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横浜に今月できるロープウェイの解説③今後の課題

はじめまして、Zip Infrastructure株式会社の須知と申します。
私は自走型ロープウェイという新交通システムを開発しているベンチャーの社長です。こんな未来を目指して日々開発をしています。

突然ですが、皆さん、今月横浜に日本初の都市型ロープウェイができることをご存じですか?

「YOKOHAMA AIR CABIN」という名前で桜木町駅-ワールドポーターズ間の600mを5分で結ぶロープウェイで、山やスキー場ではない都心部に作られるロープウェイとしては日本初の事例になります!運営会社は泉陽工業さんという、みなとみらいの観覧車を運営している会社です。そして驚くべきことに費用は全額民間持ちです。

うちの会社もタイプは異なるのですがロープウェイを開発しているということで、おそらく関係者以外で日本で一番詳しく解説できるだろう、ということで解説を書くことにしました。

この記事はYOKOHAMA AIR CABINの解説の③です。全体の目次は以下より

①ここがすごい
A計画から建設までの流れと驚くべき短期間での実施
B日本初の「エアコン付き」

②採算大丈夫?
A収入予想
B支出予想
C赤字?黒字?

③今後の課題(本記事)
A高すぎた建設費
B年次点検
C自走型ロープウェイ「Zippar」
Dまとめ

というわけで最終回、YOKOHAMA AIR CABIN、ひいては都市型ロープウェイの課題について話していきましょう!

A高すぎた建設費

まず、YOKOHAMA AIR CABINの建設費が総額で80億円といわれていますが、これがほかの乗り物と比較してどうなのか考察してみたいと思います。

動く歩道 200万円/m
宇都宮LRT(道路整備費除く) 400万円/m
YOKOHAMA AIR CABIN 1300万円/m
リニア新幹線 2400万円/m
都営大江戸線 3000万円/m

こうやって比較してみると安いように見えますが、リニア、大江戸線ともに一時間に数万人を運びますから、一時間に最大2000人しか運べないロープウェイは運ぶ人当たりで考えると非常に高く、運賃を1000円という金額に設定しないと元を取れない理由がわかります。

ロープウェイを都市の公共交通として普及させるためには建設費を今の1/5~1/10程度にする必要があります。これが現状の都市ロープウェイの最初の問題です。


B年次点検

これまで、ロープウェイは専ら観光にのみ利用されていたので、年に2週間-1か月ほど休業して、年次点検を行っていました。下記リンクは函館山ロープウェイのスタッフさんのブログで、点検内容がわかりやすく乗っています。

年次点検では、ロープ(1mで10kg以上もする)や受索輪の点検をする必要があるのですが、ロープウェイを都市交通システムにするためには、運休は許されませんから、これらを夜間の6時間程度で行う必要があります。しかし、真っ暗な中、数十mの鉄塔の上での点検作業は果たして可能なのでしょうか。これが都市ロープウェイの2つ目の課題です。

YOKOHAMA AIR CABINによって都市ロープウェイのロープウェイはこれからもっと注目されると考えます。しかし、私はAとBの課題を解決しない限り、都市交通システムとしてロープウェイが普及することはないと考えます。

C 自走型ロープウェイ「Zippar」

我々、Zip Infrastructure株式会社では建設費や年次点検といった課題を解決し、都市ロープウェイが公共交通として建設できるように、現在自走型ロープウェイZipparを開発しています!

Zipparは自走型ロープウェイというタイプの交通システムで、通常のロープウェイと異なり、ロープそのものが動くのではなく、ロープは固定されていて、その上をそれぞれのゴンドラが動くという仕組みになっています。

さらに、ロープとモノレールのような桁の両方を走行できる車輪を開発中です。(特許出願済み)

では、Zipparは「建設費」や「年次点検」といった課題をどのように解決するのでしょうか?

まず、建設費に関して、我々は従来のロープウェイの建設費が高い理由として、ロープウェイが道路上では曲がれないという点が大きな原因だと考えています。曲がれないがゆえに、無理やり直線を見つけて建設をしていて、埋め立てや、民地買収が必要となり、コストが大幅に増加してしまいます。

下の写真のように、通常のロープウェイが曲がるためには大規模な設備が必要なので、それを道路上に作ることはできません。

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Zipparだとカーブはモノレールの桁のようなものでよいので、道路上にも設置でき、民地買収や埋め立てが不要になり、大幅なコスト削減が見込まれます。

次に年次点検についてです。
通常のロープウェイでは支柱に受索輪という回転部品があり、それらの点検や交換が必要になります。

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一方、Zipparでは支柱に車輪はなく、それぞれのゴンドラに駆動輪がついていて、点検が車庫で行えるので、年次点検の工数が減ります。

まとめ

このように従来型ロープウェイの問題を解決することで、Zipparは都市の新たな交通手段になると私たちは考え、その開発に全力を注いでいます。

もし、開発に興味がある方がいらっしゃいましたら、たまに小田原試験の試乗会の告知をするので私のアカウント等フォローしていただけると嬉しいです!

また、一緒に開発したい、採用について相談したい!という方がいらっしゃったら、HPの問い合わせからご一報ください!


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