見出し画像

携帯動画変換君の思い出

2010年代初頭にスマホが日本市場に登場する以前(ちなみにiPhone4sの発売は2011年)、国内では携帯電話が主たる携帯デバイスだった。

携帯電話と一言に言っても現在普及しているAndroidガラスマではなく、正真正銘のジャパン・ビッグ・カンパニーがソフトもハードも作っていたマジのガラパゴスデバイスだった。
具体的にどこら辺がガラパゴスかというとMP3(.mp3)の音声ファイルが再生できなかったり、動画もMPEG(.mp4)が再生できず「3gp」なる形式のファイルでないと読めない…

(本当はもっと細かくて厳密な表現ではないのだが最早覚えていないし、ネットを漁っても埋もれていてマジモンのロストテクノロジーと化している…)

そんな携帯電話を私が手にしたのは2009年のこと、当時中学3年生だったzima少年はこう思った「使えねぇ!なんだこのゴミ」。

いや、だってさ小学校高学年からMMOやって画像掲示板ROMってstage6で動画漁って、中学上がってニコ動見てにこさうんど(動詞)してた少年ですよ。
MP3すら再生できない携帯機器とかゴミですよ。それも上海問屋のMP3プレーヤーのウン10倍の値段のものが…

というか電話とメール以外の全てでPSPに負けている。

いや、電話とメールが携帯電話のほぼ全てなんだが…

・・・

さて、そこで登場するのが「携帯動画変換君」です。

MIRO@MobileHackerz氏作成のフリーの動画変換ソフトで、簡単に言うと一度設定してしまえばドラッグアンドドロップでMP3なりMP4を3GPに変換してくれるソフトでした。
ガラケーの時代においてメディアを携帯する為には必須のソフトであり(考えようによっては)コレが無ければボカロの流行は3~5年遅れてたかもしれません。
(昨晩見つけたイケてる動画や音楽を共有する術が動画のダウンロード→変換→携帯やMP3プレーヤーで持込み→放課後に友達と試聴しかなかった)

また当時着信音を任意のものに変更することは出来たのですが大手レーベルと大手キャリアによる「着うた」のサービスを利用してダウンロード、そして着信音変更を行うというのがスタンダードでした。今でいうLINE着信音をLINEMUSICから設定する感じですね。

「じゃあ着うた使えばいいじゃん」と思うでしょうが、ここで当時のオタクたちに大きな壁が立ちはだかります「推しの曲がねぇ」そらそうよ。今みたいにアニメはメジャーシーンじゃないもの。エロゲソングなんてもっての外。

ともなれば自分のPCに入っている音源を(携帯に)ぶち込んでやるぜ!となるわけですがPCからファイルを放り込んでも画面に出て来ない。なんじゃこら。
調べてみると携帯電話は「3GP」なる聞いたこともない拡張子のファイルでなければ再生できないらしい。

ここまで来ると自然に「携帯動画変換君」の存在に行き当たり、手元のファイルの変換を試みることになります(ついでに窓の杜で色々なソフトの存在を知る)。
すると今度はやれ再生時間が長いだの、ファイルサイズがデカいなどと文句を言われるので、適当なサイズのファイルを拾ってくるか自身での編集を試みるようになります。

こうして今となっては要らない知識と経験を詰んだオタクが量産されました。

・・・

そんな携帯動画変換君ですが2010年以後すっかり使わなくなってしまいました。
私が高校進学して学業が忙しくなってPCすらあまり触らなくなったというのもありますが、大半のメディアダウンロードが違法になったので変換するものがなくったからです。

そんなわけなので私の携帯電話の着信音は8bit音源の「メグメル」のままですし、プレイリストには七色や組曲が入ったままだと思います。

大学受験が終わる頃にはスマホの普及が始まり、(運よくキャリアがSoftBankだったこともあり)私もiPhone4sに乗換えていました。
制服着てファミレスでニコ動見てた記憶があるので、2012年の時点で携帯端末から若者向けのメディアを視聴することが可能になったことで「携帯動画変換君」の役目に一区切りついたのだと思います。

そこから先はあれよあれよと言う間にニコ動やYouTubeでの公式配信やサブスクリプションでの配信、TVerやAbemaのような民放を母体とした配信が普及しました。
もう、今となっては何かのきっかけでもでも無ければ「携帯動画変換君」を思い出すこともないかもしれません。

ですが同年代オタクの文化に間違いなく大きな影響を与えたソフトウェアであると断言できます。

製作者であるMIRO氏にお礼申し上げます。

携帯動画変換君よ永遠なれ!

・・

・・・

…あ、普通に今でも窓の杜からDLできます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?