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2021.3.17〜未来へ

ラジオNIKKEIのダイオライト記念実況中継の中でアブクマポーロ関係者のインタビューがあり、衝撃的な話を聞き「これは日記じゃなくて前回の妄想小説の続編をノンフィクション小説で書こう」と思い、書いてみました。
前作の妄想小説に関連した内容、それに付随する台詞以外はすべてノンフィクションです。

前作はこちら

2021年3月16日(火)

♪恋しちゃったんだ〜多分気づいてないでしょう〜

ダイオライト記念前日に私は旦那にこうLINEした。
嬉しくて仕方なかったのだ。

ラジオNIKKEIのダイオライト記念実況中継の中でアブクマポーロ関係者のインタビューが聞けると知った私はあの頃と同じように胸がときめいた。

「どんな話が聞けるんだろう!もう楽しみで仕方ない!」

そう、あの頃は彼のレースの前日から胸がときめいてニヤニヤしてたっけ…

あら、そういえばあの頃って前の旦那と遠距離恋愛中だったからいつも彼のレースは一人で見に行ってたし前日も当然遠距離だから会ってなかったんだよな…

えっ?じゃ私のあのときめいてニヤニヤしてる顔って誰にも見せたことないんだ!

どうしよう、今またあの頃みたいな顔してるんだけど、旦那もうすぐ帰って来るんだよね…

やだ、恥ずかしい…どうしよう…

「ただいま〜!」

私は両手で顔を覆いながら
「おかえり、ダメ!恥ずかしいから見ないで」

「どれどれ見せてごらん」と手を顔から剥がされる…

「うわ、かわいいよ!すごく若返ってる」

「いやいや、まさか22年経って初めてこの顔を誰かに見せるとは思わなかったよ、恥ずかしい…」

旦那がお風呂から上がり、晩酌をする。
ほろ酔い加減になってきた。

「さっきからニコニコしてて全身からピンクオーラが出てるよ、嬉しさ全開って顔だね。俺はその顔させたことないのにちょっとアブクマポーロに妬ける」

「えっ?じゃ王子様にならなきゃいけないんだからそうなると私の旦那でいられなくなるけどいいの?王子様っていうのは結ばれないから王子様なんだから」

「そうか、それじゃイヤだな」苦笑いする旦那

「でもこんなにつもが若返ったなら今夜寝てる間に日付けが変わると同時に1999年3月17日にタイムスリップしてダイオライト記念見に行けたりしてな」

「それめちゃめちゃ嬉しい!でもせっかくあの日にタイムスリップするなら『実は船橋競馬場の特別観覧席で私達は隣同士だった』なんて展開になったらすごくいいと思わない?」

「いいねぇ、もちろんその時はお互いこうなるって意識してなくてただ隣の人と楽しく会話しただけ、で、俺らが再会して一緒になって何年も経って初めて『あ、あの時の隣の人ってそうだったんだ!』って気づくってのも面白いよな」

「それがいい!本当にそんな素敵なことになったら最高なのにね、さて、そろそろ寝ようか」

2021年3月17日(水)

「俺これでラス半」
「私も、もう16時半だもんね」

有休を取った私達夫婦はダイオライト記念の前にいきつけの雀荘で麻雀していた、ラジオNIKKEIの中継は18時半からなのでそろそろ帰ろうとラス半コールをかけた。

「ダメです!嶺上ご夫婦は朝の6時までです」

出た!T店長の常連に対するお約束の引き留め台詞!

そもそもこのお店は12時閉店なのにこういう無茶苦茶なことを言うのがT店長のキャラなのである。

「いやいや、この後うちら用事あるから」

「了解です、嶺上ご夫婦もしラスで〜す!」

「おーい!ラス半だっつーの」

もう定番のやり取りである。

帰りの車の中で私はこんなことを口にした

「ねぇ、今朝、なんで19年前に私達が初めて会った時に『もしかして3年前船橋で隣だった人?』って気づかなかったんだろうって話になったじゃん、でもさっき打ってて思ったんだけどもし新規のお客さんと同卓して楽しく会話も弾んで何時間か一緒に打ったとするよ、でもそのお客さんはその後来なくて3年後にふらっと来てまた同卓しても気づかないと思わない?」

「あっ、確かにそうだよね、気づかないと思う!」

「でしょ!だから19年前に気づかなくても全然不思議じゃなかったね、あはは」

「だな、あはは」

18時半になり放送が始まった。

彼の関係者のコメントがダイオライト記念発走直前に流れるという。

あのときめき…
ドキドキが…
甦る…

管理厩舎の出川調教師のコメントだった。
最後は楠厩務員のコメントもある。


私が驚愕したのは「性格、馬離れしている、常に道を探している求道者。頭の回転が早く人間のことを見透かしているのではないかという行動がしばしばあった。
人間が上から目線で見てはいけないと思わせる馬」

この話だった。

そうなると彼が種牡馬になった後、北海道の牧場で会った時に起きた「不思議なこと」がすべて合点がいくではないか!

柵の真ん中の方にいた彼を私が見つめるとトコトコ歩いてきて私の目の前、もう柵と柵ギリギリのところまで来てくれて、そこで私は「告白」をした。

「ずっと好きだったよ、私の片想いだけどね、これからもずっと好きだよ」

彼は目をつぶり「わかっていたよ」という表情で聞いていた…
そしてそのまま1時間も私の目の前にいてくれた…
帰り際、「また来るからねー」と言って歩き出すと私の姿が小さくなるまでずっと私のことを見てくれていた…

「まさか私の告白が伝わっているわけない」と思っていたけど彼は「馬離れ」していて「人間を見透かしている」のならば…

私の告白は伝わっていたということになるのだ。

もちろん気持ちに応えることはできないからせめて私が帰るまでとずっと目の前に立っていてくれたの?

帰り際、ずっと私を見ていてくれたのは私が当時前の旦那との結婚生活に不安を感じていたこともすべてお見通しで「君はこれからいろいろなことがある、大変なこともたくさんあるんだよ、だから多分もう会えないよ」とわかっていたから?

私は確信した、「間違いなくそうだ!」

「ねぇ、『好きな馬』はたくさんいたけどなぜポーロ様にだけは『恋』をしてしまったのかわかったよ、馬離れしていたからなんだね、馬であって馬ではないから」

旦那は頷いた。

「それもあるし、普通平地だけの調教でしっかりした施設で調教をされていた中央馬をあんなになぎ倒すなんてあり得ないからね、それも恋した理由だと思う」

「それもあるね、かっこよすぎて心を鷲掴みにされたもん、もしかして前世は人間だったのかもね」

「あのさぁ、俺は思ったんだけどあの馬って前世は天才哲学者だったんじゃないかな、天才すぎるが故考えすぎちゃって疲れてしまった、そして死に際に『もういろいろなことを考えたくない、何も考えずに何か一つのことにのめり込み、突っ走りたい』と願った…」

「あっ、それかなり可能性高いかも!あとね、これも当時は『単なる偶然だろう』と思ってたんだけど1999年川崎記念…あのダイオライト記念の1ヶ月半前の時ね、いつものようにパドックの最前列にいたんだけどポーロ様は私の前を通り過ぎた後、毎回私の方を振り向いてたんだよね、もしかしていつもパドック最前列で熱い視線を送ってる人って認識されてたのかな?」

「多分つものことは認識してたと思う」

「じゃ牧場での告白の前から私の気持ちはお見通しだったんだ」

私は歓喜の涙を流した…


あれ?なんだか急につかえが取れたかのようにびっくりするほど清々しい気分だ…

そうか!私の気持ちがちゃんと彼に伝わっていた、奇跡としかいいようがないことだけど…

それが22年経ってハッキリとわかった、不思議だと思っていたことがすべて繋がったのだ!

♪恋しちゃったんだ 多分気づいてないでしょう〜

いいえ、彼は私の恋心に気づいてたんです!

片想いであることはもちろん変わらない、
でも気持ちは伝わっていた、それだけで充分だ!

2021年3月17日(水)も素敵な思い出ができた日になりました。

2021年3月20日(土)

22年前のこの日は前の旦那との結婚式だった。
当然、あの日も20日(土)

そして22年後の今日は…

なんてことはない、私の土曜のシステムを遂行する、それだけだ。

私の土曜の過ごし方、旦那を職場まで車で送り、ラーメンを食べて、麻雀するのだ。

旦那を職場まで車で送っている最中、私はこう言った。

「17日にいろんなつかえが取れてスッキリしたから今日は勝っても負けてもいい麻雀が打ちたい」

今日の私の目標は決まった「いい麻雀を打つ」

その前に私が足繁く通っているお気に入りのラーメン屋へ。
そのお店は「脂分がほとんどないお出汁のようなスープ」がコンセプトでそれでいてあっさりしすぎず麺の美味しさも際立つのだ。

ああ、やっぱりいつ食べてもH店主の作るラーメンは美味しい!
そういえば22年前の今日は花嫁の私は披露宴で豪華な料理が目の前に並んでるのに食べられなかったんだよね、でも海老好きモードが発動して海老のカクテルだけ食べたんだっけ、なのに22年後の今日は美味しいラーメンを堪能してるのね、この方が断然幸せだよなぁ…そんなことを思いながら苦笑した。

さぁ、腹ごなしもしたしこれから麻雀だ!

行きつけの雀荘へ。
いつものようにオーナーのSさんが「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれる。

結構から言うと4半荘打って最初の2半荘は2着→2着だったがミスも多く、はっきり言って酷い麻雀だった、その証拠にどちらもトップを取り切れていない。
むしろラス→箱ラスを引いた最後の2半荘は自分なりにはいい麻雀が打てたと思う、ただ最初の2半荘のミスは勿体ない、今後の課題だ。

ただ、今まで感じたことのない感覚を覚えた局があった。

2半荘目、東3局、私は14000点のラス目

ドラの9pを引き入れテンパイ

リーチをした瞬間

「これは『絶対に』一発ツモだ」と確信したのだ。

今まで19年麻雀をやっていて「一発ツモの予感」という感覚はよく感じていたが「絶対」と確信したのは初めてだ、何だろう、この感覚は…

一発目のツモは…6m

「ツモ!!!!!」

リーチ一発ツモ中ドラ3…裏ドラは…6m

「4000/8000!」

快感が押し寄せる…

そう、22年前は高砂席に座り主役だった…

でもこの瞬間だけはこの卓の主役は私だ!

今日のあの瞬間の主役になれた方が比べものにならないくらい快感だった…

点棒をしまいながら私は心の中でつぶやいた

もし22年前の高砂席に座っている私になにかを伝えられるとしたら…

「27歳の私、結婚おめでとう!長い遠距離恋愛を経てやっとそれが実ったね、そして今日の主役になっている、今は私が麻雀打ってるなんて想像もつかないでしょう、でもね、22年後の今日、麻雀で今よりもっと嬉しい主役になれるんだよ」

ああ、やっぱり麻雀って楽しい、辛いことや理不尽なこともたくさんあるけど…

だからこそこういうあがりをした時嬉しいんだ!

1999年3月20日(土)

私は披露宴の高砂席に座っていた。

え?なんか声が聞こえる…

招待客ではない誰かの声が…

麻雀って言ってるの?

私麻雀やらないのになぜそんな声が聞こえて来るの?

そういえばダイオライト記念で隣の席に座った「音鳴さん」は麻雀やるって言ってたな…

いや、音鳴さんのことはもう忘れよう…

私は今隣に座っているこの人と人生を共にするのだから…


結婚生活が始まり、時を重ねるごとに音鳴さんの顔も声も…キスしたことも忘れていった。

2002年2月25日(火)

私は2ちゃんねる競馬板でよくやり取りをしていたコテハンの「パンダ馬さん」が長野に遊びに来るということで会うことになった。
当時私もコテハンで「人妻馬券師」と名乗っていた、今考えると我ながらセンスのないネーミングだ。

パンダ馬さんがメールアドレスを公開したことでメールのやり取りをするようになったのがきっかけで今日初めて会う、どんな人だろう…バツイチで競馬と麻雀が好きってことしか知らないんだけど…

会ってみると話は想像以上に弾み、長野駅近くのニ線路通り沿いにある居酒屋で飲むことになった。

お酒が入り、さらに盛り上がる。

居酒屋を出ると平日にも関わらず、ニ線路通りはたくさんの人で賑わっていた、繁華街の夜らしい光景である。

私は酔いも手伝ってパンダ馬さんをちょっとからかってみたくなった。

「こないだパンダ馬さん、『競馬好きの恋人、仲間が欲しいスレ』で『今なんかすごくキスがしたい、SEXじゃなくて』って書いてたんだよね〜」

「お前そんなこと言うとキスするぞ!」

「いいよ〜ん」

(こんなに人通りがある中でできるわけないでしょ、フフン)

と思った刹那、私の唇はもう塞がれていた…

驚きと共になぜか懐かしい感覚が走った、なぜ???

この人と会ったのは初めてなはずなのに…

この日はそれ以上の関係にはならなかったが、私は「あの人とはこのままでは終わらないだろう」と確信していた。

2022年8月某日

世界中に蔓延していた厄介な疫病も収束し、私達夫婦はお盆休みに北海道に来た。

目的は牧場巡りともちろん彼の墓参り…

「つも、もうすぐアブクマポーロに会えるよ」

「うん、あっ!その前にあそこのコンビニに寄りたいな」

「あっ、トイレの鏡の前で身だしなみチェックするんだったね」

「そう、ポーロ様に会う時はこれがシステムなの」

私は鏡の前で願いをかけた

「久しぶりに会えるから嬉しくて泣いちゃいそうなの、だから泣かないように、今日が今までで一番いい笑顔でいられますように」

車に戻ると旦那は私のことをじっと見つめる…

「ん?どうしたの」

「いや、さっきよりすごくいい笑顔だなって!」

「本当?実はさっき、今日が今までで一番いい笑顔でいられますようにってお願いしちゃったの」

「なんか、あの船橋での会話とそっくりだな」

「あっ、本当だね!音鳴さん、うふふ」


彼のお墓についた

「21年ぶりになっちゃったけどまた来たよ、あの後本当にいろいろあったよ、でも今はずっとこの人と一緒に幸せに過ごしてる、21年前牧場で会った時、私の不安や悩みはお見通しだったんだね、だから今日は本当の笑顔を見せられてよかった。
ポーロ様はたくさんのG1タイトルを取ったけど私達夫婦はね、競技麻雀でたくさんタイトルを取りたくて頑張ってるんだよ、どうか見守っていてね」

旦那が私の肩を抱き寄せこう言った

「実は俺はいろいろこの人を泣かせちゃいました、でももう泣かせません、この笑顔をずっと見ていたいと思ってます、大切にすると誓います」

どうしよう…嬉しくて涙が出そう…よし!

「えーっ!同卓した時はたくさん鳴かせてよ、特に上家の時はポンもチーもさせてね」

「それは場況にもよるな」

二人で顔を見合わせて笑う。

帰り際私はまたあの言葉を口にした

「また来るからねー」

でもその後に続く言葉があった。

「次もこの人と二人で!」

なぜか見られているような気がして振り返る…

彼のいななきが聞こえたような気がした。

(完)

あとがきはこちら、どの内容が実話でどの内容が作りなのか詳しく説明してあります。前作の妄想小説の内容に関連する内容以外すべて実話ですが「この内容はどっち?」となりそうな箇所もいくつかあるので。

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