10本目 竹富の海老といふもの食べけり

デビステのてんぷら 10本目 (週刊PONTE vol.10, 2019.1.14)

前回までのあらすじ
 謝罪に彩られた平成の世の散り際に、筆者の謝罪の念が唸りを上げて読者に放たれた。PONTEの発刊間隔は指数関数的に伸びたと書いたが、事実誤認の不適切表現だったのだ。己の浅薄さに打ちひしがれた筆者は、年末年始の連休を使って沖縄は竹富島へと旅立つのであった。

 先週は休載しまして、沖縄に旅行に行ってきました。ハンモックに揺られ、チャリを漕いで海に行き、人気の少ない砂浜で凧を揚げました。竹富島は島民350人程度で、信号がなく、一回りしても10kmぐらいのスケール。八重山そばを食べたり、ハンバーグを食べたり、珈琲パフェを食べたりした。

 ある日の宿の晩御飯の話、くるまエビが3尾ボウル皿に盛られて出てきた。車もそんなに走ってないのにくるまエビとはこれいかに、とか思ってるとエビがビビビ!と震える。怯む筆者。コイツら生きているのである。大きさにして、およそレディースのスニーカーのNIKEのマークくらいのサイズであり、まあまあデカい。新鮮なエビをセルフでどうぞということらしい。
 意を決し、首の付け根に手をかけて、グキュッ、と捻って取りはずす。足をもぎ、殻を剥き、そのまま醤油にチョチョッとつけて食べたら、なんとまあ弾力が凄い。首を落とされてなおその身が死に抗うかのように、歯を押し返してくる。
 残りのエビを手にかけることを日和ってそのまま放置していたら、エビ側からアクションをしかけてきて、ビビビ!ビビビ!ビョーン!とボウルを跳び出して、隣のすき焼きの小鍋に自らダイブ。活きと物分りが非常に良かった。私も見習いたい。

 旅先のエビと言って思い出すのが、以前台湾の屋台でやったエビ釣りである。ヨーヨー釣りと同じシステムで、水に弱いコヨリの先にJの字の針金が付いており、水の中のエビを引っ掛けて手元のボウルに入れていく。しかし、コヨリが案外水に強く、ゲームバランスが崩壊、たいして採る気がなくても結構採れてしまう。コヨリの残機数も豊富なので、ボウルにエビが物理的に入らなくなるまで採れる。そしてこの海老、大きさにしてメンズのスニーカーのNIKEのマークくらいのサイズであり、デカい。なので4, 5匹も採ればボウルが溢れる。
 採れたエビはそこの店主に頼むと、茹でてくれるという、日本では馴染みのないサービスがある。隅に置いてあるティファールのケトルのようなものにエビをブチ込んで、スイッチを入れる。茹で上がって赤みを呈したエビを、金魚を入れるビニール袋みたいなのにギッチギチに詰めてくれる。茹でたてのままおいしく頂いたが、総じて衛生観念とかはないと思う。日本は見習わなくていい。

 竹富島でエビを食べた日は、不思議とすぐお腹がくちくなり、ご飯のおかわりもしなかった。台湾屋台の茹でエビではそんな感じではなかったのに。もしかして、自らの手で絞め殺して食べた命だからだろうか。頭をもぐ時に指に伝わってきた、エビのブルブルという振動が、触覚経由で満腹中枢を刺激したのだろうか。やはり実感覚としてものに触れると、得られるものが桁違いになるのだなぁ、とかいろいろ考えたが、晩飯前に島の売店で買ったパッサパサのサーターアンダギーを食べたせいだと思い至ったのだった。

そんな年末年始でした。今年もよろしくお願いします。

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きんまめ:ジャグリングサークルジャグてっく元部長。くらいしか経歴がない。デビルスティックをやっていました。ついにジャグリングもPONTEも関係ない話を書いてしまった。書くジャグリングの雑誌ですが大丈夫なのでしょうか。好きなジャグラーは特にいません。

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