18本目 ペンは棒よりも楽し

デビステのてんぷら 18本目 (週刊PONTE vol.19, 2019.3.18)


 先週号の編集後記にて「きんまめさんのお話、全然ジャグリング関係ないですね」と言われて、まあ確かに、という自覚症状とともに大学時代の学園祭を思い出すのであった。

 筆者が所属していたジャグリングサークルジャグてっくでは、毎年学園祭で大道芸チックなパフォーマンスをする。もちろんステージジャグリングもあるのだが、そちらはあくまでオマケ的な認識であり、屋外で、お客さんに足を止めてもらって、投げ銭をいただく、ということをチームでやる。先輩+新入生の計2~5人で構成されるチームを組み、30分の枠の中で各チーム独自のパフォーマンスを披露する。2日間の学園祭期間で、1チーム2,3回出番が来るタイムスケジュールなのだが、そんな中、両日のお昼の1時間に、Big One Trick、通称ビッグワンと呼ばれる特殊な枠が存在する。

 ビッグワンでは、メインのチームパフォーマンスから離れ、個人や上級生だけのチームなどが5分程の持ち時間で何かをやる。成功率が著しく低い高難易度技に挑戦したり、チームパフォには組み込めないようなネタ技、一発技、上級生の息のあったルーチンが見れたりする。要は、なんでもありの楽しい枠、である。めったに電車は来ないけど。

 筆者が1回生の頃である。学園祭係の先輩から「ビッグワンの参加者が全然いないので、出てくれないか」と打診を受けた。当時、ジャグ歴はわずか半年。当然チームパフォーマンスの練習でいっぱいいっぱい。チームを組んだ先輩から課されたクラブパッシングのノルマに追われて、オリジナリティなんかを考える余力もない。申し訳ないがここは断ろうかと考えたが、それを封じるように先輩の一言。

「ジャグリングしなくてもいいからさ」

 ジャグリングしなくても、いい。なるほど目から鱗だ。それだったらいけるかもしれない。「ホントにジャグらなくてもいいんですか?」と念を押した上で、じゃあ出ます、と答えた。この答えを今だに引きずっているから、ジャグリングの雑誌で、トイレの神様やカタログギフトや銭湯の話を平然と綴れるのである。

 両日とも参加ということで(どんだけ参加者少なかったんだ)、2つの演目を土壇場急ごしらえで組み立てて、練習ナシのぶっつけ本番で挑んだ(結果、両日とも持ち時間を思いっきりオーバーした)。
 1日目は、自分の着ていたシャツでテーブルクロス引き抜きをして、失敗して、机が倒れて、倒れた机の中から絵本が出てきて、「モチモチの木」の朗読会を始めた。
 2日目は、卒業証書の筒でデビルスティックをしていると、フタが抜けて、中からバトエンが出てきて、それを1人で戦わせて実況プレイをした。「ギガスラッシュ!!!☆に40のダメージィィィイ!!!」

 チームパフォーマンスの時よりもイキイキしていたのは、思い違いではない。

青空の下でバトエンを転がした日から、10余年が経った。
観客が読者になっただけで、何も変わっていない。
ビッグワンの持ち時間オーバーの常習犯は今、PONTEに寄稿し続けている。字数制限をオーバーして。

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きんまめ:ジャグてっく元部長。くらいしか経歴がない。デビルスティックをやっていました。同じくビッグワンへの参加打診を受けた他の同期は、ガオガイガーのテーマソングを、歌詞を見ながら熱唱していました。好きなジャグラーはそんな同期です。

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