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篝火

 火を見ていると心が落ち着く。

 小さいころからそうだ。いつまででも見ていられる。子供のころの家は旧式のかまどがあって、餅つきの時のもち米をそれでふかすのだが、かまどの火の番は私が率先してやっていた。

 小さな火から次第に大きな火へ。ぱちぱちと音を立てて、煙をあげながらさっきまで薪だったものが炭にかわっていく。揺らめく炎もいいが煙もまたいい。もうもうと立つ水蒸気のような煙も、綿菓子の様にふわりとほどけていきながら漂う煙も。

 一方で火を見るのが好きというのは、少々危ないことなのではないのかと思い、人にはあまり言わないようにしている。火を見るのが好きな人は少数派かとおもっていたのだが、ネットフリックスで「暖炉」という番組を偶然見つけた。

 ただ暖炉で巻きが燃えていくのを延々と映している映像だった。ニッチすぎるとおもいつつ、世の中にはこういうのが好きな人も一定数いるのだと少し安心した。一時期は暖炉の火の音を聞きながら寝ていた。むろん打ちに暖炉はないから動画サイトで流しているのだが。

 薪が火になって、やがて消える。粉を拭いたような灰がなんだか少し寂しい。後悔に似た気持ちになる。でも、すべてがなくなったわけじゃない。残った炭は次の火の種になってもう一度息を吹き返す。

 何かが終わって、何かが始まる。始まるのはゼロからじゃない。

チョコ棒を買うのに使わせてもらいます('ω')