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眩いタイトルStrindberg「Drömspelet夢の戯曲」に乾杯❢

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 夢は難しいです。良い夢を見ている時は醒めてほしくなくて、幸せだと思いながら夢を長引かせる方法を考えるのに忙しくて頭が落ち着きません。悪い夢を見ている時は夢を終える手順をすぐに思い出せなくて、起きたいと思ってから暫くしてやっと夢から覚められます。「夢の戯曲」はそうした夢の難しさと、人生の難しさが語られるストリンドベリの戯曲です。現実を夢と言ったり、人生を舞台と考える人もいますから、夢の戯曲は現実の人生のことかもしれません。たしかに私たちは良い夢でも悪い夢でも、夢が夢だと気づくと夢から冷めます。人生も同じで良い時も悪い時も、人生のなんたるかを思うと良くも悪くも冷静になります。人生を夢と思ったり、夢を現実と思った方が、恐れ知らずに自分の直観を信じて行動できるのも夢と現実は似ています。違いがあるとすれば、夢は勝手に悪くなりますが、現実は明確に誰かに悪くされます。人生を悪くする誰かは多くの場合は自分ですが、たまに具体的な誰かだったりもします。夢では悲しみの涙か訳が分からない涙しか流れませんが、現実では人生を悪くした相手への怒りで我慢が堪えきれずに流れてしまう涙があります。ですから怒りで涙を流せるか流せないかで、夢と現実の区別がつきます。
 夢と現実は見分けがつかなくても違います。人生と劇も、やはり違います。景色が同じでも、心の感じかたが同じでも、交ざっているものが違います。出来上がりが一緒でも原料が違えば物が違うのと同じ理屈です。
 わたしたちは夢と劇は作れても、現実の作り方と人生の作り方はよく分かっていいません。それで現実と人生を語った作品が「夢の戯曲」だと、謙遜なんだか本意なんだか分からないにしても題名から感心させられて虜にされてしまいます。わたしは題名をつけるのがとにかく苦手で、タイトルを考えてくれる専任の人が欲しいくらいなので、タイトルの良い作品を知ると、いいな、輝いているな、とそれだけで好印象で好きになってしまいます。それが作品の内容にぴたりと噛み合ったタイトルだと、もう眩しくて眩しくて作品を知った日はお祝い気分でお酒を開けて祝ってしまうんです。

「眩いタイトルStrindberg「Drömspelet夢の戯曲」に乾杯❢」完

©2023陣野薫

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