カラカラ

村上、誕生日の次の日の話。

すごく幸せな誕生日であった。
朝、起き抜けにスマホを開くとTwitter、Instagramに数件のおめでとうコメントがあり、「おぉ〜」と声が出た。

なんとも贅沢なもので、SNSの2000人少しのフォロワーさんの中にはお客さんから大学の友達、音楽で出会った人たちがたくさんいる。有名、無名に関わらず、「村上のタイムライン」という一つの箱庭でワイワイそれぞれにやっているというわけだ。

その中でくるりのファンファンさんや、BiSHの聖・アユニ・Dさんなども誕生日コメントをくれているのだから、本当に幸せ者だ。もちろんお客さんからのラヴいコメントも最高に嬉しかった。

これがTwitterのやつ。

そして、次の日。

誕生日の日はそこかしこを行く通行人の方々に「俺、今日誕生日なのよ」「今日誕生日男で〜す!」といい回りたいくらい嬉しかった。

だがしかし、2019年11月1日、誕生日の次の日。
村上はというと、『普段』を満喫しているのだ。
福岡岡山遠征と誕生日が立て続き、オリジン弁当を食うヒマさえなかったのだから、こんな一日を満喫もしたくなるのも仕方がない。

あまりに『普段』ではないっぽい誕生日の村上。

とりあえず服を着替える。ジャージにデニムのジャケットを羽織り、完全に変な格好で外に出る。

そしてまたがる村上の自転車は、京都の中古屋で買ったオンボロである。
オンボロを巧みにごまかして一万円で売っていたのを、ふし穴の目を持つ村上が意気揚々と買ったのだ。

これがマイ自転車。オンボロ。

出かけようにもチェーンが外れていたのでサクッと直す。

そして出かける前に拭き掃除をしていたアパートの『主』に挨拶をする。

『主』というのは、このアパートに40年住むおばあちゃんだ。
毎日しっかり和服を着て4階から1階まで元気に掃除をしまくってくれるおばあちゃんである。

お歳は80歳くらいか、耳もはっきりと聞こえ、夕飯時にはしっかり煮物の匂いを隣の花柄荘にも振りまいてくれる。

そして晴れた気持ちのいい秋空をギゴキコと切り裂いてゆき、街の方へ。月初めの家賃やらなんやらの振込を済ませ、裾上げに出していたジャケットのズボンを回収し、愛読書POPEYEの本日発売の部屋特集を買い、ソファで読む、読むというか見る。

部屋特集は大好きで、見ているだけで心が安らぎ、そして創作意欲や新しいアイディアを沸かしてくれる。

部屋を綺麗にするという行為は何となく心の見通しが良くなって行くのとリンクしている気がするのだ。

そしてMacBookをひらき、オーダーソングに目を通す。
オーダーソングとは、お客さんからオーダーしていただいて、世界で一曲のパーソナルソングを作る、といった花柄ランタンのサービスのことである。村上が生業としかけている音楽活動のことだ。

実はというと、村上、東京に来てからバイトらしいバイトをしていない。要は自営業的な活動でギリギリ成り立っているということだ。敷かれたレールの上を走らない、むしろ敷かれたレールを見つけては無視していく、まさにマリオカート64の『カラカラ砂漠』のショートカットみたいな人生を送っているのだ。

わかる人にだけわかれ!
(この画像、めちゃくちゃレールの上を走っているのではあるが。)

○●○

窓を開ける。抜き差ししまくられ、虚しく鳴く防犯ブザーと、下校中の小学生の叫び声が聞こえる。
全ての熱狂は醒め、なんとなく広告や街の雰囲気もクリスマスに向かっている気がしてくる。

また、コンビニで売れ残りのハロウィンケーキとともに、村上の次の一年が始まってゆく。


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