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噛み締めたものを踏み躙る

今からかれこれ14時間ほど前のこと。
8時半、まあ通学の時ですが。
ポイ捨てられたガムを踏んだ。

あーーー!

決してあなたに悪意があるわけでも、何かあなたに非があるわけでもないんだけど、ぼくはあなたの靴裏にへばりつくことになったんだ。ただぼくが少し前にここに吐き捨てられて、あなたがここを通った。たったそれだけのことの延長線上だ。避けられぬ運命で、この宇宙が出来てからあらかじめ決められていた無限の出来事の連なりの中の一つに過ぎないんだ。時が過ぎてそう遠くないうちにこんなことがあったことすらも忘れ去ってしまう、そんな取り留めもない日常のちょっとした不運だ。別に、これが起きたからといってあなたの人間性が否定されるわけでも、あなたの1日が無価値になるわけでもない。ただ、ガムがへばりついてしまったというだけなんだ。気にする必要も、気になる必要もない。そこにあるのはただの都会の汚れに過ぎない。だから安心していい。安心してぼくのへばりつきを受け入れてベチャァッ


あ〜

まだ許せていない。いや、それは誰しも許すことはできないと思うんだけど、
まだ怒りが治まっていない。まあ、みんなそうか。

まあ、3年くらい使ったサンダルですよ。靴底も真っ平らにまで減ってたし。本格的に夏が来始めた頃だし、そろそろ買い換え時だとは感じていた。ただ、それを決めるのは僕の意志であり…

ガム踏んで、ぬめ、っていう気色の悪い触覚をサンダル越しに感じて、1歩歩いてネチャッ、え?もう1歩歩いてネチャッ、全てを察する。
もう嫌だ〜と思いながらもここで引き返すと遅刻するし、泣く泣く電車に乗って。

これとは全く関係のないことだけれど自分の隣の空席にビニール袋を丸めたゴミが置いてあって誰も座りたがらない状況に、「これが東京かよ」と最悪を感じて、

学校で3時間過ごし、人前で早口の発表を繰り広げて心臓を抉られるような気分になり、そんで帰宅。

ガムはずっと貼り付いたまま。

知らん子供だかおっさんだかが唾液を含ませて、クッチャクチャ噛んでバイ菌とウイルスを含ませた靴に貼り付いて取れなくなるトラップ。

なんなんだよ………呪い?


…あ、そうだ、明後日モンハンの新作発売だね!君の好きなライゼクスも出るらしいよ

楽しみだね、ま、まあ私は買えるかどうかわかんないけど、はは……

ええっと………

…あ、そうだ!猫のかわいい動画見る?

ガムは貼りついたまま。
ゴミ袋に入れて結んだって、サンダルにガムは貼りついたまま。


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