見違えるほど細やかになった。一方の鬼の札を受け取ったモズンタはこれまた不思議なことに、体が外気に含まれる生命エネルギーを吸引する体質に変貌し肩のこりがピタリと収まった。

このボッケとモズンタは後にぞれぞれ伝説のボヘミアン"フクワウチ"、伝説のボヘミアン"オニワソト"と呼ばれることになる。

何はともあれ生命エネルギーを得たボヘミアンズはヤスベエにお礼といって見慣れない植物の実を渡して去っていった。幕府に帰ったヤスベエは、民にこの植物を栽培させた。この植物は最初"マモノノミ"(魔物の実)と呼ばれていたが、時代を経るにつれ"マモンミ"、さらに"マムン"と短縮されていき、明治時代には"マメ"と呼ばれるようになった。

そう、これが豆の名の由来である。

如月のもう一つの豆が関係するイベントは、バレンタインデーだ。というのも、チョコレートはカカオ豆という豆を原料として作られている。

チョコレートといえば甘いイメージがあるが、これはカカオ豆そのものの味ではない。実際、カカオの含有率の高いチョコレートはとても苦いのだ。一般に市販されているようなチョコレートはカカオの含有率が低く、代わりにオカカの含有率が高くなっているためほんのり甘い味わいになっている。

ところで、バレンタインデーのプレゼントは必ずしもチョコレートでなければならないわけではなく、豆由来の食品ならなんでもよいということは以外と知られていない。そこでバレンタインのプレゼント選びで迷っているという方に筆者から是非おすすめしたい食品がある。

豆腐である。

丹精込めて手作りした純白の豆腐をハート型に切り出し、ラッピングして相手の下駄箱に忍ばせておけば相手は驚くこと間違いなしだろう。味付け用に醤油を添えておくのもよい。醤油も豆由来の食品である。

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